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恋人が自分よりはるかに大人に見えてしまった日 「ヲタクに恋は難しい」9話(1/2 ページ)

【ネタバレあり】今回の成海の行動は、かわいすぎてヤバイ。

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ヲタクに恋は難しい (C)ふじた/一迅社

 趣味人には好きなものがたくさんある。それが足を引っ張ることもあれば、趣味人だから人とつながることもある。

 「ヲタクに恋は難しい」は、好きなものがある人間たちの、恋なのかなんなのかわからないモヤっとした感情を描いたラブコメディ。ヲタクのみならず、いろんな若い人の背中を押してくれます。


ヲタクに恋は難しい


たまには「恋人っぽい」ことをしてみよう

 ヲタク同士は楽だよね、というきっかけで付き合い始めた幼馴染の二藤宏嵩桃瀬成海。お互い隠し事なしなのでまあまあ楽しく過ごしていました。2人での行動といえば、部屋でゲームしているか、ヲタ系の店に行くか、ゲーセンに行くか。

 これでいいのだろうか、恋人になれているのか? と考えた宏嵩が提案したのが、初の遊園地デートでした。これには成海の方がびっくり。

 重要なのは、今までの2人は「特別な出来事」がなくても、そんなに気にしていなかったということです。特に成海は、言われるまでそういう考えすらしたことがなかった。

 今回のデートでは、ヲタクトークをした方が罰金をする、という縛りを宏嵩が作りました。

 「今日はいつもよりちょっとだけ 緊張してほしい」

 他の一般的な人たちのような恋人関係が、ヲタク要素抜きに可能なのかを確かめる、宏嵩の挑戦です。

ヲタクの話を一切しないヲタクなんていない


ヲタクに恋は難しい ってかこのシチュへのときめきは、誰かに言うなっていうの無理ない?(3巻)

 ヲタクは、会社とかでは歯を食いしばって一切趣味の話をしない人が多い(特に皮かぶって隠している人は)と思います。頑張ってるよね……みんな偉いと思うよ……。

 しかしヲタク同士で集まった時、趣味の話をしないってありえない。だって呼吸だもの。仲間内やネットで自分の好きなものの話をするのは、生きていくための息継ぎです。

 特に成海なんかは普段から仮面をかぶっている擬態女子。自分のヲタク性をさらけ出せる相手である宏嵩の前では常に気が緩んでいるので、急に「言ってはいけない」といわれても無理。罰金がたまっていきます。

いつもどおり

 宏嵩がやたらヲタク離れにこだわるのは、成海とヲタク同士だから付き合い始めたのを、想像以上に引きずっているからかもしれません。宏嵩は幼い時から、成海に恋をし続けてきた。彼女とついに恋人になったはいいものの、一般的な恋人になれているのか不安。普段からデリカシーがなく、自分の能力を全く疑わないくらいの彼ですが、どうも成海の前に出ると、人との距離感がわからないコンプレックスが吹き出してしまうらしい。


ヲタクに恋は難しい 恋人になったのに、変われていないことへの、不安(3巻)

 特別な時間になった気がしない。成海は自分なんかといて楽しいんだろうか。他人とのコミュニケーションを避けてきた彼らしい悩みです。この作品他にもキャラは出てくるけれども、彼は成海に対してだけ、自分からアプローチしようと積極的です。だからこそ、手応えがないのは不安になっても仕方ない。


ヲタクに恋は難しい 人間的に足りないのだろうか、って感じちゃう時は本当につらい

 「俺がゲームでレベルを上げてる間に成海は たくさん努力して たくさん失敗して たくさん笑って 別れて 傷ついて 泣いて 大人になったんだろう」

 この作品のキモというか怖いのが、成海は何回か男性とお付き合いしているというところ。もっとも全部ヲタバレで別れているので悲惨ではあるのですが、少なくとも彼女はそれだけ、人間的魅力が高い。人間としての経験値もたまりまくっている、ように見えてしまう。

 宏嵩は成海の過去の彼氏に嫉妬はしません。しかし恋をして別れるという大事件を越えてきた彼女に対して、自分は成長できていないという引け目を強く感じています。

 自分がゲームに費やしてきた時間の分、恋愛している人はみんな成長して、自分より先に進んでしまっている、という宏嵩の戸惑い。これこそ「ヲタクに恋は難しい」というタイトルにつながる感情のひとつかも。

マイペースでもいいじゃない


ヲタクに恋は難しい どうにも踏み出せないこともある(3巻)

 以前もキスしたり手をつないだりしているのに、ここに来て成海に触れられない宏嵩。一般的イメージの恋人らしさが手に入るかどうかで、一人空回りしている節があります。この後成海の、「(禁ヲタク用語会話)終わりにしない?」を聞いて、フラれたんじゃないかとヒヤヒヤするくらい。こんなに追い詰められてる宏嵩は珍しい。

 「成海が楽しそうにしている それがうれしいから…まあいっか…今は 何も変わらないままでも」

 宏嵩の恋自体は極めてシンプル。損得とか、ヲタクかどうかとかはどうでもよくて、子どもの頃から楽しそうな成海を見ていたいだけだった。だから先輩たちの恋模様などを見て比較してしまい、ちょっと迷走してしまったのでしょう。

 じゃあ成海は本当に今回のデートが、部屋でだべってゲームしているようないつもと同じだったのかというと、そんなことはない。

 成海が宏嵩に渡したプレゼントは、ピアス。「いやまあ大した物じゃないからガッカリするかも マジで」とか「宏嵩ってピアスとかオラついたアイテム絶対似合わないと思って!」とか煽り口調の成海。


ヲタクに恋は難しい 成海がヒロイン顔してる!(3巻)

 実は自分とこっそりおそろいだったというね。普段のBLの豪傑・成海からは想像できないような乙女チックさ。

 宏嵩が2人の関係は特別になりうるのか考えていたのと同じ。成海だって、このデートに特別さは感じていましたとも。しかも恥ずかしがって煽りでごまかしていたというね。ここでしれっと何の気なしに耳触っちゃうのも宏嵩らしい。だいぶえっちだぞそれ。

 宏嵩がピアス穴を以前開けたのは、ずっと前に成海が他の男子と付き合っているのを見て失恋したから(アニメ8話参照)。大人になりたい、と思っての暴走。今回のデートの迷走といい、彼は割と突っ走って止められなくなる性質のようです。

 大人になろうと無理をしていたころにあけたピアス穴が、ふさがっている。なんてことない、自然でいい。ピアス穴が自然とふさがったように、今の成海との距離も、人と自分の感覚の違いに対するモヤモヤも、そのまんまでいいんじゃないかな。成海のかわいさもわかったってことで、人生経験値アップだ。


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