プレイヤー同士が近くにいなくても戦うことができる。物理的な距離を問わない競い合いは、e-Sportsとして盛んなオンライン対戦ゲームタイトルの長所だ。とはいえ、やはり距離の近さもまた重要な要素。大々的に開催されるリアルイベントは、トッププロとファンの物理的な、そして心理的な距離をぐっと縮め、従来のスポーツ観戦のような熱量を生み出す。だが、縮まった距離にはデメリットもある。
Summer Split終了まであと2週間となったNA LCS(「リーグ・オブ・レジェンド」北米公式プロリーグ)では、プレイオフ進出枠を賭けたデッドヒートが繰り広げられている。Week 7が終了した8月7日、Team Liquidのミッドレーナーを務めるEugene “Pobelter” Park選手はツイートで、会場でのファンの振る舞いに異例の苦言を呈した。
「試合後のファンミーティングにファンとして来るなら、私たちの乳首をつねるような変な行為はやめてください。どうかしています。」
1万以上の「いいね」がついたこのツイートから、Pobelter選手がファンミーティングで受けた扱いは明らかだ。先週の試合では、チーム「100 Thieves」所属のaphromoo選手もまた、試合後のファンとのハイタッチ中に乳首を触られるシーンが公式試合動画に残されている。
過去にもあったセキュリティの問題
e-Sports大会では出場選手が激しく体を動かすことはないため、ステージの構造は非常にシンプルだ。韓国プロリーグ「LCK」では選手らのプレイ場所はチームごとに箱型のブースで覆われており、観客の歓声などをシャットアウトしている。しかし欧米をはじめとするリーグ会場では、選手のプレイ場所はオープンになっており、観客席との間を遮るものは少ない。
【UPDATE 2018/8/7 13:30】ブースで覆われていることがセキュリティ保護を目的としているという旨の記載をしていましたが、表現を変更しました。
「LoL」ではかつて2017年のMSI決勝戦にて、観客席からステージへの約3メートル半の落差を飛び降りた観客が、優勝チームのメンバーと抱き合って優勝を喜んでしまうという珍事があった。この際にはRiot Gamesが「速やかに協議を行い、生観戦会場で競技を行うチームと選手を守るべく、セキュリティを高める」とのコメントを出している。
ファンとプロの距離を適切に保つために
「LoL」の各リーグで通常試合後に行われているファンミーティングは、ファンにとっては応援を伝えサインをもらうことが、選手にとっては自分たちを見ているファンがいることを実感できる、かけがえのない交流機会である。この時、選手とファンの間に物理的な障壁はないが、それゆえに双方の振る舞いにはモラルが要求されている。選手は公人であるからして、ルールを守った振る舞いをしているが、問題なのはファン側だ。当然、選手もひとりの人間である以上、選手に対するリスペクトを欠いた振る舞いは許されるものではない。真剣勝負を勝ち抜いた末に待っているのが、嫌がらせにも等しい時間というのはおかしな話だ。
EU LCS出場選手のKikis選手は、Pobelter選手のツイートに反応して「イベントへの永久出禁処置は問題になるだろうか? 問題だろう」とリプライを寄せている。こうした事態が多発したり、悪化したりすれば、イベント主催側も選手を守るために交流に制限をかけざるを得ない。そうした処置は主催・選手・ファンの全てにとってマイナスになってしまうだろう。Pobelter選手のツイートは単なる氷山の一角なのかもしれないが、それならばなおさらファンは襟を正す必要がある。
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