「LA-MULANA(ラ・ムラーナ)」というゲームのこと、1人のゲームライターの人生のこと:「LA-MULANA 2」レビュー(3/3 ページ)
「LA-MULANA」と出会っていなかったら、多分今こうしてここにいることはなかったかもしれない、という話。
ゲームへの情熱を取り戻し、ねとらぼ編集部に入るまで
僕がインディーゲーム、特に国産タイトルに興味を持つようになったのはそれからだ。こういうゲームや、こういうゲームを作る人たちのことを、心から応援したいと思った。
やがて「LA-MULANA」を作ったメンバーとも仲良くなり、日本でインディーゲームのパブリッシングを行うPLAYISMとも親しくなった。京都発のインディーゲームイベント「BitSummit」も第1回から取材させてもらったし、「moon」や「Million Onion Hotel」などで知られる木村祥朗さんと一緒に、インディーゲームで遊ぶニコ生をやったりもした。「洞窟物語」が家庭用向けにリリースされた時には、光栄にもファンイベントの司会を務めさせていただいたし、「LA-MULANA」がきっかけで、本当に本当に多くの人と知り合うことができた。すっかり興味が薄れていたゲームに対しても、再び情熱を取り戻すことができた。
翌年(2012年)、僕は縁あってアイティメディアに誘われ、ねとらぼ編集部に加わることになった。それまでゲーム中心に活動してきた自分にとって、ねとらぼに入るのはゲームライターという仕事から離れることを意味していたが、意外にもそんなに迷うことはなく、誘われた翌日か翌々日くらいには「行きます」と返事をしていたように記憶している。
なぜそういう考えに至ったのかはとても書ききれないし、とても論理的に納得できるようなものではないので、ここではすっぱり省略したい。しかし、もしあのとき「LA-MULANA」と出会っていなかったら、僕がねとらぼに入ることはなかっただろうし、今でも自信を持って「ゲームが好き」と言うことはできなかったと思う。
ラ・ムラーナよ、私は帰ってきた
さて、ここでようやく話は2018年に戻ってくるのだが、実はこの記事で一番言いたかったのは、そんな「LA-MULANA」の続編、「LA-MULANA 2」がつい先日、7月31日に発売されたということです(唐突な宣伝)。
ハードはPC(Steam / PLAYISM / GOG / Humble Store)で、価格は2480円。7月29日には秋葉原で完成記念トークイベントが行われ、光栄にもまたイベントの司会を務めさせていただいたりした。
ゲームは前作と同じく、巨大遺跡「ラ・ムラーナ」の入り口から幕を開ける。前作の「ラ・ムラーナ遺跡大崩壊事件」から5年後、主人公はルエミーザ博士から、博士の娘ルミッサへとバトンが渡された。遺跡のほとんどは前作で博士がぶっ壊してしまったが、今回はラ・ムラーナと対になる“裏”の遺跡「イグ・ラーナ」を新たに探索することになる。
久しぶりに訪れたラ・ムラーナは観光地化されており、以前はテントだった長老の家は、観光地特需からか今や立派なお城になっていた。画面は4:3からワイドになり、なにげにゲームエンジンが2Dから3Dに変わったことで、相変わらずドット絵ベースではありつつも、ライティングや奥行き演出が加わった「今風のドット絵」になった。
冒頭こそ観光ムードでのほほんとしているが、イグ・ラーナに足を踏み入れた途端、やっぱり即死トラップの洗礼が待っていた。しかも今回は「上を見ろ」と書いてあるところで上を見ると上から天井が降ってきたり、迫ってくる壁を避けたと思ったらその先でまた天井が降ってきたりと、タチの悪さは前作の比ではないと思う(申し訳ないが前作ファンにとってはご褒美です)。
2014年に続編の企画が発表されてから、思えばクラウドファンディングで資金を調達したり、途中2年くらいまったく進捗がみられず、うかつに「進捗どうですか」とも聞きにくい雰囲気になっていたり、とっくにクラウドファンディングの資金も底をついているはずなのに全然発売される気配がなかったりと、他の多くのインディーゲームがそうであったように、「LA-MULANA 2」もかなり長い期間「産みの苦しみ」のトンネルをさまよっていたように見えた。しかし今となっては、4年半も待った続編が(もちろん僕も出資者の1人だ)とうとう出てくれたというだけでファンとしては十分だ。
僕からスタッフに伝えたかったこと
僕もまっとうな社会人になってしまったので、さすがに当時のようなペースでは遊べていないが、それでも毎日帰宅してから寝るまでの2〜3時間、うまい酒をちびちび舐めるような気持ちで、時々叫んだり呻いたりもしつつ遺跡探索を楽しんでいる。プレイ時間は30時間を超えたが、倒したボスはまだ5体、アイテム欄は半分も埋まっていない。
「LA-MULANA」は僕にとってあまりにも特別すぎる存在なので、正直レビューとしてはまったく参考にならない記事だと思う。どちらかと言えばこの記事は、ねとらぼ読者に向けてというより「LA-MULANA 2」のスタッフに向けて書いている。
ならむらさん、サミエルさん、duplexさん、「2」から新たにメンバーに加わった中川啓己さん、そしてひとクセもふたクセもあるメンバーを「社員の暴走を止められない社長ですよ……」とボヤきながらもまとめてきた、社長の仲村尚史さん。
あえて面と向かって伝えたことはなかったけど、長い長い「LA-MULANA 2」の開発を終えた今くらいは言ってもいいと思う。僕からの「LA-MULANA 2」完成祝いです。最高のゲームを、ありがとう。
(池谷勇人)
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