おばあちゃんが月夜に語るおとぎ話――沖野ユイ(@okino_yui)さんが投稿した創作漫画「LUNA」が、Twitterで「好き」と「尊い」の声を集めています。
月がまぶしい夜、おばあちゃんは遅くまで起きている彼女を心配する孫娘に、思い出したように「少し昔のおとぎ話」をきかせます。それは「セシル」と呼ばれる10歳の女の子のお話で、セシルはいつも約束を守ってくれないパパに頬を膨らましていました。
そんな彼女のパパは、因縁の相手である怪盗を今日こそ捕らえようと仲間と意気込んでいました。しかし次の瞬間、宝石の前に現れた「怪盗ルナ」は“今までで最も価値のある”エメラルドを盗らずに、目の前にいたセシルを連れ去ってしまいます。
セシルが連れてこられたのは、怪盗のお家。最初はドキドキしていた彼女も部屋で自由になると、強い好奇心からたくさんの質問や感想をぶつけます。マスクをかぶって声も出さない怪盗ルナから筆談で「怖くないの?」と聞かれても、「全然!」と笑顔。どうして連れてきたのかと聞くと、怪盗は彼女を見たときのことを思い出しながら、
「君の目があまりにもきれいだったから」「君が許してくれるなら今夜だけ君と一緒にいさせてほしい」「だめかな」
と、ノートに書いて素直な気持ちを伝えるのでした。
すると今度は彼女の番とばかりに、「今日、パパと見に行く予定だったの」と、ロンドンのエリザベスタワーに行きたかった気持ちを伝えるセシル。「元を言えば怪盗さんのせいで行けなくなったのよ!」と少しの文句も混ぜつつ、本当に楽しみにしていたことを話すと、怪盗は彼女の手を取り夜の街へ。
屋根の上をひょいひょいと渡り、まるで夜空を舞うような「怪盗ルナ」の腕の中で、セシルは楽しみにしていた時計塔を見て目を見開きます。その美しい光景に言葉を失う彼女ですが、同時に「月がね! すっごくきれいなの!!」と、どうしても伝えたい思いを怪盗に言葉で伝えるのでした。
夢のような時間は終わり、怪盗は彼女を家まで送ります。また会いたいという彼女の言葉を止めた彼は、マスクのまま額にキスをしてペンダントを取り出し、「ずっとこれを持っていてほしい。そしたら……きっと、また」と耳を赤くし、去っていくのでした。
――おばあちゃんのロマンチックなおとぎ話に、「セシルちゃんは、その人とまた会えたのかしら?」と想像する孫娘。すると“セシルおばあちゃん”はお話のペンダントを見せて、60年も昔の思い出で、まだ彼は姿を見せていないこと、また会いたい気持ちがあることを話します。「でもね」とおばあちゃんは、「あの日を思い出すだけでとっても、とっても幸せだわ」と心からの言葉だと分かる優しい笑顔で、今に続く物語を語り終えるのでした。
「LUNA」は、絵の専門学校に通う沖野さんが課題用として描いたもの。漫画では女の子と怪盗、それぞれの感情が丁寧に描かれ、女の子の豊かな表情はもちろん、顔が見えない怪盗の思いも、多くのシーンから伝わってきます。またラストでは、世界中の宝石を自分のものにしようとしていた怪盗ルナがなぜセシルを連れ去ったのか、何に気づいたのかが語られています。2人の純粋な心に触れて、こちらまで温かい気持ちになる、そんな作品でした……!
コメントでは「好きすぎる」「3回読み返した」「鳥肌が立った」と称賛の声が多く上がり、また“セシル”と怪盗のその後や続きをいろいろと想像してワクワクする声も上がるなど、人気を集めています。沖野さんの作品が気になった方は、『ガンガンJOKER』11月号で掲載中の読み切り漫画『茜日に鳴る鈴』をチェックして応援するのがいいでしょう。
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