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「eスポーツで稼げることが分かれば人がついてくる」 プロゲーマー兼スクエニ社員が語る“兼業プロゲーマー”の実情(2/3 ページ)

ザンギエフが嫌いすぎるゲーマー。

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ネモ: ないですね。まぁマズイことを書いたら当然言われるでしょうけど。

―― ……ちょっと脱線しますが、Twitterでザンギエフのことディスりすぎてません?

ネモ: 投げキャラ使いが嫌いなんですよ。あいつらは勝てればラッキーだと思ってますから。

―― (笑)

ネモ: イメージってずるいですよね。投げキャラって飛び道具に弱いっていうイメージが昔からありますけど、それって「ストII」のころの話で、実際「ストV」ではアビゲイルやザンギって飛び道具への対処法はむしろ多くて恵まれてるんです。ザンギはボタン3つ押すだけだしヘッドバットで相殺できるし、アビゲイルはEXナイトロのアーマーで受け止めたり引き強パンで弾いたりできるし。それなのにあいつら「飛び道具キャラキツイんだよね」みたいなこと平気で言うんですよ? 他のキャラの方が難しかったりもするのに!

―― (ずっと笑っている)

ネモ: ユリアン(ネモ氏の使用キャラクター)って弾の硬直が50フレームで一番長いんです。弾を撃つと相手の技が確定しやすいから、こっちはそもそも横から対処できる技を持たれてると弾を撃つのがキツイのに、向こうは「いやーユリアンの弾はキツイんだよね」とか言うんで「お前ちょっと待て」と。「道筋立てて論理的に説明しろよ」と。「何だお前のそのイメージは」と。しかも、投げキャラ使ってない人からも「投げキャラには飛び道具キャラ使えば勝てるんでしょ?」みたいなこと思われてるじゃないですか。それをいいことにそういう話をしてくるんで、ちゃんとゲームを考えろと。向こうは「ユリアンの飛び道具は弾速の落差があるからキツイ」とか言うんですけど、こっちは硬直が長くて相手の技が確定しやすいんですよ。イメージでそういう風なこと言われちゃうから嫌いになるんですよね。


ネモ 昨年末の公式世界大会では、宿命のライバル(?)である投げキャラ使いの板橋ザンギエフ氏を撃破。ゲーム終了後、満面の笑みで握手を求めるネモ氏とちょっと面倒くさそうな板橋ザンギエフ氏が印象的だった(画像はYouTubeより)

「eスポーツで稼ごうとしているのに何言ってんの?」

―― 兼業プロゲーマーだと練習時間も多くは取れないですよね。

ネモ: そこについてですけど、練習時間は長ければいいのか? と思っちゃうんですよ。ゲームは身体能力を使うものではないので、どれだけ頭の中で考えられるかどうかの方が大事だと思います。実際僕のプレイ時間も一日2時間から3時間くらいのものですよ。動画を見たり、気になった部分を休憩時間にパッと思い付いたりもします。とにかく長い時間をプレイするよりも、毎日継続してプレイするほうが大事です。

―― 「一日8時間練習してます!」というプロも多いはずですが、ネモさんの場合は効率的な練習の方が重要だと。

ネモ: まぁプロゲーマーだったらそれが仕事ですから、8時間練習するのは普通だと思います。でも、仮に時間だけ伸ばしても効果は出ないですし、毎日毎日8時間ゲームの練習するって結構過酷ですよ。やっぱり練習方法とか、モチベーションを下げないような取り組み方が重要だと思います。

 あと、逆に仕事している人で「プロは仕事せずに練習しているから勝てる」とか言う人が多いですけど、「じゃああなたは仕事辞めて8時間練習したら勝てるの?」と言いたいですね。そういう人に限って「新作のゲームが出たりすると遅くまでゲームしていて全然寝ずに出社します! ドヤ」みたいなことを言ってたりするんですよ、結局は自分のモチベーションが足りないだけで「あなたその時間練習できんじゃん」と思いますよ(笑)。

―― 専業プロゲーマーになることは考えていないんですか?

ネモ: 今のところはないですね。専業プロになっても食えるっちゃ食えるんですけど……兼業は自分のブランドみたいなもんですし、企業に勤めているとプロ活動として役に立つことが勉強できる。今はプロゲーマーとしてマネタイズのやり方を考えなきゃいけないと思ってるんですけど、今eスポーツやらプロゲーマーやらに携わってる人って「僕たちそんなに稼いでないですよ」とかネットですごく言うじゃないですか

―― (笑)

ネモ: そこ謎なんですよ。「じゃあなんでeスポーツに関わってるの?」と。稼ごうと思ってるんじゃないの?

―― そこをはっきり言うのは大事かもしれませんね。

ネモ: 稼げることが分かれば人がついてくると思うんですよ。だからマネタイズの方法を確立させて「これだけ稼げますよ」と示したほうが健全だと思います。

 今はプロゲーマーとしてゲームの仕事をもらったときに「この仕事はいくらくらいだな」というのが見えるようになってきたので、そういうのを教えてあげられれば若手の子も安心すると思うんですよね。僕らが将来食っていけない状況になったら、シーンが続かないですから。

―― なるほど。では単刀直入に聞きますが、ネモさんのトータルの収入はどのくらいなんですか?


ネモ 聞くならここしかないッ

ネモ: 具体的な金額は言いにくいですけど、僕の収入はスクウェア・エニックスで働いている分と、所属チームのTEAM LIQUIDからのスポンサー収入、あとは大会の賞金と出演料とか。その辺を合わせると結構もらってるということになりますね。

―― 全体収入の中で会社員何割、賞金何割という比率も難しいですか?

ネモ: まぁ一緒に働いている人もいますから……厳しいですね。

―― うーん、でも年収で4桁はいってるわけですよね。

ネモ: それはまぁ……もちろん(小声)。

―― なるほど(笑)。でも、普通のサラリーマンでは簡単には届かない水準ですし、夢がありますね。

ネモ: 専業プロゲーマーとしても4桁稼ごうと思ったら稼げます! でも、もう少し業界の動向を見たいなと思いますね。



兼業プロのモデルケースへ

―― 収入に関する話でいうと、ゲーム大会の賞金は年々あがっていますよね。もし優勝賞金1億円の大会が出てきたとしても専業にはしないですか?

ネモ: 多分しないんじゃないですか? 結局、賞金だけに目を向けるのは間違っているんですよ。例えばEVOのような大きな大会での優勝って、賞金もそうですけど名誉の部分が大きい。名誉が付いてくればメディアに取り上げられてスポンサーも増えますから。賞金で1億円もらったとしても税金で結構持っていかれますし、賞金で稼ぐよりはスポンサー収入で地盤を作らないといけない。

―― 確かに、不安定な賞金よりは安定したスポンサー収入の方が長期的には重要かもしれません。

ネモ: だからこそ、優勝したときの付加価値が大事ですよね。分かりやすいところで言えば、去年EVOで優勝したときどが「笑ってコラえて」(1億人の大質問!?笑ってコラえて!)に出たり「情熱大陸」に出たり、自分も去年の活躍が評価されLIQUIDに移籍して収入が増えましたからね。

ときど:日本の格闘ゲーム界を代表する超トッププレイヤー。劇的な展開でEVO2017の覇者となったことでも有名。現在の「ストリートファイターV」公式ランキングではトップを独走している。東京大学出身

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