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皆さんは隅田川をご存じでしょうか? 毎年7月に大規模な花火大会が行われる、東京都の河川です。滝廉太郎作曲の唱歌『花』にも、「春のうららの 隅田川」と歌われていますね。
では、「隅田川」を表すためだけの漢字が存在するのはご存じでしょうか?
どんな字?
それはズバリ、「ボク」という字。「さんずい」に墨で、ボクと読みます。隅田川は古くは墨田川とも書いたので、そこから取ったのでしょう。
小説のタイトルに使われて広まった
実はこの「ボク」という字、江戸時代に一人の学者が作っただけのもので、世間一般に使われる漢字ではありませんでした。いうなれば、個人が勝手に作った略字にすぎなかったのです。
しかし、作家・永井荷風が、1937年に書いた小説『ボク東綺譚(ぼくとうきだん)』にこの字を使います。この作品は映画化もされるなど永井荷風の代表作となり、それと同時に「ボク」の字も世間一般に知られるようになりました。
地名を表すためだけの漢字はたくさんある
このように、ある地名のためだけの漢字が作られるケースは、実はほかにも見られます。
例えば、江戸時代の歴史家・頼山陽は、大阪の淀川に「さんずい+奠」という漢字1字を当てました。
しかし、この字は現在では一切使われていない、と言っても過言ではありません。残念ながら「さんずい+奠」には、自身を世間に広めてくれるメディアが存在しなかったのです。
そう考えると、「ボク」は極めて幸運な漢字だったといえるかもしれませんね。
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