妊娠や出産はめでたいものですが、それが心、体、社会(仕事)の上で、リスクがあることも確か。では、妊娠の可能性が男女平等になったとしたら……? そんな架空の世界を描いた漫画がTwitterなどで大きな話題となりました。
同作は、ある日ほんの出来心で後輩の女の子と一夜の関係を持った男性の視点で描かれます。酒に酔っていたため、避妊をし忘れてしまったことに気付きますが、そんなにすぐ妊娠する訳がないと高をくくります。
そんな折、神様の気まぐれにより、天の声がアナウンスされます。それによると、男女どちらが妊娠するかは「ど・ち・ら・に・し・よ・う・か・な・か・み・さ・ま・の・い・う・と・お・り(ハート)」方式に変更となり、男性も妊娠するようになるとのこと。
それからしばらくして、最近なんだか調子が悪いと感じていた男性は病院に。すると自分が妊娠しており、既に妊娠5〜6週であることを知らされます。たった1度だけで妊娠してしまった……!
一晩限りの関係だったため、真っ先に中絶を考える男性。ネットで調べ、妊娠22週未満なら中絶できることを知ったため、まだ余裕があるのだとまだそれほど深刻そうには見えません。中絶するには金がかかるため、4週間後の給料日後に再び、病院を訪れることにしました。
病院で「中絶」の意思を医師に伝えると、処置について一通り説明がなされます。まず点滴をして、麻酔をして、尿道を広げて……と、説明をする医師は尿道口を広げる器具も見せてくれます。これを尿道口に入れるだと……?
そして続けざまに医師は、男性にこう告げます「手術の日程ですが週数も進んでしまっているので……明日でいいですか?」と。
22週までに中絶をすればいいと思っていた男性は、あまりに急な宣告に仰天。そんな男性に、医師は週数が進んでいるため、1日でも早く中絶した方がいいと説明します。
確かに22週までの中絶は法律上は問題はないものの、妊娠12週を過ぎると胎児が大きくなるため、費用も倍以上になることもある上に、死亡届も必要に。男性は、同院では「医療的に必要でない限り断っている」という説明まで聞いたところで、中絶が想像よりも大事だったのだと思い知ります。
選択を迫られ、一人で後悔し悩んでいた男性は、一夜を共にした女性、川上さんに連絡を取ります。そして、妊娠をしたことを正直に伝えました。あの夜以来連絡がなかったため、いきなりの告白に驚く川上さん。
そんな川上さんに、男性は「正直あの時は酒の勢いというかなんちゅーか…」と、思わず本音をこぼします。深刻な空気の中でポロリと出た場違いな言葉に、川上さんは思わず笑いだします。一瞬場が和んだ後に、川上さんも踏み込んだ質問を投げかけます。――「今回妊娠したのが私の方だったら どうしてた?」。
いきなりの核心を突く質問に男性は「(えっ…ちょ…コレ…怖ー!!)」「(何が正解?????)」と内心大いに焦ります。しかし、ここは自分の正直な気持ちを話すしかないと素直に語り始めます。
女性が今の自分のように悩んでいるとは知らず、堕ろしてもらうように頼んだかもしれないこと。逃げることだけ考えたかもしれず、なかったことにしようとしたかもしれないことを。
その話を聞いた川上さんは、意外な反応をします。でも、そのことによって、男性は心強く思うのでした。さてこのふたり、これからどんな決断をするのでしょうか。続きは漫画の本編で……。
女性が望まぬ妊娠をしたとき、「堕ろせばいい」というのは簡単ですが、その決断や処置に臨む時、そして中絶した後も心と体に「なかったことにはできない」傷を残すものです。でも、自分に起こり得ないことについてはなかなか想像が難しいもの。
だからこそ、もし、男性が妊娠する可能性があったら……を描いたこの漫画を読むと、性差に関係なく自分事として理解できるかもしれません。
漫画を描いたのは、kicoさん。ブログで子育てや日常に関する漫画などを公開しています。
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