『ドラゴンボール』に登場する「精神と時の部屋」の中では、現実世界の1日で1年分の時が流れる。空気は4分の1の薄さで、気温は50度から−40度まで変化し、重力はなんと地球の10倍。短期間で過酷なトレーニングができるため、悟空をはじめ数々の戦士たちが修行に用いてきた。
精神と時の部屋が現実にあったら悟空並のアスリートが生まれるかもしれない。しかし、空気、気温、重力はまだ何とかなるとして、時間は現実ではどうにもならないのでは?
……と思いきや、実はそうでもない。部屋を超高速で動かせば、時間の進みを遅くできるのだ!
どのくらい速く動かせばいいの?
1日を365日に引き伸ばすためには、時間の流れを0.00274倍にすればよい。つまり部屋を光速の99.99962%の速さで動かせば精神と時の部屋になる!
……どういうこと?
5分でちょっと分かる特殊相対性理論
速く移動する空間の内部では、時間がゆっくりと進む。この現象はアインシュタインが唱えた特殊相対性理論によって予言され、実際に人工衛星内部の時計の進みが遅いことが確認されている。
速く移動する空間では時間の進みが遅くなる、という現象は、空間内を移動する光をイメージすると直感的に理解できる。
部屋が速度vで移動していて、その中の光源が光を発したとする。仮に時間が不変であるとすると、時間tが経過する間に、部屋はvt、部屋の中の光はctだけ移動する。この部屋を外から見たとき、光は時間tで√(c2+v2)tの距離を移動していることになるので、光の速度が√(c2+v2)となる……が、これだと光が光速より速く進むことになってしまう。
この矛盾を解消するため、光速cを固定とする。つまり、部屋の中も部屋を外から見たときも、光が速度cで動くとする。このとき、部屋の中の時間が外の√(1-(v/c)2)倍になっていると考えれば、図の青い直角三角形で三平方の定理が正しく成り立つ。
「時間の長さは宇宙上のどこも均一」という先入観を捨てたところが、アインシュタインの相対性理論のポイントだといえる。
最初の話に戻ります。どのくらい速く動かせばいいの?
精神と時の部屋の話に戻ると、1日を365日に引き伸ばすためには、時間の流れを0.00274倍にすればよい。√(1-(v/c)2)=0.00274を解くと、v/c=0.9999962。つまり部屋を光速の99.99962%の速さで動かせば精神と時の部屋になる!
実世界の技術はいかほど?
ちなみに人類の技術ではどのくらいの速さが出せるのかというと、「ブレイクスルー・スターショット」という計画で、今から20年後に光速の20%で飛ぶ超小型宇宙船を飛ばそうとしているところ。20%が99.99962%になるのは何年後になるのやら……。
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