「髪が薄くなって大銀杏を結えなくなった大関が、どんな病気でも治る河童の軟膏欲しさに関ヶ原地下河童闘技場に河童のコスプレをして出場する話」という紹介文とともにTwitterに投稿された異色の相撲ホラー漫画「小銀杏譚」が注目を集めています。
大関として角界を戦う主人公・禿鷲山(とくしゅうざん)は悩んでいました。彼をひどく苦しめるのは、番付と反比例するかのように後退した“薄毛”。関取のシンボルである「大銀杏」を結うことができず、禿鷲山の心は「小銀杏」と揶揄(やゆ)される屈辱にさいなまれていたのです。
そんなコンプレックスを特に刺激するのは、立派な大銀杏を冠のようにたたえた横綱・多毛豊(たけゆたか)の存在。仮にも大関まで勝ち上がる強さを秘めた禿鷲山でしたが、こと横綱との取り組みにおいては、土俵に立つ前からすっかり気持ちで負けてしまうのでした。
そんな彼にも転機が訪れます。ひょんなことから河童たちが相撲で争う地下格闘場に招かれ、どんな病気でも治すという秘薬をかけて戦うことになったのです。
禿鷲山が治療したい病気とはもちろん薄毛。「相手がどんな怪物だろうと俺が勝つ」という決意を胸に、河童のコスプレを身にまとう禿鷲山でしたが、土俵に待ち受けていた相手は……。
なんと因縁の横綱・多毛豊だったのです。しかし頭にいつもの大銀杏は見当たらず、禿鷲山と同じハゲ頭が広がっています。「小銀杏と揶揄されながらも堂々と戦う君を俺はずっと尊敬してきた」と、胸の内を打ち明ける多毛豊。彼の目的もまた河童の秘薬で薄毛を治すことでした。
コンプレックスから解き放たれた大関・禿鷲山 vs 真の姿を現した横綱・多毛豊! ストリートで交わされた世紀の大一番を見逃すな!!!
作者の西野マルタさんは相撲漫画の鬼才として知られており、代表作の『五大湖フルバースト』(全2巻)は、半身不随となった力士「五大湖」が悪のロボットに改造され、石像から蘇った伝説の横綱たちと爆裂怒涛のスモウバトルを繰り広げる怪作です。
なお今回紹介した「小銀杏譚」は、ホラー雑誌「コミック特盛 新耳袋アトモス」に掲載された読み切り漫画。長らくコミックス未収録の幻の作品となっていましたが、リイド社による短編漫画サルベージ企画「劇画狼のエクストリーム漫画学園」が取り上げたことで注目が集まり、トンデモ相撲漫画(本作含む)ばかりを集めた短編集『怪奇相撲大戦争(仮)』が2019年6月に刊行されます。
「小銀杏譚」を最初から読む
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