参加年齢上限なし! 大の大人が本気で戦う「大人のベイブレード大会」が想像以上にガチだった(2/2 ページ)
そんなの絶対面白いじゃん……と思って行ったらホントに面白かった、というレポートです。
「アタック」「ディフェンス」「スタミナ」の3すくみ――実は奥が深いベイブレードの世界
このあたりでいったん会場を離れ、タカラトミーの広報さんに話を聞くことに。というのも、この日は同じ池袋サンシャインシティの中で、池袋パルコで4月30日まで開催中のベイブレードバーと同じコラボドリンクが注文できたのである。
せっかくなので、ベイブレードのことを広報さんに聞いてみることに。ベイにはコマの軸にあたる「ドライバー」、中心部に位置する「ディスク」、コマの上部にはまる円盤状の「レイヤー」という3つの部品があり、これらを組み合わせて自分のベイを組み立てる。現在展開中の「ベイブレードバースト」では、既に100点を超える商品が発売されているので、組み合わせの数は膨大である。
また「ベイブレードバースト」では、当たりどころが悪いとベイ自体がバラバラに大破するギミック「バースト」を搭載。バーストの発生率は低いものの、弾き飛ばされたり回転が止まったり……という負け方よりもハデにやられる形になるため、これで負けると死ぬほど悔しいのである。
さらに言えば、ベイの強さの方向性には「アタック」「ディフェンス」「スタミナ」という3つの要素がある。アタックが強いベイは敵にぶつかって弾き飛ばすセットアップだが、逆に長い時間回転することが難しい。ディフェンスが強いセットアップだと敵の攻撃に耐える力が強いが、相手を弾き飛ばすのは苦手になる。そしてスタミナが強いと長時間回転していられるが、反面動きまわって積極的に攻撃するのが難しくなる……というわけである。この3すくみの中でどう自分のベイを組み立てるかが、ブレーダーの頭の使いどころなのだ。
な、なるほど、奥が深い……! でもそれなら「これで絶対負けない」っていう組み合わせがあるのでは? そんなことはタカラトミーだって承知の上。だから新しい部品やシリーズを開発する際には既存のベイとひたすらぶつけあわせ、強すぎたり弱すぎたりしないよう、0.1ミリ以下単位で設計を調整するのだ。つまり、「ベイブレードを戦わせまくり、データをとって検証し続ける」という男児向けホビー漫画のような仕事が、世の中には実在するのである。この血がにじむような努力により、「絶対的に強いセットアップが存在しない」というベイブレードのゲームバランスは成立しているのだ。すげーな!
なるほど、単にコマを飛ばして遊んでるだけじゃないのね……と合点がいったところで、ぼちぼち決勝トーナメントが開催される時間に。
おれが間違っていた……手に汗握りながら見守った決勝戦
そして始まった準々決勝。絵面としては「ブレーダー2人がベイをシュートする→決着がつくまでジッと見守る」を繰り返すだけなのだが、ステージ横のモニターに映し出されているベイ同士の戦いを見ると、素人目にも分かるくらい2人ともうまいのが分かる。シュートをミスしてスタジアムからはじき出されてしまうような初歩的なミスが一切ないし、シュートする前の位置取りの時点で互いに勝負をかけていることが分かる。ハイレベルだ……!
準決勝第3試合のTBRくまさんとJさんの試合では、ついにベイがバラバラになってしまうバーストが発生! バーストは一気に2ポイントが入る大技なので、誰もが積極的に狙っている。また、ここまでくると実力が伯仲しているので、3ポイント先取の試合で両者が2ポイントを取り合い、最終的に5回目のバトルまでもつれる展開も。試合の前には互いのベイを見せ合って相手の戦術を推し量り、待ったをかけて自分のセットアップを調整し直すこともできる。実際にベイを回す前から、相手との腹の探り合いを繰り返すのだ。正直「大人同士のベイブレードなんて、あんまり盛り上がらないんじゃないの……?」と思ってたけど、ハタで見てるだけでも十分面白い。立派なスポーツイベント感がある。おれが間違っていた。
というわけで、決勝戦まで生き残ったのはユウタさんとTBRくまさんの2人。ガチンコの一騎打ちである。初戦ではTBRくまさんが1ポイントを先取するも、その後ユウタさんが怒濤(どとう)の追い上げを見せて2ポイントを奪取。そして迎えた第4戦!
見事TBRくまさんを打ち破り、ユウタさんが初代大人大会チャンピオンに! おめでとうございます! やってることはベイブレードなんだけど、ものすごくいいものを見せてもらった感が!
ベイブレード、むしろ大人こそ楽しめるホビーなのでは
決勝戦終了後、優勝したユウタさん、準優勝のTBRくまさん、3位のシンゴさんにお話を伺った。ユウタさんは現役高校生の16歳、TBRくまさんは52歳のITコンサルタント、シンゴさんは32歳で建築関係のお仕事と、見事に3人とも仕事も年齢もバラバラ。あらためてベイブレードの層の厚さを思い知ることに。ユウタさんは2年ほど前にベイブレードを始め、TBRくまさんはお子さんがやっているのを見て10年ほど前から開始、シンゴさんは友達が家族ぐるみで遊んでいるのを見て3年ほど前から自分とお子さんで始めた……というわけで、ベイブレードを始めたきっかけも期間もバラバラだ。
「今回の大会で個人的に一番盛り上がった瞬間は?」と聞いてみたところ、ユウタさんとTBRくまさんはどちらも最終トーナメント進出が決まった時との答え。特にTBRくまさんはお子さんが以前の大会で最終トーナメントまで残ったことがあったそうで、「あの時は緊張するなよって言ったけど、こんな感じだったのかと思いましたね」と笑う。また、シンゴさんは「初回の予選の第一試合」が一番印象深かった。やはり緊張していたので、勝ってスタートできたことでホッとしたという。
「ベイブレードの魅力はどのへんにあると思いますか?」と聞いてみたところ、ユウタさんは「“最強”がないところ」、TBRくまさんも「正解がないところ」と答えが。ユウタさん曰く、「やっぱり駆け引きもあるし、負けると悔しい。でも負けた原因が絶対あるから、それを次はうまくやろうと思える。マジになれるんです」と語る。またTBRくまさんは「優勝した人と同じことをやっても、それで勝てるわけじゃない。やっぱり駆け引きが楽しいというのはあります」と答えてくれた。
さらにシンゴさんはベイブレードの魅力を「ブレーダー同士、知り合いや友人ができるところですね」と答えた。確かに大人になるといきなり友達を作るというのはけっこう難しい。その点ベイブレードは「チームもあるし、子どもとのコミュニケーションにもなる。女の子でも遊べるんです。だからおもちゃ屋さんとかで、友人や知り合いができていくのが楽しいですね」と語ってくれた。なるほど……ベイブレードはコミュニケーションツールにもなるのか……!
というわけで、終わってみればなんと7時間にもわたって繰り広げられた「G-1バーストカップ 大人のガチンコ大会」。名前の通り大人だらけの大会だったけど、ベイブレードってむしろ大人こそ楽しめるホビーなのではとしみじみ思う結果に。めちゃくちゃ沼っぽい趣味だけど、今度おもちゃ屋さんに行ったら1セット買っちゃいそうだな……今ですら家がオモチャだらけなのにどうすんだ……と、今おれは戦々恐々としている。
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進化しすぎだよ!