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平成のプリキュアは、いかに“2度の危機”から復活したのか マクロ視点から振り返るサラリーマン、プリキュアを語る(2/5 ページ)

平成最後のプリキュア記事、気合入れて書いたら1万字を越えちゃいました。

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2006年「ふたりはプリキュアSplash☆Star」

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 2006年2月。3年目に突入したプリキュアは新シリーズ「ふたりはプリキュアSplash☆Star」が始まります。タイトルだけ残してキャラクターを一新させた新シリーズです。ストーリーは今でも歴代NO.1だというファンが多いシリーズなのですが、開始当初から商業的には苦戦を強いられていました。玩具業界紙トイジャーナルでは、変身おもちゃの販売数が半減したことに言及があり、

ミックスコミューンの販売数が昨年のハートフルコミューンの半分。(『月刊トイジャーナル』2006年4月号 P87)


 後に、書籍『プリキュア シンドローム!』(幻冬舎)でプリキュア生みの親、鷲尾天は「女児アニメ史上はじめての試みに疑問符が付きつけられた」と言及しています。

 鷲尾「Splash☆Star」はたくさんの愛情を注ぎこんだ作品でした。いまでもキャラクターを含めストーリーも大好きです。しかし、残念ながらビジネス的には「MaxHeart」よりも落ち込んでしまった。タイトルを残してキャラクターをフルモデルチェンジする、という女児アニメ史上はじめての試みに疑問符が付きつけられたわけです。(『プリキュア シンドローム!』P35 加藤レイズナ著 幻冬舎)


 プリキュア3年目にして最初の試練が訪れます。関連商品の売れ行きが思った以上によろしくない。これには2つの理由があったものと思われます。最も大きな要因は、前年から引き続き大ブームとなっていたセガの女の子向アーケードカードゲーム「おしゃれ魔女・ラブandベリー」です。

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大ヒットした「おしゃれ魔女・ラブandベリー」(Amazon.co.jpから)

 「ムシキング」など男の子向けに展開していたアーケードカードゲーム市場が、「おしゃれ魔女・ラブandベリー」で女の子向けに進出し、一躍大人気コンテンツへとなりました。カードを選びオシャレをしてダンス遊びをするこのゲーム、アミューズメント施設には多くの女児が行列を作り、各地で開かれる大会には多くの女の子が集まり大盛況となりました。最終的にはカード出荷枚数が2億6000万枚を超える大ヒットコンテンツとなっていたのです。

 鷲尾「その中でも「ラブandベリー」は「ふたりはプリキュア」放送開始から約半年後の二〇〇四年十月からスタートして、あっという間に情報番組やニュースにとりあげられるくらいダントツの人気になりました。(『プリキュア シンドローム!』 P75 加藤レイズナ著 幻冬舎)

 この「おしゃれ魔女・ラブandベリー」の大旋風は、プリキュアを大きく苦しめることとなります。家庭で子どもに使用する金額は一定である以上、それまで女の子向けNo.1コンテンツであったプリキュアが大きく影響を受けたのです。

 「ふたりはプリキュアSplash☆Star」はKIDS視聴率などを見てもたくさんの子どもが見ていたのも事実で、決して人気がなかったわけではありません。

 ただ、誕生日やクリスマスなどで子どもがプレゼントを買ってもらうときは、どうしてもそのときの「1番」が選ばれるため、2番手になってしまった「スプラッシュスター」のアイテムが選ばれにくくなっていたのだと思います。

 この「おしゃれ魔女・ラブandベリー」と当時子どもに大ブームとなっていた「ニンテンドーDS」が子どもへの支出を大きく押し上げ、その結果、プリキュアはトイホビーの売り上げを大きく落とすこととなりました。

 また、この年は4月から、ちゃお系列の「きらりん☆レボリューション」が放送開始。特に小学生高学年の女の子に大きな人気を博していました。

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小学生に大人気だった「きらりん☆レボリューション」(Amazon.co.jpから)

 「ふたりはプリキュアSplash☆Star」は決して「女の子に人気がなかったのではない」という事実をここに記しておこうと思います。ライバルがちょっと強すぎただけなのです。

 また「キャラを一新してシリーズを続ける」という英断は、このスプラッシュスターから始まったものです。仮に3年目が「ふたりはプリキュアMaxHeart」の3人が続投するセーラームーン方式だったとしたら、プリキュアシリーズは16年も続いていなかったかもしれません。そういった意味でもスプラッシュスターはプリキュアの中でも革新的なシリーズなのです。

 この辺りの動きは『プリキュア シンドローム!』に詳しいので興味ある人は一読しておくと良いと思います。

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プリキュア シンドローム!(加藤レイズナ著 幻冬舎)(Amazon.co.jpから)

2007年「Yes!プリキュア5」

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 前年の売り上げが大きく落ち込みを見せ、始めての危機が訪れたプリキュアは次作2007年「Yes!プリキュア5」で驚くべき復活を遂げます。

 「Yes!プリキュア5」は「ふたりは」路線ではなく、個性あふれる5人ものプリキュアが登場し、その華やかなキャラとストーリーは子どもたちの心をガッチリつかみ、放送と同時に大人気となりました。

「Yes!プリキュア5」も2週目は前週比180%と良い動きを示した。(『月刊トイジャーナル』2007年3月 P69)


 「Yes!プリキュア5」の人気はすさまじく、春先からGWにかけては、変身アイテムを始めとした関連商品がおもちゃ屋さんの棚から消える程の人気となっていたようです(後にバンダイの関係者が「商品が行きわたらなくて流通に迷惑を掛けた」と発言しています)。

 商品MDに関しましては、昨年の春〜GW商戦にかけて欠品を出してしまい、夏休み商戦でようやく商品が揃うという形になってしまい、流通の皆さまにご迷惑をおかけしてしまいました。(『月刊トイジャーナル』2008年2月号)


 この頃になると隆盛を誇った「おしゃれ魔女・ラブandベリー」の人気はやや下火となり、変わってアトラスが展開した「きらりん☆レボリューション」のカードゲームが人気となっていました。

 そんな中プリキュアも、2007年11月からはアーケードカードゲーム「プリキュアデータカードダス うたって!プリキュアドリームライブ 〜スピッチュカードでメタモルフォーゼ!?〜 1stライブダス」が稼働を開始。女の子向けカードゲーム市場に追随します。

 プリキュアのアーケードカードゲームは比較的難易度が低く幼稚園〜小学生低学年にも遊びやすい設計となっていて、小学生低学年を中心に大人気を博すこととなりました。

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プリキュアデータカードダスのカード(Amazon.co.jpから)

 また「Yes!プリキュア5」はアニメーションの内容的にも華やかで個性的なキャラクターが生き生きと活躍し、自分の好きなキャラクターを応援しやすいことや「夢に向かって進む女の子たちの物語」は多くの名作回を生み、子どもだけではなく、たくさんの大人たちの共感を得たシリーズとなりました。

 登場キャラクターの妖精(かつイケメン男性)のココとナッツは親御さんを始め大きなお友達にも大人気で、後にCDなども発売される程の人気っぷりでした。

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CDが発売されたココとナッツ(Amazon.co.jpから)

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