「還暦」といえば、60歳を迎えた人に赤いちゃんちゃんこなどを贈る長寿のお祝いです。長寿化が進み、昔ほど盛大には祝われなくなった還暦のお祝いですが、どうして60歳のことを還暦というのでしょう?
「還暦」=「干支が一周する」
還暦は暦が還ると書きますが、「還」の字には「もといた場所に戻る」という意味があります。
では「暦」のほうはというと、これは「干支(えと)」のことです。つまり、還暦とは干支が一周してもとに戻るという意味なのです。
「干支」=「十干十二支」
普段、干支というと子・丑・寅……の十二支を思い浮かべると思われますが、これは干支を構成する2つの要素のうちの1つでしかありません。
干支のもう1つの要素は十干です。甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸の10種類あり、これを十二支と組み合わせたものが本来の干支です。
60年で生まれた年の「干支」に戻る
10種類ある十干と12種類ある十二支の組み合わせは、10と12の最小公倍数が60であることから、十干を6セット、十二支を5セット用意するとぴったり60個できます。よって干支は60種類となります。
今年(2019年)は十二支で亥(いのしし)年だというように、干支でも己亥(つちのとい/きがい)の年だといいます。こうしてそれぞれの年に干支による名前が付き、60年で1周するのです。
つまり、還暦とは満年齢で60歳のときに自分が生まれた年(0歳のとき)の干支に戻るという意味なのです。
おまけ:還暦の別名
還暦には「華甲(かこう)」という別名もあります。華という漢字を分解すると、十の字が6個と一の字が1個で合わせて61となり、数え年での還暦の年齢になるからです。甲の方は十干の最初にあたり、干支を意味します。
長寿のお祝いは還暦だけではありません。米の字をくずすと八十八となることから88歳を祝う米寿や、卒の略字の卆から90歳を祝う卒寿などがあります。こういったお祝いは本来数え年で祝うものです。
さらにおまけ:数え年
第二次世界大戦後まで、日本人には生まれて1年目の初誕生を祝う以外、誕生日を祝う習慣は一般的ではありませんでした。そのため誕生日を意識することがほとんどなく、年をとる(自分の年齢を1歳増やす)のは誕生日ではなく正月(1月1日)でした。
この「正月に一律に年をとる年齢の数え方」を「数え年」といいます。現在一般的な、誕生日に年をとる数え方は「満年齢」といいます。満年齢の数え方では生まれた年を0歳としますが、数え年では1歳とします。このため、数え年での年齢は常に満年齢よりも1歳年を多く数えているのです。
冒頭で還暦のお祝いは60歳としましたが、これは満年齢によるもので、数え年では61歳です。長寿のお祝いをする際には、相手の年齢がどう数えていくつなのかに注意しましょう。
参考文献
『日本大百科全書(ニッポニカ)』
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