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高さ233m。世界最高クラスのバンジーから飛ぶと、人間の身体はどうなるか?(3/3 ページ)

細胞たちのブーイングに逆らう。

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 5、4、


 細胞たちが這いずり回る。


 3、


 細胞たちがやめろと主張している。僕はやめない。


 2。


 身体中の細胞が暴れて、僕の中でスープになった。


 1。






 飛ぶ。









 飛ぶ瞬間、「フ〜〜」みたいな高い声を出そうとしたら、「グゥオオオ」と野太い声が腹から出た。本当の叫びとはそういうものだ。叫びは空気の摩擦音にかき消されて、マカオの空に霧散していく。

 視界が狭まる。世界が僕を駆け抜けていく。高速で移ろう物理世界とは裏腹に、僕の心理世界は澄み切った明鏡止水だ。永遠に思われるその滞空時間に、僕はどこまでも、いつまでも落ちていけるような気がする。

 ふと思い出した。バンジージャンプの起源は「ナゴール」と呼ばれるバヌアツでの通過儀礼にある。男たちは草木で組まれた櫓から飛び降りて、初めて一人前の大人として認められるという。

 校庭のフェンスから飛び降りた、あの時の気持ち。

 大人になるということは、その気持ちを忘れるということではない。それをどこまでも追いかけていくということなんだ。

 伸びきったゴムが反発し、身体が宙に舞った。無重力に投げ出された僕は、一つの通過儀礼を終えたのだと悟った。



 ゴムの揺れが安定した頃、ゆっくりと地上に降ろされた。地面を踏みしめても、まだ足元はおぼつかない。ふわふわした頭の僕に、スタッフがお土産を渡してくれた。



 Everyday Do Something That Reminds You You’re still ALIVE.
 (毎日、自分が生きてると感じることをやるんだ)

 僕は恍惚とした表情でマカオタワーを見上げた。自然と笑みがこぼれる。僕は間違いなく生きている。この細胞のざわめきが、高鳴る鼓動が、足首に残るゴムの感触が。全てが僕が生きていることを証明しているんだ。

 ありがとう、マカオタワー。バンジーは僕にいつも、大切なことを教えてくれる。


大切な何か

 しばらく地上で待っていると、続いて飛んだ友人が戻ってきた。飛ぶ前は能面だった彼の表情は、どう変わっただろうか。きっと彼もまた、大切な何かを思い出したに違いない。

 戻ってきた友人の顔を見ると、







 顔中に発疹ができてました。

 人は極度のストレス状態に陥ると、一瞬で発疹ができるらしい。発疹はその後3日間消えることはなかったという。


 世界最高クラスのバンジーから飛ぶとどうなるか?

 →結論:大切なことを思い出せるが、発疹もできる

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