何げなく道を歩いていたら、ビルの屋上にすさまじい大きさのクレーンが載っていてびっくり、なんて経験はありませんか?
一体どんな手を使ったら、巨大なクレーンをあの高さまで運べるのでしょうか。
クレーンの持ち上げ方
高層ビルの建設に使われる巨大なクレーンは、一般に「タワークレーン」と呼ばれています。
タワークレーンが上っていけるのは、ビルが高くなるのに合わせて自分で伸びていくからです。このクレーンの伸ばし方には「マストクライミング方式」と「フロアクライミング方式」の2種類があります。
マストクライミング方式
マストクライミング方式(図1)は地上に台座を固定し、クレーンを支えるマスト(支柱)を順次継ぎ足しながらクレーンを上げていくというもの。建物の外側に設置されるため、組立・解体が容易になっています。
フロアクライミング方式
一方のフロアクライミング方式(図2)は、建設中の建物本体を利用し、台座ごと持ち上げていくというもの。主に強度の高い鉄骨造の高層ビルを建てる際に採用されている方式です。ビルの内部で操作できるため作業半径を有効活用でき、小さいクレーンでも効率よく作業できるというメリットがあります。
※作業半径:クレーンの旋回中心から先端までの水平距離
では、タワークレーンの解体はどんな方法で行われるのでしょうか。
クレーンを解体するクレーン
マストクライミング方式の場合は、解体の仕組みも簡単です。建造中とは逆にクレーン本体を下げ、マストを取り外しながら降りていけば済みます。
問題はフロアクライミング方式の場合です。クレーン本体の下には建て終えたビルがあるわけで、当然そのまま降りることはできません。
そこで活躍するのが特殊な解体用のクレーン。
- まずタワークレーンで屋上に部品を吊り揚げ、小型の解体用クレーンを組み立てる
- 解体用クレーンでタワークレーンを分解し、部品を地上に降ろす
この手順を繰り返してクレーンを次第に小さくしていき、最後の解体用クレーンを人が運べるサイズまで分解します。あとはエレベーターで地上へ降ろすだけです。
「親亀・子亀・孫亀」とも称されるこの方法を使えば、1週間程度で全ての解体作業が済みます。忽然(こつぜん)とクレーンが消えたように錯覚するのも無理はありませんね。
おわりに
ちなみに、多くのタワークレーンが赤・白のツートンカラーをしているのは航空法に規定があるためです。
航空法および航空法施行規則によれば、高さ60メートル以上の構造物は赤と白の2色で塗装する必要があります(一部例外あり)。東京タワーが紅白に塗られているのと同じ理由で、タワークレーンもこの色調になっています。
移動式のクレーンと異なり、タワークレーンはスペースをそれほど取らず、重い資材を効率よく吊り揚げられる優れもの。一度の作業のみならず、解体を経て次の建設現場で再利用できる利便性も魅力です。
今度タワークレーンを見かけたら、その働きぶりに思いをはせてみてはいかがでしょうか。
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