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『地球の歩き方』を100冊読んで発見した、「最も詩的な一節」を発表する(4/5 ページ)

旅は人を詩人にする――。

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第1位 インド

インド。それは人間の森。
木に触れないで森を抜けることができないように、
人に出会わずにインドを旅することはできない。

インドは「神々と信仰の国」だという。
また、「喧騒と貧困の国」だともいう。
だが、そこが天国だとすれば、僕たちのいるここは地獄なのだろうか。
そこを地獄と呼ぶならば、ここが天国なのだろうか?
インドを旅するキミが見るのは、天国だろうか地獄だろうか?

さあ、いま旅立ちの時。
インドはキミに呼びかけている。
「さあ、いらっしゃい!
私は実はあなたなのだ。」

『地球の歩き方 インド 2018〜2019』より



 はい優勝!!!!!

 バックパッカーの聖地とも呼ばれる国、インド。ある意味定番すぎるので1位にするか迷ったが、やはりどう考えても圧倒的である。圧倒的すぎて最後にはインドが喋り始めた。「私は実はあなたなのだ」って。震えた。ガイドに書くことじゃない。最高である。

 先にも触れたように地球の歩き方は近年詩的な文章が減っているように思えるが、インド編だけは変わらない。「キミ」という二人称も、昔の歩き方の独特の文体を受け継いでいる。

 ガンジス川の沐浴で有名な街、バラナシの説明はこうだ。

列車に乗って行こうと、バスだろうと、自前の足で歩いて行こうと、おびただしい人々と、その間を運ばれてゆく死者たちに迎えられて、旅人はこの世界の底にある町に入り、永遠なるガンガーに全身を浸すことになる。

『地球の歩き方 インド 2018〜2019』より



 一体何人の若者たちがこれを読み、バックパックを背負って聖地へと出かけたことだろう。

 『「地球の歩き方」の歩き方』という地球の歩き方の創刊ストーリーが語られた本がある。それによるとインド編はヨーロッパ編、アメリカ編に次ぐ第3の地球の歩き方だったが、実際の旅人がその土地を解説する、というスタイルを確立した一冊だったという。地球の歩き方が今日あるのはインド編のおかげだとも述べられており、まさに歩き方の原点がこのインド編なのだ。そういう意味でもやはり1位にふさわしいと思う。

 ランキングは以上である。繰り返すがこれはあくまで僕の好みなので、他にもお勧めの一節があれば、ぜひ教えて欲しい。

 地球の歩き方は多様化する読者層や旅行ニーズの板挟みになり、大きな批判にさらされた時代もあるという。そういう背景もあって、近年は「バックパッカーのバイブル」から、「誰にでも役立つ便利なガイド」へとスタイルを変化させてきた。

 確かに「旅に出た時に便利」なのは旅行ガイドの役割だけど、それでも「旅に出たくなる」というのもまたガイドブックの魅力だと思う。というかもうこれ書いてたらすぐにでも旅に出かけたくなったので、とりあえずデリー行きの航空券を買おう。そう思えるような一冊が、これからも残り続けるといいなと思う。

『地球の歩き方』創刊メンバーの1人、安松清は言う。

「旅行業界が価格競争に明け暮れて、旅心をくすぐると言う、旅の出発点を置き去りにしてきたように思います。人は、たとえ値段が高くたって、行きたければ行きます。困難でも、行きたいものは行く。旅の魅力を自らの言葉で語り、それを伝えることを続けなければ、海外旅行もガイドブックも、先へは進めない。」

『「地球の歩き方」の歩き方』より




(了)


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