ニッポン放送「垣花正 あなたとハッピー!」(11月20日放送)に経済アナリストの森永卓郎が出演。日米貿易協定について持論を展開した。
日米貿易協定承認案が衆議院で可決
日本とアメリカの新たな貿易協定の承認案が、衆議院本会議で与党などの賛成多数で可決した。日本は環太平洋連携協定の水準の範囲内で農産物市場を開放し、アメリカは自動車・同部品を除く工業品関税を撤廃、削減するというもの。政府与党は2020年1月の発効を目指す。
垣花)日米貿易協定承認ということですが。
森永)これはあまり話題になっていませんが、日米貿易協定の交渉は、日本の全面敗北に終わりました。
垣花)敗北と言っていいですか?
森永)はい、完敗です。TPPにアメリカが入って、12ヵ国でつくっていました。そこで日本は牛肉や豚肉、ワイン、チーズの関税を下げますと。その代わりアメリカも日本から輸入する自動車の関税を、先になりますが、完全撤退しますということで取引しました。
垣花)これがTPPであれば、ですね。
森永)ところが、TPPからトランプ大統領が勝手に抜けてしまった。もう1度交渉して何が起こったかと言うと、日本は農産物をアメリカと同じように関税を下げますと。しかしアメリカは、自動車に関しては一切撤廃しない。
垣花)関税の撤廃は継続協議になったと、強く押し出していますよね。
自動車の関税撤廃する気は1ミリもないトランプ大統領
森永)継続協議にしないといけません。WTOの精神は自由貿易なので「継続協議」はしますが、トランプ大統領は撤廃する気は1ミリもありません。
垣花)総理の説明では、撤廃が前提なのでご安心くださいというものですよね。
森永)日本はそう言いますが、トランプ大統領には一切ありません。
垣花)トランプ大統領はそんなつもりはない?
森永)ありません。日本から輸出するときは、乗用車が2.5%とあまり高くないのですが、ライトトラックと言われるランドクルーザーのような車には、25%も関税をかけています。これを撤廃する気はまったくありません。アメリカは田舎が多いので、ライトトラックが大きなマーケットを占めています。車販売のベスト10の半分くらいがライトトラックです。日本のライトトラックは優秀なので、入れないために関税を課しているのです。それをなくすという約束だったのに、トランプ大統領はなくす約束をとらずに降りてしまいました。そして、貿易協定に署名しないと日本の自動車に数量規制をかける、制裁関税をかけると言って、圧力をかけて来たのです。その圧力に屈して、日本だけが関税を下げるということになったのです。
垣花)森永さんの見立てだと、日米貿易協定は完敗以外の何ものでもないと。あまり問題になっていないのはなぜですか?
森永)トランプ大統領がやるのだからしょうがないと、みんなが思い始めてしまっているのではないでしょうか。
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