ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月28日までに日放送)にジャーナリストの鈴木哲夫が出演。医療保障と社会保障の今後について解説した。
政府が75歳以上の医療費、2割負担へ
政府は75歳以上の後期高齢者の医療費の窓口負担について、現在の原則1割から2割に引き上げる方向で本格的な検討に入った。およそ3年後には団塊の世代が75歳以上となり、急増する社会保障対策と世代間の負担の公平性を確保する狙いがある。
飯田)政府には全世代型社会保障検討会議というものがあり、来月(12月)中旬に中間報告を取りまとめるので、そこに盛り込まれるのではないかと言われています。
少子高齢化が進み、医療費が増えることは20年前からわかっていたこと
鈴木)本格的な検討に入ったということですが、少子高齢化が進んで社会保障が大変になることは、わかっていたことですよね。年金は若い人が支えているので、その財源が少なくなる。また高齢者が増えるので、医療費も増えるから負担を増やして行かなければならない。つまり、少子高齢化から社会保障の財源がどんどん減って行く。社会保障は年金も減るなど大変なことになりますよ、ということは20年前から言われていたことです。
政治が逃げて来た結果のこと
鈴木)90年代初期に、橋本龍太郎さんと話しました。橋本さんも、「これからの課題はこれだ。大変なことになるので、政治は逃げてはいけない、向き合わなければ財源がなくなる。そして、国民に厳しいことも言わなければならない。財源を賄うのが消費税であれば、消費税も20%くらいまで上げなければならない。一方で、厳しいことを国民に言わなければいけないのならば、政治側も覚悟を決めて歳費をカットするとか、議員の定数を減らすなどということを行わなければいけない」と発言していました。これは、いままでの政治がこの問題からずっと逃げて来た結果なのです。こういう厳しいことを言うと、選挙で票にならないから避けて来たのです。
飯田)投票に行く方も多いし、もともとの母数も大きいですから。
やがて受給者となる若い人も高齢者と一緒になって政府と対峙する
鈴木)数の多い高齢者の方を意識して、この問題から避けて来た。もう1つは、現在の安倍政権が抱えている全世代型社会保障。この言葉を僕らはよく考えなければならない。なぜなら、いま検討会なども含めて出て来ていることは医療費、介護費、年金など、高齢者の方に比較的反映されています。高齢者の方の部分を削って、若い人に回すという印象がありますよね。実際に子育ての面で、保育園や幼稚園の無償化など、「高齢者の分を切って私たちに回って来ているのだな」と若い人たちは思う。ですが、75歳で医療費を負担ということは、若い人たちがその年齢になれば、みなさんも2割負担しなければならないということなのです。場合によっては、負担額の割合はさらに大きくなっているかもしれない。全世代型と言うと、何となくバランスを取っているように見えますが、どんどん財源を減らして厳しくして行くという流れです。このことについて、高齢者の方はいまから切られるので実感がありますが、若い人も実はそのなかに組み込まれていることを認識しなくてはなりません。
飯田)歳を取れば、今度は受給側にまわるということですものね。
経済成長とセットに〜政治側も歳費をカットするべき
鈴木)自分に返って来てしまう。ですので、ここは高齢者と若い人が一緒になって、政府としっかり対峙する。そして議論をして行かなければなりません。先ほどから言っているように、政治はここから逃げてはいけない。「厳しいですよ。消費税をもっと上げなければいけないかもしれない」ということを、勇気を持って言わなくてはならない。そのためには議員定数の削減というようなことで、形を示さなければいけないですよね。
飯田)現在の国会の停滞ぶりを見ていると、こんなに必要ないだろうと思ってしまいますよね。限られたパイのなかで、切りあって回して行くということではなく、稼ぎをどんどんと大きくするような…。
鈴木)経済成長がセットですよね。社会保障のなかだけではなくて、経済成長を含めたトータルで議論をしなればならない。しかしまずは少なくする、そんな意図が見えますよね。
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