「まず自分がスライムを倒せることを確認」 漫画家ナカシマ723さん これから個人で始めたい人へのアドバイス(3/4 ページ)
コミカライズ権を自ら取得し、単行本も自費出版し……でも「特別、私だけがお金を積んだからできたことっていうことは全然ない」という漫画家、ナカシマ723さん。これから個人で活動を始めたい人へのアドバイスも。
――これから個人で活動を始めたい、という人に助言していただけませんか。
基本的なことなんですけど、「むやみに人の悪口を言わない」ですかね。作品が面白くても、ふだんのツイートがギスギスしてると「何かフォローするのやだな」ってなると思いますし。
あとは、もしまだフォロワーが数百人くらいならら、単行本1冊くらいになる大きい規模の企画をやる前に、SNSで短いマンガを公開してPDCA(筆者注:「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Action(改善)」のサイクルを回すことは大事です。
フォロワーが少ないと、大きな企画を出してそれがバズらなかったときに、それは宣伝が足りないのか、それとも要するに、箸にも棒にも掛からないものだったのか評価できない。しかしある程度のフォロワーがいれば評価できますし、それに事前にSNSマンガを出した経験があれば、反応もなにか感触としてつかめてくるはずなので。だからフォロワーが数千人くらいになるまでは、SNSでぱっと公開できるような規模のマンガをやってみたほうがいいですよね。
たとえばオンラインサロンみたいなところで、編集者の人に見てもらうとか、あるいはマンガを描く仲間に、いちいち見てもらうとすることもありますけど、今であれば、みんないきなり読者に出しちゃえばいいんですよ。
Twitterも、私が始めた頃は、イラストは1枚しか投稿できなかったですけど、今は4枚続けて載せられるようになった。マンガが投稿しやすくなったじゃないですか。「パクツイBOTスレイヤー」(筆者注:ナカシマさんが公開していた無断転載アカウントを糾弾するマンガ)も、最初はTwitterで1ページ1ページ投稿していたのですが「あまりにも見にくいな」と思って、ブログのほうに置いたんです。
それでリンクだけ投稿したのですが、それでも何千リツイートとかされました。だからリンクだけ載せたツイートでも、面白ければちゃんと読んでくれるんだなと思いました。
――しかしそれでもなかなか、フォロワーを増やすのが難しいとお悩みの人も多いのではないでしょうか。
普通にマンガを描いている人で、そこそこの作画レベルのものを作っていれば、500とか1000ぐらいは、フォロワーさんはついてくれると思います。そこで自分の描いたものを出してみて、うんともすんともリツイートが伸びなかったら、それの方向はもうダメなんですよ。ダメだから、あきらめてくださいってこと。あきらめて別な道を考えることも、大切です。PDCAを回すことが大事です。
あとは、ちゃんとリンク先にTwitterカードを置くとか。やっぱり画像のTwitterカードがあるのと、ないのとでは、反応が全然、違うので。そういうことはきちんと仕込んで、多くの人に見られる努力みたいなことは、したほうがいいとは思いますね。
――商業出版であれば、よくも悪くも編集者や企画会議の反応で評価される。しかし個人であればすべて自分。でも実はこれが難しい。だからこそ、フォロワーを獲得して、見てもらうことが大事なわけですね。それにいきなり大きな企画をはじめるのは、いきなりボス戦に挑むのと同じことですもんね。
そうですよ。まず自分がスライムを倒せることを確認してほしいです。
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