小泉進次郎環境大臣の育休取得で注目が集まった男性の育児休暇取得。一般の職場でも育児休暇(以下、育休)の取得が勧められるようになり、改正育児・介護休業法が施行された2017年から男性の育児休暇取得率の上昇に弾みがつきました。さらに、男性に育休の取得を義務化も検討され始めています。
一方で、夫に育休を取ってほしいと思わない女性の存在も少なくありません。その背景には、夫婦で育休期間中の過ごし方についての話し合いや、準備がされることのないまま、ただ休暇を取っただけという質の低い育休「とるだけ育休」があるのではないか――子育てに役立つ情報を発信するアプリママリが、3992人の女性ユーザーに対して調査を実施。妻の視点から「とるだけ育休」の実態に迫りました。
「とるだけ育休」に女性たちの不満続出
夫が育休を取得した508人の女性に対し、育休中の夫が1日のうちに家事や育児をした時間をたずねたところ、「約3人に1人が2時間以下」という結果がでました。この家庭では夫が育休中にも関わらず、女性が1日のうちのほとんどの時間を家事や育児に費やしていたということになります。一方で8時間以上家事・育児に関わったという家庭も2割ほどあり、男性が育児にかかわる度合いに大きな差があるということがわかります。
さらに、自由記述では自発的に家事や育児に参加しない、家事の経験やスキル、新生児や産後の身体的負担に関する知識の不足などよって、新生児がいる家庭のなかで、家事や育児ができていない夫の姿が浮かびあがります。すでに発生している「とるだけ育休」。今後男性が職場で勧められ育休を取得するケースが増えると、「とるだけ育休」もさらに増加することも予想されます。
「とるだけ育休」の先にあるもの
夫が育休をとったことがない女性に「今後、夫(パートナー)に育休を取得してほしいと思いますか」と質問すると、「あまりそう思わない」「まったくそう思わない」と47.5%が消極的に回答。「とるだけ育休」が多発している現状を踏まえてこの結果を見ると、育休の意義や活用の仕方が理解されていないことが、多く男性が育児休暇を取ることに対しての期待を低くさせ、約半数の女性が夫の育児休暇を望んでいないという状況につながっているのかもしれません。
そして、育休についての理解が進まないまま「とるだけ育休」が増加していくと、育休についてネガティブな経験談が広がり、育休期待値も低下していくという「負のループ」が発生していくと考えられます。一方、過ごし方が夫婦で練られた「質の高い育休」が増えると、男性の育休取得についてポジティブな経験談やノウハウが広まり、育休への期待値が上がり、さらに「質の高い育休」が増える、という「正のループ」が生まれることになります。
より充実した育休のあり方が社会に広がっていく「正のループ」が展開するか、そうでないかは、「夫婦に男性育休の意義と活用法が浸透するかどうかが分岐点になる」と述べています。
「質の高い育休」は夫にもメリットが
さて、育休の質が、夫婦関係を左右するという調査結果もあります。夫の育休に満足していると答えた妻のほうが、育児や子育てで孤立感や負担感を感じにくいと回答する傾向がみられるのです。「とるだけ」でない、充実した育休期間を過ごすことは夫側にとっても良好な夫婦関係につながると考えられます。
「質の高い育休」を実現するために
では、一体、どのような過ごし方が、「質の高い育休」を実現するのでしょうか。妻に夫の育休の過ごし方について満足した理由と不満だった理由について自由に書いてもらった結果を分析。
すると、育休の質を高める過ごし方について、「量的に(家事・育児を)担当する」「(家事・育児に)必要なスキルを習得する」「(妻を)精神的に支える」「(家事・育児に)主体的な姿勢で取り組む」「(妻に)休息をとらせる」「十分な期間取得する」「家族との時間を楽しむ」といった「7つの法則」があることが明らかになりました。
質の高い育休に重要な「7つの法則」を実現するために、ママリは育休に入る前に育休準備を提案しています。育休準備のポイントは「ママの心身を理解する」「パパのメリットを理解する」「家事育児タスクを理解する」「育休の過ごし方7つの法則を確認する」「夫婦で話し合う」の5点。
育休準備を促すためには、母子手帳を配布する時に自治体窓口から夫婦に情報提供をするなど自治体や企業などによる周知が必要だと考えています。ママリでは夫婦で育休について考えるための冊子を作成。自治体窓口での10万部配布を目指し取り組んでいるとのことです。
調査から「とるだけ育休」に対する女性側から不満や、男性育児休暇への期待などがダイレクトに伝わってきます。それゆえ、男性が育休を取得する前に、夫婦で共有すると困らないことがよくわかります。
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