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伊豆の別荘が“マイナス50万円”でも売れない? 空き家問題で増え続ける「マイナス価格物件」の実態(3/5 ページ)

少子高齢化・人口減少、大都市への集中により出口の見えない日本の空き家問題。

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── 伊豆、そんなに人気がないのですか?

田中:はい、那須、群馬の北軽井沢とかも。

── かつての人気別荘地ばかり……。

田中:うちが以前扱っていた北軽井沢の物件は、100円でも全然売れなかったくらい。「別荘地は売れない。200万円くれるなら引き取りますよ」という管理会社もけっこうありますね。

── 逆に、土地を持っている側が支払う、と。それでも手放したいんですね。

田中日本の不動産って、もらってくれる人がいないと所有権が放棄できませんから。たいていの人は「市に寄付すればいいや」と考えるんですけど、自治体は物件の寄付を受け付けていませんし。

── なんとなく土地は寄付できるものと思っていますよね、軽く考えているけれども、実際は寄付を受け付けていないし困ってしまう。

田中:まさにそんな感じです。

別荘地以外でもマイナス価格物件

── ……ちなみに別荘以外のマイナス価格物件はありますか?

田中:例えば、熱海の戸建てだったんですけど、山奥にあって屋根に穴が空いていて。


屋根に穴が空いてしまった熱海のマイナス価格物件(写真撮影/田中裕治)

── 屋根の穴は直せないんですか?

田中:お金がかかりますし、そもそも建物が老朽化していて。

 あと、静岡県にあった火事の焼け跡の土地もマイナス5〜10万円での売却でした。残置物を撤去するために何百万円もかかっちゃいますから。


火災の後が生々しい静岡県の土地(写真撮影/田中裕治)


これはマイナス5〜10万円で売却されたという(写真撮影/田中裕治)

── (写真を見て)……これはヒドい。こんな惨状なのに、売れるには売れたんですか?

田中:焼けた家のまわりの土地が広かったので、静岡市内の残置物撤去業者の方が資材・車両置き場として、取りあえず空いているスペースだけを使うということでした。

── なるほど。そのままでも使えるから、マイナス幅が大きくならなかったと。

田中:それから、崖地はマイナス価格になりやすいです。道路から10メートルくらい低いような、道路にアクセスしづらい土地。

 あと普通の土地でも、田舎の20年ぐらい放置されているものはマイナス価格になります。前に熱海の山奥の別荘地があったんですが、そこは−150万円とか。

── −150万かぁ……。

田中:高知県の室戸岬で、−180万円ぐらいとかありますよ。


(写真撮影/田中裕治)

── それだけ田舎になってしまうと、マイナス額がふくらむんですね。

お金を払ってでも、物件を手放したい

田中:でも売った方はすごく喜んでいましたよ。

── 「ああ、手放せた〜!」って。

田中:そうです。そのまま家が老朽化して、台風で屋根が飛んで隣の家に迷惑かけるなんて心配だし、生きているうちに処分しようという。

── 不安要素を消すために、多少お金を払ってもという……。

田中:田舎だと「売ってもせいぜい10〜20万円なのに、相続税評価額が1千万〜2千万円くらいになって、基礎控除の3000万円の枠を圧迫してしまうこともありますから。であれば、持っていない方がいいよね、という。

── これからもマイナス価格物件は増えますか?

田中:増える一方でしょうね。安い新築が増えているうえに、日本は新築の家を買うほうを助成していて、中古物件が売れないので。逆にリフォームに助成するなど税制度や仕組みを変えれば、風向きも変わるかもしれません。

── 暗い話で終わるのも何なので、最後にお聞きします。マイナス価格物件が増えている今は、買う方としてはチャンスですか?

田中:適材適所です。マイナス物件の特徴を見極めて、使う目的が決まっている人にはいいと思います

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