ニッポン放送「ザ・フォーカス」(3月11日放送)に作家・ジャーナリストの河合雅司が出演。新型コロナウイルス対策の休業補償の問題点について解説した。
安倍総理大臣、新型コロナウイルス対策を国会で説明
10日、政府は新型コロナウイルス対策を発表し、11日に安倍総理大臣が参議院本会議で対策について説明した。安倍総理は経済財政運営に万全を期すとともに、地方自治体に必要な財政支援を行う考えを示した。
森田耕次解説委員)安倍総理は11日の参議院本会議で、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた全国一律の休校要請をめぐり、緊急対策の第2弾として、フリーランスなどの業務委託を受けて働く人が子どもの世話で休んだ場合、休業補償額を日額4100円とした理由を聞かれました。それについて、「働き方や報酬が多種多様であるなか、迅速に支援を行う必要がある」と述べ、「非正規雇用の人との給付バランスも考慮した」と説明しています。また、返済免除要件付きの個人向け緊急小口資金の特例もつくるということで、生活の立て直しを支援すると語ったということです。フリーランスの人に対する、4100円という休業補償の説明が求められたようですね。
河合)これには問題がいくつかあって、フリーランスの方といっても「お子さんの学校が休業になるのに伴って生じる課題への対応」ということなので、いわばお子さんがいる人たちだけに対する対応なのです。そうではないフリーランスの人で、例えばイベント自粛によって公演がなくなってしまった劇団員の方や、音楽家の方など、仕事そのものがなくなって収入が途絶えている方がいます。フリーライターやカメラマンもそうだと思います。そういった人たちへの所得補償については、今回の緊急対応策では何も盛り込まれていません。
森田)お子さんがいない方は対象外なのですね。
8330円の“助成金”〜個人向けの給付ではない
河合)また正規雇用の人たちには日額8330円の上限ということで、多くの方はお子さんがいて休職した場合に、8330円を貰えるという誤解をされているかと思うのですが、緊急対応策をよく読むと、これは個人への直接給付ではなく企業向けの対策なのです。自分のところで雇っている人がお子さんの世話などで休んだ場合、ローテーションに穴が開いてしまうので、別の人をアルバイトとして雇ったり、売り上げが落ちるなどの状況が企業によってあるわけです。そのため、休職した労働者1人当たり8330円を上限として、企業に対して支援するということなのです。
森田)「助成金」という言い方をしていますし、企業に対する支援ということなのですね。
河合)企業によっては8330円をそのまま休んだ親御さんに、というところもあるかもしれませんし、他に充填する場合もあるかもしれません。お子さんのために休業した人全員が、必ず8330円を貰えるという話ではないのです。
森田)そうすると、休んだ分の給料は減る可能性がありますね。
仕事の有無を証明することの難しさ
河合)その可能性はあります。個々人への補償の限りではないですから。また、フリーランスや個人事業主の人で、お子さんが休みで働けなかった人たちに4100円という話ですが、これを証明するのが難しい。何をもって自分の仕事ができなかったかを説明するルールは、まだ決まっていないのですよ。
森田)「きょうの仕事はないけれど、この先に延期しましょう」と言われた場合は、なくなったわけではありませんよね。
河合)また業務委託について、個別にきちんと契約書をつくっている人ばかりではありません。
森田)つくっていない人の方が多いのではないでしょうか。
河合)「時間が空いているなら来てください」という形で仕事を入れているフリーランスの方は多いと思いますが、その契約はそもそも証明できません。きちんと全員に支給されるかは次の段階の話です。
森田)そこを詰め切れていないのですね。金額自体も、正規雇用が8330円でフリーランスが4100円というのは、不公平ですよね。
労働者を見ていない政策〜今後の方針はどうすべきか
河合)そもそも、その比較以前の話なのですよ。先日の安倍総理は、本当にフリーランスのことをわかっているのかと言いたくなるような国会答弁もされていました。共産党の小池晃参議院議員とのやり取りを聞いていたのですが、議論が噛み合わないのです。これはフリーランスを理解されていないなと思いました。フリーランスなどの方々が、目の前の仕事がなくて困っている状況にきちんと対応しないと、大変なことになると思います。私の知り合いが面白い意見をSNSに上げていました。「コロナでは死なないが、仕事がなくて死にそうだ」と。
森田)笑えない状況かもしれませんよね。
河合)いまや政府の思い以上に、国民全体が自粛ムードになってしまっています。医療崩壊を防ぐためにやっていることですから、いまは仕方ないと思うのですが、先が見えなければ仕事がなくなった人たちはどうやって食べて行くのかという話になります。どこかで自粛の緩和を考えなければいけません。政府は自粛要請の延長について19日までと言っていますから、19日の段階で、例えば患者が1人も発生していない県は除外して行くなど、県という単位ではなく、さらに細かい自治体レベルで緩和してもいいと思います。何らかの手順を踏んで折り合いをつけるしかありません。医学者の人たちは新型コロナウイルスについて、感染リスクの可能性の話をしますので。
森田)可能性と言っていたら、「いつまた感染が拡がるかわからない」と言うでしょうね。
河合)ウイルスがなくなるわけではないので、感染リスクの可能性があるかないかという話をし出したら、きりがありません。感染リスクは仕事や生活など、社会そのものとのバランスを取りながら折り合いをつけて行くしかないのです。(感染リスクを小さくするには人との接触を減らしたほうがよいし、仕事をするには人々が交流しなければならないという)二律背反の話なので、難しいことは確かです。政治家は専門家任せにせず、イベントなどの自粛期限について、ある程度の見通しを立てて解除を宣言しないと、フリーランスや自営業の人たちはその日のお金もないという状況になってしまうと思います。
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