経済アナリスト・森永卓郎が、今国会で成立した「年金改革法案」の“からくり”を解説した。
公的年金の受給開始年齢を75歳まで繰り下げられるようにする年金改革法案が5月12日に衆議院を通過した。与党のほか立憲民主党なども賛成したこの法案は、高齢者による就労を後押しする狙いがあり、参議院に送られ29日に成立した。
年金の受給開始年齢を75歳まで繰り下げるといいことがある、という触れ込みだったが実際はどうか。5月27日のニッポン放送「垣花正 あなたとハッピー!」に出演した森永はこう解説する。
「75歳から受給すると、84%も増えるということなんです。例えば、年金を15万円受給できる方でしたら、75歳からだと27万6000円になるんです。すごくいいように思えますが、これについて衆議院の国会審議の中で共産党の宮本議員が追及していました。政府は、75歳から受給を始めても生涯もらえる年金総額は変わらない、としていまして、確かにそうなんですが、実は、年金にも所得税や社会保険料がかかるわけです。手取りベースで考えると、75歳からの受給を選んだ場合、生涯の年金受給額が350万円も減る、ということがわかりました。累進課税といって、所得が上がれば税率が上がっていくので、75歳からの受給を選ぶと、税金やら社会保険料でガッポリ取られて逆に年金が減ってしまいます」
75歳からの受給を選ぶ場合、自分の健康状態を信じて、気を使いながら働き続けて、それでも生涯もらえる額が減ってしまう。これでは“詐欺”と同じではないか、と森永は話す。
「これ、元をとるには90歳まで生き続けないといけません。こんな大事なニュースですが、新型コロナウィルスに埋もれてしまってほとんど報道されなかった。ですが、この年金改革法案はとっても大事なニュースです。メディアはきちっと報道してほしいですね」
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