「自家発電でテンションを上げるのは正直大変!(笑)」 古坂大魔王・作曲家「バグベア」がオンライン対談で「2020年注目の音楽」「リモートワークの本音」を語る(2/3 ページ)
「PPAP」に隠された秘密も明らかに。
古坂大魔王:後に取り下げられたものの、結果的に“幻の再生数”になってしまいました(笑)。
――そんなことがあったんですね……! 今回のコラボではそんな「PPAP」に、バグベア流のエッセンスが加わり、新しい作品になったと思います。当初はどういう方向性にしようという構想があったのでしょうか。
こぎみいい(バグベア):今回Mixさせていただくにあたり、まず「PPAP」という曲をひもといていったんですけれども、本当に「なるほどな」の連続で。あまりにも完成されていたので、「どうしたものか」とすごく悩んだんですよ。ギャグっぽいものとか、面白い方向性も検討したのですが、でもそれを中途半端にやったら逆にピコ太郎さんに失礼だなと。
じゃあ自分たちが中途半端な形ではなく、しっかりやり切れることは何か。と考えたときに、ガラッとかっこよくした方が、「なんでこの人たちこんな本気出してんの?」と逆に新しい笑いが生まれるのかなと気付いて。開き直った方向性で完成したのが「PPAP バグベアMix」でした。
ここみらい(バグベア):今回のMixで気付いたのは「PPAP」自体がものすごく「Big Room」(EDMのジャンルの1つ)と親和性が高い曲かもしれないということでした。「Big Room」は私たちが特に良く聞くジャンルなのですが、「PPAP」自体が「Big Room」なんじゃないかと思うくらいでしたね。本当にやればやるほど楽曲の完成度の高さに驚かされました。
古坂大魔王:こんな風に言ってくれる人、今地球上探しても10人ぐらいしか居ないですよ。それを言ってもらうために僕は「PPAP」を作ったかもしれないです。
――作曲のプロから見て、「PPAP」を一言で表すとどんな曲になりますか。
こぎみいい(バグベア):武道の達人、です。隙だらけに見えて本当は隙が全くない、それが「PPAP」だと思います。
ここみらい(バグベア):本当に入り込めないぐらい、完成された曲なんですよね。
古坂大魔王:僕の音楽はよくスカスカだといわれるんですよ。音圧という意味ではなくて隙間があるという意味で。でも僕自身がずっとやってきているお笑いの世界では「隙間がないと笑いが生まれない」んですよ。
僕は長年、どうやればリズムに乗ったまま人が笑ってくれるかという「テクノお笑い」というのを研究しているんです。例えば、「踊ると歓喜されるけど、笑われない」とか。だからなるべく、リズムに乗るけど興奮しないBPMを作って、なるべく一瞬で「コイツ何言ってんだろう」って思わせてから、あえて隙間の時間を作る。それを踏まえてお笑いライブでピコ太郎が登場したとき、「PPAP」以上に詰め込み過ぎるとウケなくなっちゃうんですよね。
こぎみいい(バグベア):なるほど、それはすごく納得だなぁ。
古坂大魔王:最小限の打撃で最大限の効果を得るためには、「あの長さ」で、「あの音味」だったんです。芸人の世界には「裏笑い」という文化があるんですが、バグベアさんが外枠をしっかり理解してくれた上で出来上がった「PPAP バグベアMix」はある意味、“アーティストの裏笑い”を体現したような曲になったと思います。本当に「PPAP」の真の狙いを分かっていただけたということは、あの子(ピコ太郎)は今すぐ死んでも本望だと思います。
バグベア:(爆笑)
古坂大魔王:テクノ、特にEDMは山ほどジャンルがあるじゃないですか。そういった中で、あの「PPAP バグベアMix」を聞いたときに、「バグベアでしかないし、ピコ太郎でしかない」と思ったんです、ジャンルとして。
調和って簡単なように見えて実はすごく難しくて、調和を目指した結果“ゼロ”になることがあるんですね。だけど、「PPAP バグベアMix」に関しては、何周かしてあぁなったんだなっていうのが分かったし、バグベアさんならでは耳なじみのあるシンセリフだったり、トランシーなアルペジオ的なものがしっかり入っていて、リバーブをつけることでウェッティーにしすぎないでまとめていくっていうところがカッコいいんですよね。
こぎみいい(バグベア):分析がすごい! ありがとうございます。
ここみらい(バグベア):うれしいですね!
古坂大魔王:あれをベースにもう歌っちゃうっていうのもありかなと思ったぐらいです。歌を適当に入れちゃうっていうね(笑)。そういうバージョンも聞いてみたいですよね。あとはあれの5分間の展開とかも聞いてみたいし。
こぎみいい(バグベア):会場でやったら盛り上がりそうですよね。
古坂大魔王:今なかなかね、ライブが客前でできないっていう状況ですけれども、お客さんの前でやったら絶対盛り上がるし、楽しいでしょうね。やりたいですね、ライブ!
――ピコ太郎さんとバグベアさんのコラボ、と聞くと驚いた方もいらっしゃると思うのですが、お話を聞かせていただくと、お二方には結構共通点が多い気がしてきました。
こぎみいい(バグベア):共通点という点でいうと、実は僕たちもJ-POPをあまり聞いてこなかったんです。J-POPの作り手として怒られちゃうかもしれませんが(笑)。特に僕は「J-POP禁止」という家庭だったので、クラシックと洋楽しか聞いちゃいけないという生活を送っていました。中学生ぐらいのときに反動で一気にJ-POPを聞き始めたんですが、やはり根底には洋楽があって。バグベアのルーツはダンスミュージックだと思いますし、メロウなのが結構好きで、僕たちは特にADMが好きですね。アーティストとしては自分はAvicii(アヴィーチー)が一番好きです。
ここみらい(バグベア):私はMike Williams(マイク・ウィリアムス)さんが特に好きで、海外のDJジャンルを良く聞きます。
古坂大魔王:日本の音楽っていうのは全然聞かなかった感じですか。「これは良いかな?」みたいなのはありましたか。
ここみらい(バグベア):私が子どものころ一番ハマったアーティストは「19」だったんですよ。ラジオまで聞くぐらい、ハマっていましたね。そこから「FUNKY MONKEY BABYS」「mihimaru GT」という流れですごく良く聞いていました。
古坂大魔王:確かに王道J-POPという感じではないけど、流れはありますよね。mihimaru GTに関して僕は一緒にツアーを回ったり一緒に活動をしたりしていましたが、日本のRap「J-Rapはダサい!」といわれている中で、J-POPにRapを混ぜて「Hip Pop」というジャンルを自称したりもしていたのをよく覚えています。
こぎみいい(バグベア):「mihimaru GT」さんが当時言っていた「ラップソング」という表現はすごく気に入っていて、僕たちも時々使わせていただいています。
古坂大魔王:うれしいですね〜。僕の方は子どものときというと、ドリフターズの志村けんさんにあこがれて、ビートたけしさんを見て、「とんねるず」さんにハマってと、もともとお笑いにしか全く興味のない人間だったんですよね。ところが、ドリフもとんねるずもは実は“音楽お笑いコント”をやっていたんですよ。そこで自分はカッコいい音楽がお笑いに付いてくるのが好きなんだと気付きました。
だから小学校3年生で「お笑いやる」って決めてから、自分のお笑いライブに使える音楽を探し続けてきました。それこそ自分でカセットデッキを2台準備して、歌って、そこにハモリを入れて。リズムマシーンなんてなかったから、スピーカーマイクロフォンを指でトントンたたいて4つ打ちを作ったり。出身が青森で周りにそういうのに詳しい人が全然居なかったんでね(笑)。
こぎみいい(バグベア):すごすぎる(笑)。
古坂大魔王:あとずっと好きなのはゲームミュージックですね。「イースシリーズ」「ファイナルファンタジーシリーズ」などの音楽。
J-POPで唯一ガッツリハマったのは、キョンキョン(小泉今日子さん)とUNICORN(ユニコーン)ですね。お二方ともものすごくパンクな人で、特にUNICORNは打ち込み曲もバンバンあったりして、「このピコピコドンドンって何なんだろう」と思って。東京へ来て、ピコピコドンドンを探して間違えてRapばっかり買っちゃって(笑)。「ダンスミュージック」って書いてあるのを買うと、大体「Rapミュージック」なんですよね(苦笑)。
当時はM.C.ハマーとかダンス甲子園が流行っていたころでしたが、僕は「The Prodigy(プロディジー)」「The Chemical Brothers(ケミカル・ブラザーズ)」といったデジタルロックと出会ったんですよ。そこからは「Underworld(アンダーワールド)」などを聞いて行ったんですが、僕の場合は洋楽っていうよりはピンポイントなんです。テクノからのデジタルロック、トランス、ハードハウス、そしてEDMという流れ。EDMだとDJ Snakeが好きなんですが、本当に良い意味で頭がおかしいというか、バケモンかなと思います。
古坂大魔王が今注目しているアーティストは
――最近注目しているアーティストはいますか。
古坂大魔王:重盛さと美feat.友達TOKYO DRIFT FREESTYLEには驚かされましたね。
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