ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(6月10日に放送)に数量政策学者の高橋洋一が出演。4月の毎月勤労統計調査で名目賃金が4ヵ月ぶりにマイナスとなったニュースについて解説した。
4月の毎月勤労統計〜名目賃金が4ヵ月ぶりのマイナス
厚生労働省は9日、4月の毎月勤労統計調査の速報値を発表した。現金給与総額(名目賃金)は2019年の同月と比べ0.6%減少の27万5022円。4ヵ月ぶりのマイナスとなっている。
飯田)実質の数字も2ヵ月連続で減少ということでしたが、名目でわかりやすい部分でも減っています。
高橋)給与というのは2種類ありまして、基本給とボーナスのような臨時のものとで分かれています。その臨時のものが急激に下がったということで、基本給はほとんど下がっていないはずです。
飯田)普段はそうですよね。
記録されている数字は非正規賃金と正規残業手当のマイナス分
高橋)正規、非正規でも変わるのですが、非正規のほうはアルバイトも含むので、早く賃金が下がりがちですね。要するに正規でサラリーマンの方は、「給料が下がった」という感覚はないと思います。しかし、テレワークなどで残業時間が減ったというのは、皆さん感じているのではないでしょうか。その分だけ残業手当が少なくなっているので、こういう数字が出るのです。
飯田)なるほど。テレワークなどになると、そもそも残業という概念がないですよね。
経済全体の数字はもっと悪い
高橋)そうなのです。一般のサラリーマンの方は残業が少なくなり、残業手当が減少して、こういう数字になります。ですが、この数字は雇用されている人なので、雇用されない人を入れるともっと下がります。特に正規の人はあまり下がらないので、ほんの少ししか変化が出て来ない統計です。失業となると給料がなくなってしまうので、そこまで含めると急激に下がります。ですので、実際の経済全体ではこの数字よりさらに下がります。
飯田)下がりづらく、下がるにしても幅が小さく出る統計でも、こうやって下がっているということは、他はさらに下げ幅が大きいのですね。
高橋)賃金やこういう統計は、後になって数字が出て来ます。本当の経済はもう少し悪くなっているのです。
飯田)これは遅く出て来る典型的な数字だということになりますが、前から言われているように、遅く出て来る指標というのは上がって行くときも非常に遅いと。
高橋)そうです。
飯田)雇用の改善が安倍政権の看板のようなものであった。それも毀損して来ている。
高橋)有効求人倍率、失業率も悪くなる。雇用というのはどの国でもマクロ経済政策の一丁目一番地です。雇用さえ確保できれば、だいたいは及第点を与えていい。さらに給料も上がればいいということになります。そういうなかで、今回、給料という部分で徐々に悪化している様子が出ている。このような数字が出て来ると、給料も下がるので消費も下がり、だんだんと悪い話が出て来るようになります。
第2次補正で野党が言うべきこと〜あと3兆円出して、1年間の消費税を5%下げる
飯田)そのなかで2次補正の審議をやっておりますが、2次だけで足りるのかという話になって来ますよね。
高橋)GDPの落ち込みを考えると当然足りません。野党の方も攻めどころが間違っていて、予備費の使い道について意見を言っていますが、財務省のほうから見るとプロレスショーのようなものです。野党はもっと本気で闘わなければならないのです。もっとも簡単なのは10兆円というのがありますが、使い道の話ではなく、「あと3兆円増やしてくれ」と。そうすると13兆になります。消費税は1%で2.6兆円になります。すると1年間で5%下げられる。こういう提案をすべきなのです。これがいちばん簡単です。使い道でもめるのではなく、「あと3兆円を余計に出して、その代わり1年間の消費税を5%下げろ」と言うべきです。
飯田)期間限定で。
高橋)はい。ドイツのように行う。ドイツは3%下げているので、同じようなことを言えばいいのです。いま給付金が出ていなくて大変だという話がありますが、消費税の減税であれば、その日からすぐに恩恵を被れるではないですか。これには手続きなどは必要ないのです。お金を配るのに時間がかかるという問題もありません。減税ですので直ちにできます。増税の場合は準備しなくてはならないので、すぐにはできませんが、減税は簡単なのです。野党はこのような提案をしなければいけません。いまのままでは茶番になってしまいます。
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