自由すぎるツイートや企画が度々話題になる「桂浜水族館」(高知県、1931年開館)。COVID-19(新型コロナウイルス感染症/以下、新型コロナウイルス)拡大防止による緊急事態宣言を受け、“戦後初”の休館を余儀なくされた間も、さまざまな取り組みでファンを増やし、公式Twitter(@katurahama_aq)は全国の人気動物園・水族館と肩を並べるフォロワー数にまで急成長しました。
一方で、営業再開から2日後の5月12日、公式マスコットキャラクター「おとどちゃん」は「ノーゲストッッッ!!!」と午前中時点での来場者数が0人だとTwitterで報告。SNSで人気を博しながら“閑古鳥が鳴く”同館の状態を「日本一フォロワー数と来館者数が比例しない水族館!!!!」と自虐混じりに伝えたのです。
「日本一フォロワー数と来館者数が比例しない」は“ネタ”なのか、それとも“事実”なのか。同館の広報担当者に確認しました。あわせて、SNS運用のコツや新型コロナウイルスの影響などを伺ったところ、とても興味深い回答をいただきました。ぜひ最後までごらんください。
2019年の来場者数は約10万人
同館の過去5年間の来場者数は約43万人。2015年の約7万人から徐々に数を伸ばし、2019年には約10万人を達成しました。現在の目標は年間15万人です。
推移
2015年:約7万人
2016年:約7万人
2017年:約8万人
2018年:約9万人
2019年:約10万人
※端数切捨て
ちなみにこの数字はどれくらいなのか。「公益社団法人日本動物園水族館協会(JAZA)」が毎年公表している年報によると、2018年度実績の来館者数1位は「美ら海水族館」(沖縄県)の約372万人。4位の「サンシャイン水族館」(東京都)が約174万人、10位の「須磨海浜水族園」(兵庫県)が約110万人と、トップ10はいずれも100万人を突破しており、文字通り桁違いです。
Twitterランキングはトップ10入り
そんな同館の公式Twitterフォロワー数は、6月末時点で約16万9000人。実はこれは国内の水族館アカウントのトップ10に入る数字です(※ねとらぼ編集部調べ)。「お前ら人類、聞こえますか?」と、開館から45分たってもノーゲストの状態を嘆くおとどちゃんのツイートをはじめ、「うち、歩合制なんです!!!」と土下座で来園をお願いする写真や、“飼育員ヲタ垢”とまでいわれる飼育員さんたちのオフショットが、「面白い」「ぶっ飛んでる」と度々注目を集めます。
推移
2016年12月:約1200人
2017年12月:約3050人
2018年12月:約2万6000人
2019年12月:約6万人
2020年5月:約14万7000人
2020年6月:約16万9000人
他の“公式”とは一線を画す、同館Twitterの「親しみやすさ」や「ファンとの交流」はどのようにして生まれたのでしょうか。広報担当者に運営方法やバズるコツ、そして“日本一フォロワー数と来館者数が比例しない水族館”という肩書への見解を率直に聞いてみました。
――Twitterの担当者は1人なのでしょうか?
時々「中の人変わった?」とか「中の人何人いるの?」と言われますが「おとどちゃん」1人です。
――自由な投稿について上の人は寛容なのでしょうか?
寛容です。当初はめちゃくちゃハラハラしたそうですが、今は逆に「真面目すぎ」とか「大人しすぎ」「おもんない」と言われます。
――定期的にバズるコツを教えてください
いい意味でも悪い意味でも一時のテンションとノリと直感と脊髄反射(狙ってやるとバズらない、調子に乗り過ぎるとたたかれる)。
――一方で伸びていない投稿も時々見られますが……正直へこみますか?
一切合切へこみません! タイムラインを追ってフォロワーさんのあれこれを監視したりもしないといけないのでいちいちへこんでる暇はありません。
――“日本一フォロワー数と来館者数が比例しない水族館”という肩書について、実際のところどのように捉えていらっしゃいますか?
事実が故にネタでしかない!!!
――比例しない理由は?
いろいろ考えられますが、一つはアクセスが良くないことです。桂浜水族館は遠い県外に住んでいるファンの方が多いことに加え、もともとのアクセスの悪さ(四国の高知の桂浜\辺鄙/)もあります。高知県の魅力がまだまだ県外の方に伝わってないのでしょう。桂浜だけでなく他の観光地や食文化の良さが露出していないことは、高知を旅行先に決めるのにとても不利だと。だって桂浜水族館のためだけに高知に行くぞ! ってなっても、せっかく行くのだったら「他に何があるの?」ってファンの方もなると思います。
いくらファンだとはいえ、さすがに桂浜水族館だけでは「高知」を満喫できないでしょうし、他施設や食文化を楽しんでこそ「高知っていいな、桂浜水族館また行きたいな」って思うはずです。
高知の魅力自体がまだまだ取り上げられていない、浸透していないことも旅行先に決めかねる原因であり、当館が「日本一フォロワー数と来館者数が比例しない水族館」である一つの要因であると思います。
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