期限どおりに払わないと、罰金や利息を課せられることもある「税金」。しかし、世の中には、これらの制度があっても、あえて税金を払わない人がいます。
では、税金を支払わないと、最終的にどのようになるのでしょうか? 元国税局員のさんきゅう倉田が解説します。
さんきゅう倉田
大学卒業後、国税専門官試験を受けて東京国税局に入庁。法人税の調査などを行ったのち同退職、芸人となる。芸人活動の傍ら、執筆や講演で生計を立てる。好きな言葉は「増税」。公式サイト、Twitter
そもそも「差し押さえ」って何?
国民の義務でもある納税ですが、何らかの事情で実際に現金がなく、税を納めることが困難な場合もあるかと思います。その場合は、税務署や地方税の事務所と相談して、納税の猶予を申請するという選択もあります。
しかし、それすらせず、年月の経過により延滞税が増えていっても払わずに放置したり、「払う払う」と言いながら払わなかったり……。このように、恣意的に督促を無視していると、滞納処分による差し押さえを受けることになります。
差し押さえについて、国税徴収法47条にはこのように記されています。
徴収職員は、滞納者の国税につきその財産を差し押えなければならない。
一一滞納者が督促を受け、(中略)十日を経過した日までに完納しないとき。
差し押さえはどのように行われる?
では、実際の差し押さえはどのように行われるのでしょうか。
税金には納めるべき期限「納期限」があります。これを過ぎると、督促、催告、財産調査ののち、財産の差し押さえが行われます。
直接見る機会はないと思いますが、警察等の立ち会いのもとで差し押さえが行われる様子は、たまにテレビで放送されていますよね。これは、国税局や税務署ではなく、地方自治体の徴収の様子です。時折、モザイクをかけられた滞納者が「いきなりくるな!」「払うって言うとるやろうが!」「なんで連絡もせんとくるん?おかしいで」などと叫ぶ様子も見られます。
当たり前かもしれませんが、差し押さえが行われる時に、「明日、差し押さえに行きますね」と電話で連絡が来ることはありません。差し押さえるられるものを隠したり、処分してしまう可能性があるからです。
行政のやることだから……と甘く見て督促状を無視していると、急に大切な財産を持って行かれてしまうかもしれません。なお、差押えられたものは、滞納した税金を払うことができなければ、競売にかけられる可能性があります。
ドラマや小説で、警察が住居や会社ビルに入るために裁判所の令状を求めるシーンがあるためか、滞納者の中には職員に「令状はあるのか?」と聞く人もいます。しかし、滞納処分に令状は必要ありません。
もし、速やかに職員に帰ってほしければ、滞納した税金に相当する現金や資産を提示しましょう。
差し押さえができないものってどんなもの?
一方で、納税者の最低限度の生活や経済活動を守るため、差し押さえができない財産も定められています。
行政も鬼ではないので、裸で過ごさなければならないほど服を持っていったり、夕飯が作れないほど調理器具を持っていったり、子供の教科書や鉛筆を持っていったりはしません。
また、仕事に最低限度必要なものも差し押さえされません。ただ、“最低限度”の線引きは容易ではないようで……SMの女王様が、三角木馬を差し押さえられたという話を聞いたことがあります。徴収官にとっては、ムチやろうそくと違って三角木馬は最低限必要なものではなかったのかもしれません。
もし、何らかの事情により納税が困難な場合は、必ず行政に相談しましょう。特に、コロナウイルスの影響で売上が下がり納税が困難な場合は、申請により1年間の特例猶予が認められます。延滞税は全額免除、担保の提供も不要です。
それ以外の場合でも、税金の督促の放置や無視は、あなたに災いをもたらす原因となります。自分が延滞しているものについての相談は勇気がいるかもしれませんが、まずは話してみることが大切です。
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