コロナ禍でも合唱を続けたい―― 東京混声合唱団の「歌えるマスク」に注文8000枚 開発の背景を聞いた
「歌えるマスク」を着用した合唱の様子は、東京混声合唱団のYouTubeチャンネルで視聴できます。
日本を代表するプロ合唱団の「東京混声合唱団」が歌唱用の「歌えるマスク」を製作しました。COVID-19(新型コロナウイルス感染症)が感染拡大する中、演奏活動を続けるために作られたマスクは、注文数が8000枚に上るなど大きな反響を呼んでいます。
「歌えるマスク」は、表地はポリエステルと綿、顔に触れる薄い生地の裏地は綿100%でできた布製マスク。1枚ずつ手作業で作られています。
着用する際は、ノーズワイヤを鼻に当ててから輪っかを耳にかけ、あご下でヒモを結ぶと、マスクで鼻から鎖骨の下あたりまでを覆えます。マスクをした状態でも唇の周りに空間ができ、歌唱が可能です。
7月31日には同合唱団が「歌えるマスク」を着用して、「コン・コン・コンサート 2020」を開催しました。マスクをしていても美しい歌声とハーモニーが響き渡っています。
※画像はYouTubeのライブ配信からキャプチャーしています
今回は「歌えるマスク」開発の経緯や反響についてのお話を、東京混声合唱団の村上さんに電話にて伺いました。
── 「歌えるマスク」の開発に至った経緯をお聞かせください。
村上さん: 5月16日に演奏会の予定がありましたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で7月31日に延期になってしまったんです。合唱の演奏活動を続けるため、マスクの製作を決めました。合唱は唇を開放した状態でなければならず、唇に触れないマスクが必要でしたが、合唱団の要望に応えてくださる方に巡り合い、試行錯誤を経て「歌えるマスク」が誕生しました。7月31日の演奏会では「歌えるマスク」を着用して合唱しています。
── 予想を超える数の注文で生産が間に合っていないとのお知らせを拝見しました。実際、どれくらい注文があったのでしょうか。
村上さん: アマチュア合唱団が練習場である公共施設が借りられず、お困りになっていると聞き、安全と思われる方法でマスクを製作しお譲りしたいと思っていました。「歌えるマスク」は予想を超える反響があり、現在は8000枚ほど注文を受けています。しかし、マスクの製作は個人の方にお願いしており、生産が間に合っていない状況です。ほかにもマスクを縫ってくださる方を探し、受注できる見込みが立ちましたが、大量生産は難しいというのが実情です。
── クラシック音楽公演運営推進協議会が実施していた「飛沫調査」にも合唱団として参加されていたとサイトで拝見しました。まだ結果は出ていないようですが(※)、その後調査に進展はありましたか。
※取材時点(8月13日)ではまだ結果が出ていませんでしたが、その後17日に詳しい調査結果が公開されました
村上さん: 7月13日に実施した「飛沫調査」の結果は8月中旬に出る予定です。マスクをしていれば、ある程度の飛沫は抑えられますが、マスクで防げない小さな飛沫に関しては換気が効果があります。新しいホールでは空調の環境が整っているので換気も十分行えますし、設備が整っていない練習場所では、練習時間を短くしたり、窓を開放したりして感染対策をしています。
── 次回の演奏会はいつごろ開催される予定ですか。
村上さん: 9月8日に東京芸術劇場にて、田中信昭さん筆頭に8人の指揮者が一堂に会し、東京混声合唱団とともに演奏会を行います。ぜひお越しください。
現在入荷待ちの「歌えるマスク」は、「アイボリーホワイト」「ライトピンク」「サックスブルー」「ライト杢(もく)グレー」の4色展開で、1枚1300円(税別)です。予約注文は合唱楽譜専門店「パナムジカ」のWebサイトにて受け付けていますが、マスクの色の指定はできません。納期は2カ月程度が目安とのこと。なお、キャンセル・返品も不可です。
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マスクの部分と耳にかける紐の部分が一体型になった無縫製のマスク。