建築専門誌『建築知識』が8月20日発売の9月号で「建物にまつわる約1100用語」を特集します。キッチン、地下室、和室、テラス、浴室など知っていそうで実は知らない建物の名称・寸法を分かりやすく解説した用語図鑑は、イラストや小説、模型作りなど創作で役立ちそうと話題に。
『ポプテピピック』の大川ぶくぶさんのイラストが表紙の9月号は、住宅を中心に身近な建物と名称を「部位別」に分け、寸法入りの立体イラストで解説。ドアや浴室、トイレなどと人の大きさの対比、最新家電や防犯装置、家具、小物の寸法・名称なども掲載されており、1冊持っていれば作画や文章表現のクオリティーアップに期待できます。
今回は「建物用語図鑑」誕生の背景や創作に役立つおすすめポイントなどを『建築知識』編集部にお話を伺いました。
── 「建物用語図鑑」がテーマの今号ですが、企画の趣旨について詳しくお聞かせください。
『建築知識』編集部(以下、建築知識):今回の特集号では、リビングや和室、浴室などいろいろな部屋を輪切りにした絵をつくり、そこで使われる仕上げ・下地材や工法について解説しています。部位・部材の名称はもちろんのこと、デザイン的もしくは施工上の意味・意図も知っていただきたいとの思いで制作いたしました。さらに建物のスケール感覚も養っていただけるように、絵には実際の寸法を書き込んでいます。
用語図鑑を作るうえで、どんな分類にすれば建築をより身近に感じて、興味をもってもらえるかが大きなテーマでした。これまでも建築法規と美少女擬人化(2017年12月号)、猫とDIY(2020年5月号)、建築構造とBL(2018年10月号)など建築を身近に感じてもらうことで読者の幅を広げてきましたし、その着眼点は同じです。読者の幅が広がったことにより「パースと背景画の最新技術」を特集した『建築知識2019年10月号』は発売後即重版、重版分含め完売しました。
過去にも用語事典(図鑑)の特集は何回もありましたが、分類は工種(工事)別でした。基礎工事、躯体工事、塗装工事、左官工事などの工事ごとに用語を集めて作成していくものです。雑誌を編集する立場からすると、それぞれに専門家がいるため用語の選定も解説も容易にできます。現場を知り、建築ができるまでの工程を学べるのは利点ですが、つくりやすかったのも事実。ある意味、(編集者が)楽をしていたかも……。
しかし、今回はあえて玄関、リビング、和室……という部屋別の構成にしました。一般の方にとって建築の分類で一番理解しやすいのが部屋別だと思ったからです。毎日を過ごす家は部屋ごとに認識しているはずですし、間取り図を眺めるのが好きという人が多いのも、その証左かと。
リビングの専門家なんていませんから、作る難易度は上がりました。そこを編集者と監修者で頑張った結果、身近な部屋単位に用語解説をまとめることができたと思います。「これはこんな名称だったのか」とか、「確かにこんなサイズかも」なんて使い方をしていただければうれしいですね。
── 絵やゲームシナリオ、小説、模型を作るときなど、創作に役立つおすすめポイントはありますか。
建築知識:あくまでも想像ですが、建物、特に住宅についての基礎知識があると創作時に役立つと思います。自分の書いているシナリオや小説の舞台設定が正しいかどうかって、重要なことですよね。
例えば、動物などを使った密室殺人事件を描くときの「どこから部屋の外に出るか?」を現代の住宅で考えてみます。言い換えれば「人間は通れないが、動物は出入りできる穴や隙間を何にするか?」です。給気口は防虫ネットが付いているのでダメ。それなら24時間換気の義務化(2003年)でできた室内ドア下部の隙間(わずか1センチ程度)を通り道にするか、もしくは木造の集合住宅の天井裏を使うか。その屋根裏も以前は界壁で区画されているので通り抜けができませんでしたが、2019年の法改正で界壁不要の仕様が可能になったので実現できたりして……。という感じで、今の家の仕組みを知っておくことで物語にリアリティーがだせるかもしれませんね。
勝手なイメージですが、地下室も創作の舞台になりがちかと。「部屋」として使う地下室はなんとなくかたちが似ています。これは地下でも健康的な生活が送れるようにと法の規制(からぼりに面した開口部が必要になるなど)を受けるからです。今回の特集でも地下室を取り上げていますので、「これをからぼりって言うのか」とか「(からぼりの)奥行きは1メートル以上いるのね」など知っていただけるとうれしいです。
── 建物の特徴を分かりやすく解説するために工夫した点はありますか。
建築知識:部屋以外にも開口部や屋根といった建物の部位も大きく扱っています。イラストを使って解説するので、現実にはあり得ない建物を説明のために描きました。例えば、開口部のページでは、さまざまな種類の窓を壁一面に並べています。建物に取り付けた状態でそれぞれの窓を比べることで、その大きさや開閉形式がもつ意味などがより伝わると思ったからです。ほかにも屋根の形が全て異なる住宅街を描いて、その名称、特徴が一目で分かるように工夫しています。ぜひお近くの書店で手に取っていただければ幸いです。
『建築知識2020年9月号』は書店のほか、Amazon.co.jpやhontoなどネット通販からでも購入できます。価格は1720円(税込)。
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