世界中に見られる神話伝説形態の一つに「異類婚姻譚」というものがあります。これは「人間と異種族が結ばれる」という内容の神話・伝承全般を指すもので、そのほとんどは「破局と永遠の別離を伴う悲劇的な結末」を迎えて終わるのです。
今回ご紹介する漫画は、その前提を踏まえて読むと切なさが増してしまう……大蛇の怪物と結婚するハメになった、人間の女性を描いた物語です。作者はフシアシクモ(@FspiderP)さん。
人間の女性であるミヨは、山の主である大蛇の怪物へ、人身御供の花嫁として差し出されてしまった身柄です。大蛇を前にしてすっかり怯えきった様子のミヨでしたが……大蛇は彼女が望んで嫁いできたと思っているのか、人間の感情が読めないのか。ミヨとの結婚を大いに喜び、末永くよろしく頼む、と優しく伝えたのでした。
次の日。大蛇に頼まれた身の回りの世話をこなすミヨでしたが、ひとつだけ剣呑なものがありました。それは「動物を生け捕りにする罠を仕掛ける」というもので、大蛇はこれに掛かった動物を食事にする、と言うのです。
大蛇は気を遣ったのでしょう、それぞれ別室で食べようと提案したのですが……丸呑みされたキツネの骨がバキバキと鳴る生々しい音が隣室で食事をするミヨの心をも砕きました。ミヨはこれ以上は耐えられないと思い、その日の夜に脱走を試みるのです。
大蛇のお社を抜け出し、夜の山道を走るミヨ。焦りすぎたせいでしょう、何かにつまづき転んでしまいます。そして目線を上げたその先には、大蛇が文字通り「鎌首をもたげていた」のでした。
慌てて言葉をつむげないミヨを見て、大蛇は大きく口を開きます。死を覚悟したミヨでしたが……大蛇はミヨをくわえて持ち上げ、背中へ乗せただけ。そしてミヨを気遣いねぎらう優しい言葉を掛け、ともにお社への帰路についたのでした。
恐ろしい外見とは裏腹の穏やかな性格で、ミヨを終始気遣い優しく接しているものの、人間の感情が読めない様子の大蛇。種族の違いを乗り越えられず、最後まで怯えきった様子のミヨ。どうにもちぐはぐで行き違っているふたりの想いは、最悪の結末を予見しているかのようにも思えます。
作品提供:フシアシクモ(@FspiderP)さん
たけしな竜美(@t23_tksn)
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