【ライター望月の駅弁膝栗毛】(初出:2020年3月23日)
はるか遠くハワイまで続く、広い太平洋を望みながら福島県浜通り地方を進む、仙台からのE657系電車・特急「ひたち」号。
いわき以北の常磐線を再び特急列車が走る日を、多くの人が待ち焦がれていました。
国鉄時代から多くの優等列車が行き交ってきた常磐線には、やっぱり10両の長い編成が、とてもよく似合うものです。
仙台発着の「ひたち」号は、いわき以北で広野、富岡、大野、双葉、浪江、原ノ町、相馬などの各駅に停まり、上野〜仙台間の所要時間は、約4時間半となります。
とくにこの3月に運転を再開した富岡〜浪江間の駅周辺は、再開発が進む場所がある一方、駅から至近の場所でも電柱が傾いていたり、9年間、時間が止まったままのところもあります。
常磐線の運転再開によっていま、ようやく復興のスタートライン…そんな印象を受けました。
常磐線全線運転再開に合わせて、いわき駅にも記念駅弁が登場しました。
「小名浜美食ホテル」が製造する、その名も「浜べん」(1480円)です。
福島・浜通りの地図が描かれたパッケージには、浜べんのロゴの横に『令和二年 常磐線全線開通 記念弁当』の文字が入って、プレミアム感がありますね。
いわき駅ビル3階(改札口と同じフロア)奥の美食ホテル売店などで販売されています。
【おしながき】
- 鮭いくらご飯
- 牛しぐれ煮ご飯 錦糸玉子
- うにの貝焼き
- さんまみりん干し(北海道産)
- めひかりの唐揚げ(茨城県産)
- ほたてひもの唐揚げ
- わかめの唐揚げ(三陸産)
- かつおおろし煮
- さつま揚げ
- 煮物(人参、椎茸)
ふたを開けると、真ん中にいわき名物・うにの貝焼きが入って、めひかりの唐揚げも!
さんまのみりん干し、ほたて、わかめは唐揚げで、魚介類のバリエーションも豊富です。
ご飯は鮭といくらのはらこ飯と、牛のしぐれ煮が載った牛めしの2つの味が楽しめます。
「小名浜美食ホテル」によると、いわきの美味しいもの、とくに海産物は昔から「常磐もの」と呼ばれてきた食材を、とにかく詰め込んだのだそうです。
「浜べん」の開発に当たっては、「JF福島漁連」の協力を得て、「駅弁を通じて福島の漁業も復興させたい!」という思いを込めたといいます。
福島沖は黒潮と親潮が交わる豊かな海で、魚種すべてで出荷制限は解除されていますが、いまも試験操業で風評を払拭できず、やむなく他の海域のものを使わざるを得ない状況。
『浜通りには昔から育まれてきた魚の文化がある』ということを、駅弁として販売することで、いつか再び福島の海で獲れた魚を安心して使うことができる未来へつなぎたい…。
じつはこの記念駅弁には、浜通りの魚文化を愛するみなさんの熱い思いも詰まっています。
その思いに応えるべく、常磐線の列車から海を眺めて記念駅弁を味わいたいものです。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/
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