本作のアクションの数々は日本のアニメやマンガに強い影響を受けており、「ドラゴンボール」や「NARUTO」を思い出すところも多く、「AKIRA」のような大スペクタルも待ち受けている。
バトルのアツさそのものも、「羅小黒戦記」はアニメという媒体で可能な最高レベルまでに持って行っているのだ。子どもおすすめできる大きな理由は、このスーパーハイスピードバトルアクションに「カッケー!」と興奮できることにある。
また、本作は“ロードムービー”でもある。素直な性格の黒ネコの妖精シャオヘイと、“最強の執行人”と恐れられる人間の青年ムゲンが、初めは反発し合いながらさまざまな場所へ旅をしていく様が、とてもコミカルに描かれているのだ。
性格が正反対の凸凹コンビが、冒険をしていく中でお互いに信頼をしていくようになり、そして成長していくというのは、それだけでドラマティックだ。何より、この「羅小黒戦記」はキャラクターそれぞれがとても魅力的。シャオヘイはコロコロと表情を変化させていて可愛らしく、対するムゲンはクールに見えて実は優しい。この2人が心を通わせていく様にニヤニヤしつつも、その旅路を心から応援し、そして見届けたくなるだろう。
3:「もののけ姫」「X-MEN」を思わせる対立構造
本作では、明確に人間と妖精という種族にある“対立”が描かれる。シャオヘイが初めに心を許した妖精の青年フーシーは、人間から妖精の世界を取り戻すために、ある計画を立てており、シャオヘイおよびムゲンとは別の道を歩むことになる。
この対立構造も、映画では定番といえるもの。自然に属する者と人間と戦いの物語である「平成狸合戦ぽんぽこ」や「もののけ姫」、人間とドラゴンの共生の道を模索していた「ヒックとドラゴン」、特殊能力を持つチームの苦悩を描いた「X-MEN」、あるいは街と森それぞれで暮らしている少女たちの友情を描いた「ウルフウォーカー」(現在ミニシアターで上映中)も思い出す方もいるだろう。
異なる者たちの対立と分断、そして共生や平和への道を目指すというのは、現実の世界にも存在する普遍的なテーマだ。それを説教くさくすることなく、ド迫力のスーパーハイスピードバトルアクションと、楽しくてクスクスと笑えるロードームービーの中に溶け込ませていることも、本作の美点だ。
4:子どもが“考える”物語
前述した対立構造に加えて重要なのは、主人公のシャオヘイが6歳の子どもであるということだ。彼は初めは大人の事情に介入せずに、子どもらしい無邪気さと素直さで行動している。難しい言葉を使うこともほとんどなく、不満があればムッとして、うれしい時には笑顔になり、時にはおいしいご飯を食べて目を輝かせる。特に子どもは、彼に同調して物語を楽しめるだろう。
ところが、終盤に入り悪役的な立ち位置の者たちと対峙する展開がある。その中でシャオヘイは、その相手が本当に悪なのか? と自問する。そこでムゲンは結論を押し付けることなく、答えをシャオヘイに委ねる。
そう、本作は「6歳の子どもが考える物語」なのだ。実際には、複雑な大人の世界には、子どもはなかなか介入しにくいかもしれない。そうであったとしても、「何が正しくて」「どの道を選んでいくのか」と考えることはできるし、それは子どもにとって大きな成長につながるのではないだろうか。
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