先日、ホームに到着した電車のドア窓に「巨大なQRコード」が貼られているのを見かけました。スマートフォンで撮ってもうまく読み取れません。広告? いたずら? これは一体何でしょう……?
実はこのQRコード、怪しい広告などではありません。ホームドア制御のための、とても大切なQRコードなのです。
車両の窓に貼られているQRコードは、新型QRコードの「tQR」というもの。2019年10月に都営浅草線を皮切りに導入され、「アレは何だ?」「思わず読み取りたくなる」などとネットでもじわじわ話題に上がってきています。
この窓に貼られたQRコードには、列車のドア数や編成車両数などの情報が格納されています。ホームの上部に設置したカメラでこのQRコードを読み取り、列車のドアの動きにあわせて、ホームドアが開閉する仕組みです。
併せて、1編成あたりの車両数や1両あたりのドア数に応じて、手動でホームドアを操作する必要がなくなります。車掌はドアの開閉操作を行うだけで済むようになります。あ、念のため。一般的に使われるQRコードとは規格が異なるので、スマホなどでは読み取れません。
鉄道事業者がホームドアを導入するとなると、ホーム上の工事だけでなく、列車とホームドアの開閉を連動させるための車両の大規模改修(改造)なども必要で費用がかかります。相互直通運転を行う路線では、直通先の鉄道会社にも車両を改修してもらう課題などもあります。一口に安全のためにホームドア導入を──といってもいくつか壁があります。設置までに時間がかかるのはこのためで、事業者も苦労しています。
そこで開発されたのが今回のtQRを活用したシステムです。カメラを設置して、QRコードを貼るだけで、車両の大規模な改修を行うことなくホームドアの制御システムを導入できるようにします。デンソーウェーブと東京都交通局が共同開発し、2019年10月に運用が始まりました。
tQRは、雨粒や光の反射など、周囲の環境のばらつきによる読み取りづらさにも対処できるよう、全体の50%まで欠けたり汚れたりしても読み取れるように改良されています(通常のQRコードは30%)。また、複数カ所のドアに貼りつけられているため、万が一剥がれてしまったり、ニセのQRコードを貼り付けられたりしてしまっても、信頼性を確保できるようにしています。
2020年現在、この仕組みは都営浅草線や京急電鉄、神戸市営地下鉄西神・山手線に導入。またJR東海も2020年11月28日から東海道本線の金山駅(愛知県)で実証実験を開始するなど、国内での活用例が増えてきています。
この先、ホームドア制御の課題を解消するこの仕組みで、ホームドア設置率がグッと進むかもしれませんね。
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