【ライター望月の駅弁膝栗毛】(初出:2020年11月20日)
紀伊勝浦から白浜方面へ1駅、湯川駅周辺には、湯川温泉の小さな温泉街があります。
温泉街の周りに広がるのは、風光明媚な「ゆかし潟」。
このゆかし潟と海がつながる辺りに架かる鉄橋を、2両編成の短い紀勢本線の普通列車がのんびりと渡って行きます。
この顔つきの車両を見て、懐かしさを憶えるのは、40歳代以上の世代でしょうか。
紀勢本線(紀伊田辺〜新宮間)で普通列車として活躍している105系電車の一部には、かつて、首都圏の常磐線各駅停車〜営団地下鉄千代田線で走っていた車両がいます。
4つの両開きドア、丸い形のベンチレーターが、国鉄の通勤電車らしいつくりですよね。
先頭車両に設けられた貫通扉は、地下鉄対策が施されていた証。
登場した昭和40年代半ば以来、すっかり50年戦士と言ってもいい車両です。
さて、同じく昭和の半ばから、紀伊勝浦駅の駅弁を手掛けているのが、駅前商店街で食事処を営む「川柳(せんりゅう)」です。
川柳は昭和34(1959)年に勝浦に出店、その2年後から駅弁を手掛けているとのこと。
かつては改札外の1階、いまの売店がある場所でうどん店も手掛けていたと言います。
そんな紀伊勝浦の歴史を見守ってきた駅弁の1つが、「紀の国弁当」(750円)です。
【おしながき】
- さんま寿司
- めはり寿司
- ガリ
「紀の国弁当」は、熊野名物のさんま寿司とめはりずしを一緒に味わえる素朴な駅弁。
めはりずしとは、高菜の葉でごはんを包み込んだ大きなおにぎりで、口を大きく開けて食べるときに目を見張ることからその名がついたと云われます。
「川柳」では、駅弁として販売するめはりずしについては、安全性から酢飯にしているそう。
その意味では、「駅弁ならではの」めはりずしをいただくことができるわけですね。
105系電車は、ブラックフェイスをまとった“パンダ顔”の3ドアの車両も活躍しています。
国鉄時代に造られた105系電車はこの形が基本でしたが、経営が苦しかった国鉄末期には、通勤電車の改造によって生まれた4ドアの車両が編入されました。
すでに和歌山・奈良エリアの普通列車には、新型車両が投入され始めています。
子供のころに聴いた国鉄の音を道連れに、紀勢本線を旅してみてはいかがでしょうか。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/
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