【ライター望月の駅弁膝栗毛】(初出:2020年11月23日)
京都・新大阪〜白浜・新宮間を結ぶ特急「くろしお」。
国鉄時代、天王寺〜名古屋間の気動車特急として誕生、昭和53(1978)年の紀勢本線・和歌山〜新宮間の電化に伴い、新宮までの電車特急となりました。
長年、振子式の381系電車が活躍してきましたが、平成27(2015)年からは、北陸特急「しらさぎ」からコンバートされた289系電車がラインアップに加わりました。
特急「くろしお」が走る紀勢本線の魅力は、何と言っても車窓いっぱいに広がる海。
静かな和歌浦、紀伊水道、そして雄大な太平洋と、さまざまな表情の海が見られます。
新宮発着の特急「くろしお」は、本州最南端・潮岬の玄関口、串本にも停車。
串本付近の車窓からは、国の名勝・天然記念物にも指定されている大小40あまりの岩の柱がそそり立つ絶景、「橋杭岩(はしぐいいわ)」も望むことができます。
そんな紀勢本線の海を存分に眺めるなら、「Go To トラベルキャンペーン」の活用が吉。
JR西日本の各エリアでは、Go To トラベルの地域共通クーポン(紙クーポン)利用者限定の「自由周遊きっぷ」を販売しています。(*)
和歌山エリアは、紀勢本線・和歌山市〜新宮間などが2日間乗り放題で2000円。
別途、特急券などを購入すれば、特急列車の利用も可能です。
お得なきっぷを利用できたら、そのぶん、美味しいご飯を奮発したいもの。
紀勢本線・白浜駅の駅弁として知られるのが、「紀州てまり弁当」(930円)です。
「紀州てまり」は、その昔、紀州藩の殿中で女官たちが姫君のためにつくり始めたのが起こりとされ、いまも時代に合わせてアレンジされながら、つくり続けられていると言います。
童謡「まりと殿様」で唄われていることでも知られ、駅弁の箱にも歌詞が載っています。
この「紀州てまり弁当」、白浜では歴史ある駅弁の1つ。
かつては、白浜駅弁の「あしべ」が製造していましたが、平成20(2008)年ごろに撤退。
現在は、田辺市の「味三昧田辺本店」が駅弁を受け継いでいます。
味三昧田辺本店によると、白浜から駅弁撤退の報を聞き、看板駅弁だった「紀州てまり弁当」の継承を申し入れて、快く受け入れてもらったのだそうです。
【おしながき】
- だしご飯 人参 グリーンピース
- 鶏肉の照り焼き
- なんば焼き
- ごぼう巻き
- 焼き穴子
- 椎茸煮
- たけのこ煮
- ガリ
- チェリー
中味とパッケージの色は若干アレンジされましたが、昔からのデザイン、貯金箱となるてまり形の容器はそのままに、白浜駅のおみやげ街道で販売されている「紀州てまり弁当」。
ふたを開けると、特製だしで炊いたというご飯の上に、田辺の名産・かまぼこやごぼう巻、焼き穴子、鶏照焼、たけのこ煮といった、バラエティ豊かなおかずが載っています。
「まりと殿様」の鼻歌まじりでいただけば、気分よく食べ進めることができそうですね。
入り組んだ紀伊半島の海岸伝いにカーブが続く紀勢本線。
特急「くろしお」は6両編成が基本で、新大阪〜白浜間は概ね毎時1本、白浜〜新宮間は2〜3時間に1本の運行となります。
最新の感染症の流行状況に注意を払いながら、万全の対策を施した上で人と群れずに、お得なキャンペーンを上手に活かした旅を楽しみたいものです。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/
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