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「庵野秀明らしさ」とは何か? 「シン・エヴァ」「シン・ウルトラマン」を控え振り返る「シン・ゴジラ」(2/3 ページ)

「シン・ゴジラ」は、「好き」の全てが注ぎ込まれたベストセレクション。

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 そして最も重要なのは、それらの手法を取り入れるだけにとどまらず、これまでの庵野作品からのセルフオマージュを多用したこと。つまり「エヴァっぽい」と言われることに対し非常に自覚的であるという、決意の表れだ。

 作戦シーンにて繰り返し流される、「EM20」シリーズをはじめとした鷺巣詩郎氏が手掛ける楽曲。「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」第六の使徒との戦いを思わせるゴジラのビーム攻撃、およびその後のヤシオリ作戦概要。オレンジ色のデジタル数字。

巨災対の設置シーンを皮切りに、作戦準備シーンで「EM20」が繰り返し印象的に流れる(画像は「シン・ゴジラ」より)

CGメイキング映像でも「EM20」が使用されている。

 庵野はこれまで、「アニメを作るとアニメではできないことがしたくなる」と述べ、実写作品「ラブ&ポップ」「式日」「キューティーハニー」でも突飛な演出手法を取ってきたものの、それらは必ずしも「エヴァ」らしくはなかった。

 例外として挙げられるのは、1998年に庵野が監督した「彼氏彼女の事情」である。こちらでは「エヴァ」のシーン・演出をほうふつとさせるシーンが多くあるものの、その大半は少女漫画世界とのギャップを笑いに変えるコメディー・パロディー性を推したものだ。だが「シン・ゴジラ」では、エヴァがもとより特撮映画に大いに影響を受けている、ということを差し置いても、誰がどう見ても大真面目にカッコよく、エヴァっぽい。

「彼氏彼女の事情」でも「エヴァっぽい」演出が見られたが、基本的には、あくまでコミカルなエッセンスとして用いられていた(画像は「彼氏彼女の事情」第1話より)

 以前の記事でも触れたように、テレビ版の「エヴァンゲリオン」は“自分たちの表現はコピーに過ぎないのではないか、そしてその考えもコピーに過ぎないのではないか”という点に、自覚的な作品であった。エヴァンゲリオンという機体がアダムやリリスという始祖のコピー体であり、「コピー」「オリジナル」「その魂」との単語が頻出するのもその表れだ。

「僕らは結局コラージュしかできないと思うんですよ。それは仕方がない。オリジナルが存在するとしたら、僕の人生しかない。僕の人生は僕しか持っていない」/『スキゾ・エヴァンゲリオン』(太田出版/1997年)より

 そして庵野は、今作においてもオマージュを大いに盛り込む。1954年版「ゴジラ」の山蔭からゴジラがはじめて顔を出すカット、1984年版「ゴジラ」での漂流船から始まる「マキ・ゴロウ」の物語、そして核攻撃の決定に関する言及。「帰ってきたウルトラマン」5話・6話における民間人を見つけての発砲停止、広島・長崎写真の挿入……。

 それは先駆者に対する最大のリスペクトであり表層的にはコピーでもあるが、同時に、その手法が「好きだ」「いい画である」と感じる制作者の心だけは、誰が何を言おうと唯一無二のオリジナルだ。

 そういう意味で本作は、庵野秀明のつくりあげた大傑作であり、彼の「好き」全てが注ぎ込まれたベストセレクションである。本作の制作を経た庵野が、「シン・エヴァンゲリオン」で何を見せてくれるのか。楽しみで仕方がない。

2018年3月に「日比谷ゴジラスクエア」に設置されたゴジラ像

 先日、緊急事態宣言の発令を受けて「シン・エヴァンゲリオン劇場版」の公開再延期が発表された。これまで公開を待ち望んでいた側としては悔しい気持ちもあるが、胸を張って「映画館に行ってほしい」と言える状況でない今、最適な判断だろう。

 また初夏の公開を控える「シン・ウルトラマン」の特報が、1月29日に到着。監督は樋口真嗣、庵野のクレジットは現時点で企画・脚本にとどまるものの、画作りの随所から「シン・ゴジラ」のテイストを感じさせる。また、カラーからは「庵野は『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の完成後、樋口組に本格的に合流する予定」であるとも告知されている。

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 「:Q」の公開から、既に8年待った。残すところは公開まで、自身の安全に気を配ることだ。

 現実の政府は、虚構のようには動いてくれない。

将来の終わり

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