まるで初代プレステみたいな“ローポリゴン” VTuber「蟹」が作る映像作品「空想料理店」が90年代レトロゲー好きの心をくすぐる:教えて!先輩VTuber(2/3 ページ)
古くて新しい。
“新しい技術”と“昔の技術”を融合した映像作り
―― 映像を作るにあたっては、どういった作業工程を踏んでいるのでしょうか。
蟹 まずBlenderで映像を作ってから、Adobeの「After Effects」や「Premiere Pro」で編集して一つの動画作品を作り、それをビデオデッキに入れたVHSテープに一度録画したものをキャプチャーしています。
―― VHSに録画することでレトロな雰囲気を演出するという、あえての汚し感というのは、蟹さんの中ではとても大事にされていることだと感じます。以前、「FINAL FANTASY VIII」のリマスター版が出たときには「もったいない」とツイートしていましたね。
蟹 そうですね(笑)。僕の場合はやっぱり懐かしい感じを出したいというのが一番にあるので、リマスター版になって画面がすごくきれいになっちゃうと、あのときやっていたFF8では絶対にないよなーと思ってしまって。自分の作品でも、まず自分が見て懐かしい気分になれなかったらあまり作っている意味がないなと思いますね。
―― ローポリ系のゲームだとどういうゲームが好きですか?
蟹 いろいろあるんですけど、「デュープリズム」っていう3Dアクションアドベンチャーゲームが好きです。ローポリゴンのできで言えば「FF9」。いつかああいう雰囲気を出したいって思うんですけど、なかなか技術的に今でも追い付けないっていう感じがすごく歯痒かったりします。
―― 技術が発展してきたからこそ、オーパーツみたいになってしまったものってありますよね。蟹さんは、過去と現在の技術をうまくミックスさせている方だなと思っています。
蟹 CGの場合、新しいことってものすごく難しかったりするんです。すると、作っていても乗り越えられない壁というのが出てくる。僕はそういうのに向いていないと思っていて、だったら自分が好きな古いものや懐かしいものを掘り下げていこうと。そうすれば、自分でも何か面白いものが作れるんじゃないかと思って制作を続けていますね。
―― 現在は映像制作も請け負っているということで、にじさんじの緑仙さんのオリジナル曲「夜明けまで」ではMVを担当されていましたね。
蟹 シンデレラストーリーっていうわけじゃないですけど、僕の作った作品をたまたま緑仙さんが見て気に入ってくださって、近いうちに新曲を出すのでその雰囲気に合っているんじゃないかということで声を掛けていただきました。MVを作るのは初めてだったので悩んで悩んで絵コンテを出させていただいたら、「これで大丈夫です」ってGOサインをもらえて。VTuberの中ではトップクラスのにじさんじっていうグループに関わらせてもらえたので、「本当にすげえな俺」って思いましたね。
活動3周年を迎えて見えたもの
―― 活動3周年を迎えられた蟹さんですが、この3年という期間は特に個人勢にとってはとても長いものだったと思います。振り返ってみていかがでしょうか。
蟹 空想料理店を開かなかったらめっちゃキツかったと思います。空想料理店というシリーズができて落ち着いたことで今はそれに向かって尽力できるんですけど、模索が続いていたら大変だっただろうなと。今は楽しくやらせていただいています。
―― 正直な話、VTuberをやめようと思ったことはありますか?
蟹 やめようとは思わなかったですね。多分今でも模索していたらそろそろやらなくてもいいかなって思っていたかもしれないですけど、模索しているときも応援してくれる人はいて、そういう人たちに「どうにか恩返しがしたい」「推していて良かったと思ってほしい」と思って頑張っていたので。やめようと思ったことはこの3年間ではないですね。
―― 逆に、やっていて良かったことはありますか?
蟹 自分の場合は、お金をいただいてMVを作ったりしているので、お金が発生するような映像作りの技術やセンスが磨けたことは本当に良かったと思っています。それと、配信をしてファンとやりとりすることで日常のストレスから解放されるので、そういった面でもVTuberをやっていて良かったなと思います。
―― 最後に、今後の展望について聞かせてください。
蟹 ゲームを作ったり、曲を作ったり、いろいろやりたいことはあるんですけど、やっぱり料理動画の練度を高めて、見て良かったなと思えるものをバスバスつくっていきたいですね。
蟹さんの情報
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