「カーナビの言う通り走っていたら事故を起こしかけ、なんとか回避すると悔しがる謎の声が聞こえた」「目的地とは異なる場所に連れて行かれた」――そうした“カーナビにまつわる怪談”は複数存在しています。
今回ご紹介する作品もまた、カーナビが引き起こす怪談ではあるのですが……なんとも切ない短編漫画となっています。
人気のない森の中を、車でひとり進む男性。どうやらカーナビに異常が発生したらしく、どこへ行こうとしても“ある進路”しか示さなくなり、目的地へたどり着けずにいるようです。
「どうやったって家へ帰ろうとするじゃねーか このカーナビ!!」。車を停めた男性は、自分しかいない車内で涙ながらに呟きます。「どうしても行かせないのか……お前のもとには行かせてくれないのか……」と。実はこの男性、大切な女性に先立たれ絶望し、後を追って死ぬため「自殺の名所」へ向かおうとしていたのです。
女性は助手席に「座って」いました。彼女はカーナビの指示音声を出します。彼女の望まぬ後追い自殺をさせないため、男性を無事に家へ帰すため。早く家へ帰ろう、あなたには生きていて欲しい……先立った女性の思いが、読み手にも伝わってきます。最後の後ろ姿から表情こそ伺えませんが、きっと男性は前向きに、女性が望んだように「生き続けて」いるはずです。
こちらの漫画の作者は、漫画家の江戸川治(@edoosam)さん。web漫画サイト「くらげバンチ」にて、“生き返り”にまつわるヒューマンドラマ作品『インスタントライフ』が連載中です。また、同作品の単行本第1巻が2021年4月9日に発売されました。
記事:たけしな竜美(@t23_tksn)
作品提供:江戸川治(@edoosam)さん
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.