中学3年生の理科の教科書で初登場する“遺伝”の仕組み。その用語のひとつである「優性・劣性」が2021年度より「顕性・潜性」に一律で変更されたと述べるツイートが注目を集めています。ねとらぼでは文部科学省に背景を聞きました。
「メンデルの遺伝の法則」に登場する用語「優性」と「劣性」。両親から対立する遺伝子を受け継いだ子に必ず片方の形質のみが現れるルールを「優性の法則」として記憶している大人は多いでしょう。
「優性・劣性」は遺伝子の特徴の現れやすさを示す用語にすぎません。しかし、漢字の持つイメージが「優性の形質の方が劣性の形質よりも“優れている”」という誤解や偏見を生みかねないとして、近年は遺伝学会・生物学会を中心に「顕性・潜性」を使う動きが推し進められてきました。
教科書改訂の背景にあるのは、2019年に基礎生物学委員会・総合生物学委員会が合同で発表した「高等学校の生物教育における重要用語の選定について」。その中で「優性・劣性」は改訂重要語にリストアップされており、それに倣って民間の教科書出版社が自発的に内容を改訂してきました。こちらは高校生物についての言及ですが、中学校の学習指導要領が刷新された2021年度のタイミングで中学理科の教科書も一斉に追従した形です。
文部科学省によれば、2021年度に全ての教科書で「顕性・潜性」の用語が使われるようになったことは事実。用語が初登場する中学3年生の教科書に加え、すでに高校の教科書も全て「顕性・潜性」に対応しています。ただし「優性・劣性」が教科書から完全に消えたわけではなく、「顕性(優性)」と括弧で補足したり、小さく注釈を加えたりと、その表記には各社で幅があるとのこと。よって現在のところ「優性・劣性」でも誤りというわけではありません。
発表当時は用語の妥当性をめぐって賛否両論を巻き起こした「顕性・潜性」ですが、いざ教科書が書き換わると確かにしっくりくる表現です。これからの世代との齟齬を避けるために「優性・劣性」で学んだ世代は認識をアップデートする必要があるでしょう。
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