DVD化もされていない、謎のバイヤーによって謎に買い取られた、謎の団体が作った謎の映画。もうこの企画も5回目なので、ふさわしい前振りなどありません。Amazonにはマジで詳細不明の謎の映画が山ほどあるから、実際に鑑賞して掘り出し物を見つけよう! という内容です。
アマプラの謎映画はしばらくするとU-NEXTに流れることがあり、最近はそれが顕著になってきているようです。うーん。この謎映画の配給と、映像配信のサブスク各社の横のつながりには単純に興味があるのでいつか取材してみたい。と、前置きはここまでにして、鑑賞していきましょう。
「デス・デイ」
日本でもSNSなんかで大変な話題になったループ系コメディホラー「ハッピー・デス・デイ」に便乗する気マンマンの作品。内容もそれに準ずるように、性格の悪い美女が目覚めるたび何度も殺されるといったお話です。「ハッピー・デス・デイ」の米国公開が2017年10月、そしてこちらの公開は2018年1月。前者のヒットを受けてから3カ月間で企画・制作・公開したと聞いても驚かないお粗末な内容でしたわ。
あらすじ
父親の葬儀にかけつけたアマンダ。常に妹と比べられては冷遇され、ついには勘当を言い渡してきた父親へ憎しみを抱いていた彼女は、早々に葬儀を後にし、父親の金庫を無断で開ける。かつて冒険家だった父親が砂漠から持ち帰った財宝を手にしてから、何やらおかしなことが起き始め……。
要は死んでも死んでもよみがえって同じ時間を繰り返す典型的なタイムループホラー。隠す気がないくらい「ハッピー・デス・デイ」なのですが、そこからコメディ性とポップ性が排除されてるもんだから、そもそも「ハッピー・デス・デイ」があまり気に入らなかった自分としてはとにかくつまらないお話。
褒めポイントとしては、映像がキレイな点。それは撮影技術の発達がすごいのであってこの映画の手柄ではないのですが、まあ鑑賞していて違和感を抱くことはありません。ついでに役者陣の顔つきが映画的で良かったです。この規模のC級映画には、「その辺から適当に連れてきただろ」というほど素人くささの抜けない役者がいるもんですが、少なくとも本作はまともな役者を使っている(と思う)ので、役者の演技の面で緊張感が削がれることがありませんでした。マイナスがゼロになっただけですが……。
悪い点を挙げるとキリが無いのですが、何よりワンカットが長い! 自主映画や低予算映画はどうしてもワンカットが長くなってしまいがちですが、本作は前述したように映像に多少の美意識が感じられるので、あえて長回しに挑戦している節も感じられるんですよね。こんな節操のない脚本で凝った演出されてもどんな顔してればいいんだよ。
肝心のグロ描写もまったく大したことなし。まあ総括すると見る価値のない映画でした。サムネイルに「26ガロンの血糊を使った」と書かれていたので26ガロンがどれくらいなのか調べてみたら、98リットルでした。絶対そんな使ってなかったわ。なんでそんなウソつくんだよ。
「恐怖の廊下」
スウェーデン製の低予算スリラーです。俳優陣も当然なじみのない顔ぶれかと思いきや、その中に北欧からハリウッドに進出した名悪役ピーター・ストーメアの顔が。彼の顔を見るだけで何だかいいモン見た気になるんだからやっぱりスターはすごいですね。
あらすじ
勉強に精を出す真面目な医大生のフランク。繊細で、人とのコミュニケーションが苦手な彼は、自宅であるアパートにこもり切りで勉強を続けていた。そんなある日、真上に住む女性とひょんなことから接点を持つことに。騒音のひどい彼女の真下の部屋で、徐々にストレスに蝕まれていくフランクだったが……。
これ面白かったです。よくある“隣人モノ”サスペンスかと思いきや、彼女の背中にはアザが……聞こえていた騒音は家庭内暴力によるものでは……? というテーマに発展していきます。明らかな低予算ではあるものの、ところどころに北欧サスペンスらしい興味深い画が続出して飽きない。そもそも本編70分程度と短いんで、あらすじに興味があればとりあえず観ちゃっても損はしないと思います。
とはいえ正直脚本はどうにも垢抜けないというか、優れた北欧ミステリーってリアリズムを徹底しつつ噴出するダークな描写がウリだと思うんですが、そこまでには至っていないかなあ。その垢抜けなさの筆頭が警察の描写。警察が有能だったら映画にならないとはいえ、いくら何でもここまでカスな警察がいるものかね。今まで見てきた映画の中で一番警察が無能かもしれません。
警察が役に立たなすぎて、後半はその役立たずさを起点にサスペンスが展開されてしまう始末。体制側にイライラしたいという奇特な人が万が一いらっしゃればうってつけの映画だと思います。
「ブラック・スマイル」
カナダ製のサイコスリラーです。オープニングクレジットの感じや映像の質感を見た感じいかにもTVムービー(劇場ではなくテレビ放送用に作られる映画)なんですが、果たして……。
あらすじ
夫を亡くし、育ち盛りの男の子2人を世話するシングルマザーのカレンは、多忙を極める毎日からベビーシッターを雇うことに。応募者の1人であったアレックスの優しさに触れ、彼を雇うことに決めるが、彼には“家族”への異常な執着心があり……。
案の定TVムービーでした。とにかく脚本をなぞるだけの最低限の演出に終始したソツのない出来で、まあ面白いと言えば面白いものの……といった印象。日本で言う火曜サスペンス劇場的なノリなので、家事や作業をしながら見るのにちょうどいい映画ですね。途中から見始めても何となく話がわかるように作られています。
そんな前提もあって、サイコスリラーとしてまあぬるい。エログロはおろか暴力描写さえほとんど無し。お話は一本道で意外性なんか皆無。分かりやすい伏線が分かりやすく回収され、うまいことハッピーエンドへと物語が運ばれていく様子はなつかしささえ覚えてしまいましたよ。
あまりに作劇がインスタントすぎて「ああ、いま時間を潰しているなあ」という気持ちになることができます。カップヌードルみたいな映画です。果てしないサブスクの波からわざわざこれを選ぶのは、時間の無駄としか言いようのない選択かもしれません。
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