ねとらぼ読者に「運動/スポーツでアカンことになったお話」を伺う読者募集企画。今回は「趣味のカヤック、カヌーで“命の危険を感じたときの体験談”」を伺いました。
連載:運動/スポーツでアカンことになった話、教えてください
「体を動かすのは健康に良い」と言われていますが、運動やスポーツには危険がつきもの。「どんな危険があるのか」「注意すべきポイントは何か」に気付くために、いろいろな人の話を聞いてみよう、という企画です。
川のカヌーツアー:石敷きの河川敷にテント
若いころ趣味にしていたカヤック、カヌーで、2回ほど命の危険を感じたことがあります。
1つは、1泊行程で行われた那珂川(茨城県)のカヌーツアーに参加したときのこと。通常水位から1メートル程度高い石敷きの河川敷にテントを張っていたのですが、主催者が上流(栃木県)での降水に気付かず、河川増水の避難呼びかけが遅れ、危うく大惨事になりかけました。
―― 「上流での降水に気付かない」というのはよくあることなのでしょうか?
大河川は時間差で増水しますし、夜間などでは雨雲も見えませんからありえることです。
私を含めた経験者が雨の降り方やラジオのニュースから上流で豪雨が降ったらしいことを知り、川の様子をたびたび見にいって増水に気付きました。テントにいる人たちを起こしてまわりましたが、熟睡していた方も多く、放置していたら危なかったと思います。
ただ、装備や車の何台かは水没しました。河川敷は水を含むと石敷きでもタイヤがとられるので四輪駆動車でも脱出できなくなることがあるほか、水没すると電装系にダメージがあってシートなども泥臭くなるので廃車になるケースが多いんですね。
行事として行われた大人数でのイベントだったことなどから、設営場所が主催者任せになっていたこともトラブルの一因だと思います。本来であれば「河川敷の草が生えていないところは、テントを張るな(増水したとき危険だから)」というのが鉄則です。
その後、宿泊イベントではキャンプ場を利用するなど、より安全に配慮して運営されているようです。
現在は雨雲レーダーや河川の水位観測データがインターネットで見られるので、より危険に気付きやすくなっていますが、昨今のキャンプブームで場外キャンプがまた増加しているのが心配なところです。
海のカヤックツアー:艇上での脱臼
もう1つ、命の危険を感じたのは、沿岸でのシーカヤックツアーで肩を脱臼したとき。陸から100メートルほど離れた地点でカヤックが横波を受けて転覆しました。
波を受けたり、それによって転覆したりすること自体は珍しくなく、カヤックやカヌーに乗る人は対応方法を練習していることが多いものです。私はこのとき「ハイブレイス」と呼ばれるパドルを立てて艇のバランスを取るテクニックを使ったのですが、波が高くて肘を上げすぎてしまい、肩関節を脱臼。バランスが保てず、転覆しました。
現在教えられているブレイスのテクニックなどは改善されているのですが、当時はこのようなリスクがあることがそこまで周知されていませんでした。
―― 脱臼した状態で、どうやって海岸まで戻ったのでしょうか?
艇を捨てても泳げる距離には限界があるので、同行者の付添のもと艇と一緒に岸まで波に乗って流されました。PFD(ライフジャケットと呼ばれるものに近い)を着用していたので溺れる心配はありませんでしたが、離岸流などにつかまると戻れなくなることもあり、もう少し沖に出ていたら危なかったかもしれません。
また、このときは秋口で水温が高かったのも幸いでした。冬〜春先は水温が低下し、短時間でも体温低下の可能性がありますから。
最近またアウトドアが流行していますが、「流行すると安全がおろそかになる」のはよくある話だと思います。現在はシットオンタイプのカヤックを使うカヤックフィッシングが流行していますが、転覆して脱出したカヤックにもう一度乗り込む「再乗艇」のスキルがなかったり、胴長(※)を着用していたりする人を時折見掛けます。そうした方も、安全には気を付けていただきたいと思います。
※胴長:「胴付長靴」「ウェーダー」とも呼ばれる、釣りなどに用いられる衣服。長靴とつなぎが一体化したつくりで体がぬれにくいようになっているのだが、中に水が入ってしまうと身動きが取りにくくなり危険といわれる。また投稿者によると、反対に水が侵入しない場合でも「落水時に足の部分に空気がたまって浮いてしまい、上半身が水につかるので非常に危険」とのこと。
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