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ランチ代1500円を補助して「オンライン勉強会」を毎日開催 株式会社ゆめみがコロナ禍でも「日本一勉強会の多い企業」を目指す理由ゆめみと「最先端のリモートワーク」

リモートワーク環境での「コミュニケーション問題」を解決する奇策がありました。

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 リモートワークが導入されて1年以上という会社も増えた昨今、まだまだ多くの課題はありますが実はその中でも最も難しいのが「コミュニケーション」だと感じている人は多いのではないでしょうか。

 何気ない雑談でリフレッシュする機会がなくなった、ちょっとした質問を投げかけづらい、新入社員の顔や名前がよくわからない……などなど。Web会議など新しいツールの使い方には慣れても、直接会う機会が減ったという働き方の変化にまだ慣れないという声はよく聞きます。

ゆめみ ゆめみ

 斬新な働き方革命を進める株式会社ゆめみの「最先端のリモートワーク」を追う連載第3回では、オンライン上での新たなコミュニケーションの方法に迫ります。雑談の機会を気軽なオンライン勉強会で補う「雑壇」という考え方や、Slackのチャット上から顔色や声色ならぬ「文字色」を読み取るテクニックなど、従来とは一味違う発想が次々と飛び出しました。

ゆめみ ゆめみ代表取締役・片岡俊行さん

 これまで密室にこもって狂気のリモートワーク人体実験を続けてきた代表・片岡俊行さんの「生きる目的は懇親会」発言など意外すぎる(?)一面も垣間見えた今回。オンライン時代の人と人の接し方について一歩先行く考え方がわかる、現代人必読の回となりました。

「生きる目的は懇親会」から「日本一勉強会を開催する会社」へ

―― ゆめみがリモートワークでかなり先進的なことをやってるのはわかりましたが、「ずっとオンラインだと雑談ができない」といった悩みをよく聞きます。密室で1年間人と会わなくても平気な片岡さんにはわからないかもしれませんが……。

片岡さん:よくわかります。懇親会ができないとかですよね。

―― そうです。片岡さん、そういうのどうでもよさそうですよね。「仕事に関係ないじゃん」みたいな。

片岡さん:いやいや! ゆめみはもともと懇親会重視の食事会を会社で月に1回は開いてたんですよ。僕は会社に入ることはみんなと楽しく過ごすことが目的だと思っていて、究極生きる目的は懇親会なんです。

―― そんな人だったんですか!? ここまでの話だと仕事サイボーグみたいな感じだったのに。

片岡さん:僕は人生の最後、「あの頃ゆめみのみんなとバカ騒ぎしたなあ」と思いながら死んでいきたい人間ですよ。そういう思い出を残すために仕事をしていると言っても過言じゃないです。

ゆめみ めちゃくちゃ楽しそうな片岡さん(※コロナ前)

―― なんでそんな人が1年間も精神と時の部屋で過ごせるんだ……?

片岡さん:今でもSlackでみんなの日常の報告を聞いたりするのは楽しいですけど、やっぱりそれだけだと寂しいですよね。緊急事態宣言が解除されたときにはマスク会食などもやってみましたが、人数も回数も制限されますしなかなか難しいなと感じました。

―― オンライン飲み会とかもやったんですか?

片岡さん:やりましたけど一時的なものですぐ下火になりましたね。他の会社さんでもそうじゃないですか?

―― まさにそうでした。最初は物珍しいからやってみるけどオンラインだと微妙に話しづらかったり終わるタイミングがわかんなかったりしてなんかやらなくなりますよね。

片岡さん:そうですよね。めっちゃわかります。

―― 今まで狂気的な話ばっかり聞いてたから急に普通の話ができて困惑してます。

片岡さん:僕をなんだと思ってるんですか(笑)。

―― 宇宙じ……いえ、なんでもないです。じゃあゆめみとしてもコミュニケーションに関する問題はまだ解決できてないんですか?

片岡さん:直接会うのは難しい時代なので「オンラインで日本一勉強会を開催する会社を目指す」、というのを目標にしました。懇親会が開けないので勉強会をきっかけに親睦を深めようと。

―― ああ、なんかそういう意識の高いやつですか……。

片岡さん:いや、そうじゃないんですよ。勉強会というと講師役がしっかり資料を用意してみんなは黙って聞いている、みたいなイメージになりがちですけど、逆に何の資料も準備もなくて参加できる形式にしたんです。

―― 何の準備もしないで何を勉強するんですか?

片岡さん:例えば、普段やっていることや業務で作った成果物を見せるだけ、という会です。「今こんな仕事しててここ工夫したんだよね」とか「最近こんなこと考えたんだよね」とかを話すだけでいいよと。雑談ならぬ“雑壇”と呼んでいるんですけど。

―― あ、そんな感じでいいんですか。

片岡さん:毎日お昼休憩の時間に開催するんです。みんなでご飯を食べながら気軽に仕事の進捗とかを話し合う。それで参加者に食事代として1500円まで補助を出す「ぱくぱくスタディ制度」という形式を導入しました。

―― また社員に金をばらまく施策が出た! つまり毎日お昼にみんなと雑談するだけでランチ代がタダになるんですか?

片岡さん:まあそういうことになります。毎日それに参加してUber Eats頼んで生活してる人とかいますね(笑)。

ゆめみ 「ぱくぱくスタディ制度」で勉強会が激増したゆめみ

―― 雑談するだけで月に3万くらい食事代くれるならみんなそうなりますよ! なんでそんなこと推奨するんですか?

片岡さん:これはあるコールセンターでの生産性の調査結果なんですけど、すごい生産性の高いチームがあったんですね。そのチームがやっていたことがお昼にみんなでランチをしていただけ、というのがあって。

―― そこもお昼に勉強会をしていたんですか?

片岡さん:いや、それが全然部署も違う人たちの集まりで仕事の話すらしていなかったんです。要するにお昼にただいろんな人が集まって雑談をしているだけなのに、会話によって脳が活性化して仕事の成果につながっていたということがわかったんですね。

―― え、じゃあ「昨日こんなテレビ見てさー」「ガハハ」みたいな会話をお昼にするだけで仕事の効率って上がるんですか?

片岡さん:その調査結果からするとそうなります(笑)。さすがに何のテーマもないとアレなので「勉強会」という形になっていますが、いろいろな人に話してほしいので内容のハードルは限りなく低くしている。それが“雑壇”のコンセプトですね。

―― 確かに「午前中こんな仕事してたんだけどここ悩んでるんだよね」くらいの話だったら毎日でもできますね。以前までならともかく、リモートワークでわざわざWeb会議つないで同僚とランチしたりしないからそういう話する機会もなくなりましたが。

片岡さん:そういうナレッジのシェアって業務効率に結構関わってくるんですよ。なので「勉強会」という形にして話し合うきっかけを用意したかったんです。この形式のもう一ついいところは、業務的に普段関りがない部署の人とも話すきっかけになるというところですね。

―― ああ、以前はたまに会社の懇親会とかで偶然隣になった他部署の人と「今そんな仕事してるんですか」みたいな話をすることもあったけど、この1年は全くその機会がないですね。

片岡さん:ゆめみが懇親会をたくさんやっていたのも、そういう偶発的な出会いだけは場所を用意しないと生まれないからなんです。ぱくぱくスタディ制度はその点でもかなり効果があっていろいろな人が参加してくれました。

―― リモートワーク環境になって自宅の電気代などに補助金を出す会社が増えてきてるって話は聞きましたけど、食事代出すってのはかなり奇策では……?

片岡さん:食事の時間ってそもそも休憩時間じゃないですか。一応勉強会という形にはなっていますし、「ナレッジのシェア」「仕事のパフォーマンス向上のための雑談」「懇親の機会」という3つのポジティブな効果を業務時間外に勝手にやってくれるわけですよ。これで1500円ってむしろ安いと思いませんか? 他社さんでもやったらいいのにな……。

―― そんな会社ゆめみくらいですよ!

Slack活用日本一のゆめみがコミュニケーションで「文字色」を読み取る方法

―― 雑談的なコミュニケーションは上手くいっているみたいですが、業務的なやりとりについてはどうですか? ゆめみでは主にSlackのチャットを使ったやりとりがメインなんですよね。

片岡さん:はい、実はゆめみはSlackの活用度(Maturity Scoreという指標)が日本一の会社なのですが、それでもリモートワークになってからやはりSlackの文字だけのコミュニケーションには限界があるなということは感じました。かなりいろいろな試みをしてきたんですが、苦労することは多かったですね。

ゆめみ Slack活用度でも日本一のゆめみ

―― よく聞く話です。日本一のゆめみでもそこはまだ課題だったんですね。

片岡さん:今まで会議室で話してたようなコミュニケーションって顔色や声色など実はさまざまな情報を複合してしゃべっていたんですよね。例えば会議である提案に対して「どうしようかな」って言ってる人がいたとして、明らかにやりたくなさそうだなとかって表情や言い方でなんとなくわかる。でもチャットで「検討します」って言ってるだけだとニュアンスは伝わらないんです。

―― すごいわかります。

片岡さん:そこで顔色や声色みたいに「文字色」を読み取る文化にできないか、ということに挑戦しました。

―― なんですかそれ。チャットでも現実の会議みたいに「あーそれもいいけど逆にちょっとアレな部分もなきにしもあらず的ですねー」とか曖昧な言い方をするんですか。

片岡さん:いえ、その逆でチャットのやりとりだとはっきり「それは違うと思う」「やりたくない」とはっきり意思を伝えないといけないよね、ということです。曖昧な言い方だと齟齬が生まれるから。

―― でもそれだと「否定された」とか「あの人はチャットだと冷たい」とかショック受ける人が出ませんか? まさにリモートワーク環境下でそういう問題も増えてきてるかと思いますが。

片岡さん:そうなんです。だから同時にゆめみでは「Slack上のやりとりの文脈を変えよう」ということを言い始めました。

―― 文脈を変えるというのは?

片岡さん:それまではゆめみでもSlackやメールで感情的な言葉を出すというのはご法度としていたんです。さっき言っていたように「文章だと冷たい」とかの誤解が生まれやすいので。微妙なニュアンスがある話や思ったことがあれば直接席まで行って話しましょう、というお作法にしていました。

―― そういう会社は多そうですよね。

片岡さん:ただリモートワーク主体だとそもそも社内にいないしいちいちWeb会議で通話するのも大変です。だから逆に言いづらいこともはっきり言っちゃう、という文化にするしかないわけですよ。そのためにいくつかの仕組みを作りました。

―― 具体的にどんなことをしたんですか?

片岡さん:まずSlack上に社員全員の個人チャンネルを作ったんです。そこでは基本的にその人の独り言だけが書き込まれていて、見たい人だけ見ればいいというようにしています。例えばそこで「さっきの会議のあの人の意見あまり納得はできなかったな」「あの言い方はちょっと傷ついたな」とかを書いてもいいという形にしました。

―― それだと揉め事が発生しまくりませんか? 「あいつ裏であんなこと言ってる」みたいになるというか、日本人ってそういうのめちゃくちゃ繊細ですし。

片岡さん:最初はかなりギスギスしましたね(笑)。

―― ダメじゃないですか!

片岡さん:なので受け手の意識を変える必要があったんです。「個人チャンネルでつぶやいていることはあくまで独り言」「相手のパーソナルスペースにわざわざ踏み込んでいって勝手にそれを見て気にしたり反論を書いたりする行為はマナーに反する」という考えに基づいて運用方法やガイドラインはかなり細かく設定しました。簡単に言うと「個人で何でも言えるスペースを作るけどそれを見たからと言ってとやかく言わない=(顔色や声色に近い)文字色を察する」という文脈に変えたんです。

―― そ、それでなんとかなるものなんですか?

片岡さん:時間はかなりかかりました。逆に「なんでも言っていいんだ!」って勘違いして暴言を吐く人が出ちゃったり。

―― ダメじゃないですか!

片岡さん:でもそこを乗り越えないとオンライン上でのコミュニケーションは進歩できないと思ったので粘り強く頑張りました。僕もいろいろ迷いましたね……愚痴と悪口の境界線はどこからなのかとか。

ゆめみ 「言いにくいことが言える環境」と「なんでも好き勝手に言える環境」は違うそうです

―― 言語学者みたいな悩みだ。

片岡さん:一つの定義として「その言葉を見ただけで生産性が下がる言葉はNG」というのを設定しました。例えば「誰々はクソだ!」みたいな暴言があるとします。これの「誰々」が社内の仲間以外の人物に向けた暴言だとしても、そして、暴言を吐いてしまう不条理な理由がたとえあったとしても、それを周りで聞いている人は不快な思いをするかもしれないし、実際にそうした暴言が周囲の生産性を下げるという調査結果もあったんです。なので、そういう言葉は使わないようにしましょうとルールを決める。

―― なるほど。

片岡さん:逆に特定の個人をディスる目的ではない愚痴、僕は「井戸端会議レベル」と考えていますがその程度のネガティブ発言であれば言い方に配慮することでセーフとしています。あとは自虐ネタとかもOKですね。そういうことを一つ一つ細かく定めていくうちに少しずつみんなが言葉遣いを意識するようになっていきました。

―― なんか回りくどいというか……いっそ「Slackで悪口書くのは全部禁止!」とかのほうがわかりやすくないですか?

片岡さん:一律で「ダメ」としてしまうと自由な言論の否定になってしまうし、窮屈で発言しにくい場所になってしまいますよね。それはみんなが積極的に発言して議論しあうゆめみの文化に反するのでしたくなかったんです。

発言のしやすい環境が生み出す「心理的安全性」

―― すごいですね……。もちろんコミュニケーションって大切な問題ですけど、どうしても業務的な話の二の次に回されがちというか、代表のレベルでそこまで言葉遣いに向き合ってる会社って珍しいのでは。

片岡さん:現代のTwitterなどでもそうですけど、自由な発言というのは失言や炎上につながりやすくもあるので難しいんです。一歩間違えると「あの人は口が悪い」とかすぐ社内でギスギスするきっかけになってしまう。そこでゆめみでは問題のある発言が出たときに必ずその発言をフォローする「弁護チーム」というのを用意しました。

―― どういうことですか。

片岡さん:例えばある議論の中で「非エンジニアは論理的じゃない」という発言をした人がいるとします。これってよくある主語が大きい否定語なんですけど。

―― 実際のSNSでも炎上しがちな主語デカ案件ですね。

片岡さん:何かを主張したいときに別の何かを否定する、ってやってしまいがちなんですよね。でもこのテクニックって論理的な綻びがあるんです。だって非エンジニアにも論理的な人って絶対いるじゃないですか。そうすると「非エンジニアは論理的か否か」っていう別の議論で炎上が始まるんです。

―― わかります。っていうかネットやってるとよくそういうの見ます。

片岡さん:でも最初の発言者が本来主張したかったのは「論理的であることは大切だ」ってことですよね。議論が違う方向に炎上したときは弁護チームが出て行って「本来の主題はそこじゃないですよ」とか「主語が大きい発言は誤解を生むので言い方をあらためたほうがいいですよ」とか指摘をするわけです。

―― その弁護チームってのは誰がやるんですか?

片岡さん:まあ主に僕なんですけど(笑)。

ゆめみ 片岡代表の仕事は多岐にわたる

―― 代表がやるのかよ! それ金八先生とかがやる仕事ですよ!

片岡さん:まあそうやって毎回問題が起こるたびにていねいに話をしていきました。そうすると本人も「ああ、自分が言いたかったことはそうじゃないな」と気付いてくれて、失敗を繰り返しながらみんなの発言が洗練されていったという経緯があります。

―― 今はSNSなどで個人のささいな発言も炎上する時代ですから、そうやって冷静に発言の問題点を指摘して考えさせてくれるのってすごくいいですね。一企業の代表がやる仕事かはわかりませんが……。

片岡さん:でもそういうことをしないとリモートワークメインの環境って発言がどんどん減っていってしまうと思うんですよね。

―― 実際会社のSlackに雑談チャンネルみたいなのがあってもほとんど機能してないみたいな話は聞いたことがあります。

片岡さん:ゆめみは多くの人が自由に発言できることが強みなのでその関係性が薄れてしまうのは避けたかったんです。まずは普通の雑談が気軽にできるようにする。次に楽しい話だけじゃなくちょっと突っ込んだネガティブな話もチャットで話せるようにする。最後にネガティブなこともなんでも好き放題言っていると問題になるから注意するべきことを直していこう、という順番で最適化していったという流れです。

―― 雑談レベルのコミュニケーションからそこまで設計している会社は珍しいでしょうね……。

片岡さん:Googleが採用している「心理的安全性」という考え方があります。これは「ミスをしてもチームメンバーから非難されない」という安心感があることで意見交換などが活発になり生産性が上がる、という考え方が一つの例です。わりとみんな「あの人あんなこともできないんだ」って思われるのが怖くて失敗を隠しがちなんですけど、ミスを素直に伝えられる場にすることでフォローも迅速にできるし積極的に挑戦もできるんですね。

―― なるほど。確かにそういう意識って雑談レベルからやっていかないと身につかないかもしれませんね。

片岡さん:リモートワークで働き方が変わってもそこで働くのは同じ人間ですから、新しい環境に合わせてみんなが気持ちよく働ける新しい方法を探していくのが一番大事なのかと思います。個人的には早くコロナが収束してまたみんなで懇親会ができるようになるのが一番うれしいんですが(笑)。

ゆめみと最先端のリモートワーク

 ということで全3回にわたってゆめみと「最先端のリモートワーク」についてお届けしてきました。代表自ら密室でストイックなリモートワーク生活(※自称「人体実験」)を行うところから始まり、生活習慣の細かい改善からオンライン上でのコミュニケーション論までいろいろとディープなお話が聞けたのではないでしょうか。

 社会情勢の影響もあり急速に進んだリモートワーク。それぞれの業種や職場環境などさまざまな要因もあり課題は多いですが、PCやネットなどのツールの進歩が生産性を向上させてきたのと同様に働き方改革の大きなチャンスであることも間違いないはず。リモートワーク先端企業のゆめみを参考にぜひみなさんのリモートワーク環境改善につなげてみてください。ねとらぼ的にはこの連載を社長などえらい人に読んでもらってアピールすることをオススメします!

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提供:株式会社ゆめみ
アイティメディア営業企画/制作:ねとらぼ編集部/掲載内容有効期限:2021年6月7日

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