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「飲食店でお酒が提供できない為、一升瓶のお酒が売れません!!」醸造会社が窮状訴え 農家にも影響する問題を詳しく聞いた(1/2 ページ)

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 「飲食店でお酒が提供できない為、一升瓶のお酒が売れません!!」――窮状を訴える醸造会社の投稿が、Twitterで注目を集めています。詳しい話を聞きました。

 話題となった投稿をツイートしたのは、秋田の酒「まんさくの花」で知られる日の丸醸造。飲食店で酒類提供ができないため一升瓶のお酒が売れないこと、商品のほとんどが家飲みサイズの瓶への詰め替えができないことなどを伝えています。また、お酒が売れないことにより、酒米の農家にも影響が及ぶという説明も。

 窮状を訴えるとともに一升瓶のセールを告知するツイートはRTやいいねを多く集めました。「購入で支援します」「注文しました」「拡散します」と応援が寄せられ、セールは注文殺到により一時注文を止める事態に(セールは6日で終了)。

 一升瓶が売れない問題について、日の丸醸造に詳しく聞きました。

 例年と比べて同社の売れ行きがどう変化したか聞いたところ、一升瓶のお酒の売り上げは2018年8月〜2019年7月を「100」とすると、2019年8月〜2020年7月は「87」、2020年8月〜2021年7月は「69」。2年前から3割減少となっています。

 お酒の出荷量は(同様に2018年8月〜2019年7月を100とすると)2019年8月〜2020年7月は「86」、2020年8月〜2021年7月は「82」。お酒の販売が減っている中で、一升瓶は特に減少しています。日の丸醸造では家庭需要の拡大にあわせて四合瓶を拡販して売上をしのいでいますが、飲食店への依存割合が高い酒販店をメインに取引している酒蔵では、売上がコロナ前の6割程度に落ち込んでいるところもあるだろうと同社は述べています。

 一升瓶が売れないことで、売り上げ以外にどんな影響が出るのでしょうか。日の丸醸造では、大量の一升瓶の在庫が冷蔵庫を圧迫し、物理的に減産を余儀なくされている状態。全国の酒蔵で同様の問題が発生しているといいます。「当社は今回お客さまに救っていただきましたが、業界全体で狂ったバランスは必ず将来に響きます」(日の丸醸造)

 影響が及ぶのは酒造だけにとどまりません。お酒は一時的に売れなくともしっかり冷蔵管理すれば付加価値をつけて後々売れますが、在庫過多で生産量を減らすと、酒米を作っている契約農家への発注も減ります。減反を余儀なくされ、離農する農家が出てくる可能性も。酒米は生産が難しく、簡単に始められるものではないため、一度現在の酒米農家が離農すると、需要が回復しても酒米の供給が追い付かなくなる恐れがあると同社は説明しています。

 日の丸醸造がセールを実施したのにはこうした事情がありました。同社では10月に酒造りを始めるため、在庫をさばく必要があったのです。なお同社のお酒は「一度火入れ(殺菌処理)原酒」がコンセプトのため、一升瓶のお酒を別の容器に詰め替えるために再度火入れを行うことはできないといいます。

 最後に、ツイートへの反響についてコメントをいただきました。「このたびは、たくさんのご支援や温かいお言葉を頂き、心から感謝申し上げます。10月から本格的な酒造りに入ります。今回頂いたご支援を肝に銘じて精進して参りますので、今後とも『まんさくの花』をよろしくお願い申し上げます」(日の丸醸造)

取材協力:日の丸醸造(mansakusake

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