感染症対策用のフェイスシールドが、精細なディスプレイを備えたスマートデバイス「フェイスモニタ」に進化した未来、人間はTPOに合わせて顔を変えるようになった――。漫画家の窓口基(@MADOguchimoto)さんによるSF作品、「顔」が好評です。技術革新が社会を変える様に考えさせられる。
フェイスモニタは、感染対策用の密閉換気式フェイスガードや、両面透過モニタ、スマートグラスといった技術の進歩が重なって生まれたデバイス。表面に精細な顔や画像を立体的に表示しつつ、裏面では外の風景や各種情報が見られます。表に表示する“顔”は素顔の表情と連動するので、自然な感情表現も可能。
当初は主にARマニュアルやリアルタイム翻訳に用いられていましたが、「最高にうまくいったメイクの状態を保存し、いつでも読み出して再現できる」利便性の発見がきっかけで、爆発的に普及。誰もが着用するようになってからは、「常に自分の顔を使う必要もない」と皆が気付き、時と場合に合わせて“表の顔”を変えるようになりました。
例えば、通勤通学などむやみにプライバシーをさらしたくない場では、無個性なアバター。友人との外出では仲間内で通じるキャラクターのアイコン。部活では自信満々、就活時は清潔感、謝罪するときはいかにも申し訳なさそうにと、人々は表情をその場に求められる「正解の顔」に変えていきます。
これは現代のわれわれだって程度の差こそあれ、機械がなくとも素で行っているしぐさではありますが、フェイスモニタはそんな苦労を無用のものとしました。この「素顔を変えなくともよい自由」を示すかのように、漫画の語り手は「私の顔はようやく私のものになったのだ」と話を締めくくるのでした。
漫画は「コロナ禍が長引いたら本当にこうなりそうだとか考えてしまった」「アプリで盛りまくる現代もだいたいこうなりつつある」「美容にもう疲れたからこうなってほしい」「たまに見えるレアな素顔にときめく、平安貴族みたいな未来」など、さまざまな反応を呼びました。作者はこうした短編SF漫画をTwitterで多数公開。短編集『みらいみらいあるところに』として、Kindleでも配信しています。
作品提供:窓口基(@MADOguchimoto)さん
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「すごい切れ味」「SFホラーすぎる作品」と話題 ちゃおコミのディストピア・ホラー漫画『笑顔の世界』、作者と編集者に思いを聞いた
わずか14ページとは思えない読後感。 - 宇宙船内で伝染病が発生、患者は追放するしかないのか? SF漫画「温かい方程式」の結末が味わい深い
解法の優しい方程式。 - 「私はロボットではありません」――本当にそう言い切れる? よく見る認証システムがSF漫画へ発展
あれ、俺、本当にロボットじゃないんだっけ。 - 映像制作経験のない監督が7年かけ作り上げたヤバい映画「JUNK HEAD」レビュー
製作期間7年のストップモーションアニメ映画「JUNK HEAD」のヤバさと魅力を語る。