月の満ち欠けが人間の行動に影響を与える、という説があります。英語で狂気を現す「Lunatic(ルナティック)」は、ラテン語で月を意味する「Lunar(ルナ)」を語源としているなど、古くから信じられてきた概念です。
今回ご紹介する作品は、古くから強く人を惑わすとされてきた「満月」をテーマとした、非常に不気味な内容となっています。
ある男性の友人は、満月以外の月を見たことがないのだと言います。小さな頃から家の窓には満月しか見えず、おとといの新月の日も大きな満月が出ていた、と言うのです。
にわかには信じがたい、少々気味の悪い話です。しかし男性は「友人は嘘をつくような性格ではない」と知っており、その内容を信じるほかありませんでした。
それからしばらく経ったある日の夜、男性はたまたま友人の家の近くを通りがかります。同時に「毎日見える満月」の話を思い出し、それを見に行こうと友人の家へ向かうのですが……。
男性が目にしたのは「友人の部屋の窓にぴったりと貼り付いて、中を夢中で覗き込む、夜の暗闇に浮かぶ満月のような瞳をした、醜く巨大な謎の怪異」の姿でした。そして怪異は男性の気配に気付き、ゆっくりと男性の方を振り向いたのです……。
時間が経って、また後日のこと。「最近になって、とうとう満月以外の月を見られた」と、友人は楽しそうに話しています。ですが男性にとってそれはもはやどうでもいいことでした。なぜなら、あれ以来、夜になると男性の家の窓からは「満月しか見えなくなっていた」のですから……。
このお話の作者は三鹿 灯(@sangatou4444)さん。三鹿さんはホラー漫画『奇譚街』を手掛けているほか、無料コミックサイト「COMIC MeDu」にて、描き下ろしの読み切りホラー「密蜂」を公開しています。
作品提供:三鹿 灯(@sangatou4444)さん
記事:たけしな竜美(@t23_tksn)
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