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ここで言えない何かがある劇場版『攻殻機動隊 SAC_2045』 田中敦子、大塚明夫、山寺宏一のオリジナルキャスト3人に聞く本音(2/3 ページ)

押井守版『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』から四半世紀以上、作品世界をともに創り上げてきた3人の実像と本音に迫りました。

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オリジナルキャストが明かす劇場版のポイント

―― 劇場版でのポイントを。過去の『S.A.C.』シリーズでも主軸のエピソードを再構成していましたが、基本的にはそれと同じ形のようですね。追加のシーンはシーズン2につながるものといったところなのかなと予想しました。

田中 ポスト・ヒューマン関連のエピソードを編集し1つの作品として見やすく作っていただいているのは神山監督が今までも取り組まれてきた手法ですね。おっしゃるとおり今回の劇場版はシーズン2への橋渡しにもなっています。それを劇場の大きなスクリーンで観られるのは私たちにとっても魅力的で、楽しみな作品です。Netflixさんで配信されたものとは別の作品、別の視点で楽しんでいただければと。

大塚 シーズン1の配信を観てくださった方も、劇場版を観ておくとおさらいできるし、観ていなかった方も、12話観るのが大変だという方もこれを観ておけば、シーズン2に入りやすいんじゃないかなと。シーズン2の導入部みたいなところもちらほらと出ているので、期待をどんどんくすぐってくれるんじゃないかなと。観た方がいいです。

山寺 全く同じですね。あれだけのクオリティーですから、大画面/大音響で観るのは素晴らしい体験になるんじゃないかと。Netflixさんは全話同時に配信されてぜいたくですが、視聴環境はそれぞれ異なります。劇場で観るのとはまた違うと思います。

 明夫さんがおっしゃったように、劇場版はより分かりやすい縦軸になっていて、ポスト・ヒューマンが一体何なのかがすっと入ってくると思います。シーズン作品とは別な魅力と、しかも今回は藤井道人監督が編集なさって新たな切り口になっているので、そこも見どころです。ぜひ劇場で。

―― シーズン2に期待してほしいところを教えてください。

田中 シーズン1の最後は、トグサが消えてしまうところでぷつりと終わっていて……。

―― トグサの姿がバトーには見えず、タチコマは見えているように振る舞うのに、引き止めるそぶりも見せず明るく送り出すシーンで幕引きとなる奇妙な終わり方でした。

田中 あそこから物語がどのように帰結していくのか。シーズン2はトグサくん大活躍となっていると思いますので、楽しみにしていただきたいです。

山寺 シーズン2に関しては、あんなモヤモヤな感じで特にトグサどうなっちゃったのと思うでしょうけれど、そう思ってる方はとにかくシーズン2に期待していただきたいし、そんな方にこそ劇場版を見てほしい。ここで言えない何かがあるので。

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劇場本予告ではシーズン1では確認できない新カットも。「生きてるってだけでこんなにも世界は美しいのか……」とつぶやくトグサ

シマムラタカシを演じる林原めぐみのすごみ

―― ここからは、今作での新キャラについて。まず津田健次郎さんが演じたスタンダード。シーズン1の中盤で離脱しますが、また戻ってきてもおかしくない描かれ方でした。スタンの出番はシーズン2でもあるのでしょうか?

大塚 この話言ってもいいのかな……? (周囲のスタッフが苦虫をかみつぶしたような表情になる)

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―― なるほど。今の反応が雄弁に答えを語ってくれました。では、次にプリンです。内務省保安局所属のキャラですが、なぜか配属前からバトーのファンだったり、ポスト・ヒューマンとは人間の脳がネットにつながることから起きた人類の進化なのかと嬉々として問うなど、違和感を覚える箇所が多い描かれ方でした。シーズン2のポスターでもプリンはタカシより大きく描かれていて、極めて重要なキャラと位置づけられている印象です。この理解は当たらずとも遠からずでしょうか?

大塚 イエス……。

―― 言いにくいであろうことをギリギリのラインで表現してくださってありがとうございます。プリンはバトーとの絡みが多くなるだろうと私は予想しているので、大塚さんのお答えでいろいろ察しました。

山寺 ねとらぼさん深いんだよ(笑)。よく分かってる。

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―― (山寺さんねとらぼ見てくれている……)ありがとうございます。では最後に再びシマムラタカシについてです。攻殻機動隊において、私は公安9課が相対する存在も重要と考えています。『S.A.C.』シリーズでいえば笑い男をはじめ、クゼ・ヒデオや合田一人、傀儡廻などです。

 『攻殻機動隊 SAC_2045』では、ポスト・ヒューマンに覚醒した14歳の少年・シマムラタカシがその役割を果たしています。シーズン1での登場話数は多くないですが、後半の見どころになるのは彼で、林原めぐみさんが演じていらっしゃいます。

 林原さんが『S.A.C.』シリーズに出演するのは初ではないものの(編注:2nd GIGにアサギ・ルリコ役で出演)、役への入り方、理解力、表現力などはさすがだと感じます。林原さんがシマムラタカシを演じられることが皆さんにどんな刺激をもたらしたか教えてください。

大塚 彼は……彼じゃないか。彼女の芝居ってすごくて、役をどうこねくりまわして作っていくかではなく、意志がそのまま音になるようなせりふを話す。第二次性徴を迎えた14歳の男の声でなかったとしても何の違和感もなく、脳で考えたことが音として言葉になっていて、シンプルにクリティカルヒットしてくる。それこそが彼女のすごみ。すごむだけが敵じゃないし、かえってすごみが増す感じがします。

田中 本当に今大塚さんがおっしゃったことそのままで、彼女は幼いころと14歳のタカシの両方を演じ分けられていらっしゃいますけど、幼いころのタカシ、14歳のタカシ、ポスト・ヒューマンとしてのタカシを、作ることなく自然に演じられているところが素晴らしいなと。私もシーズン2でタカシと会話をするシーンがありますが、本当に自然に演じられていましたね。

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―― タカシの前に登場したポスト・ヒューマンは、「既存の社会構造の転倒」をそれぞれのレイドで達成しようとします。劇中、究極の民主主義とされる“シンクポル”というタカシにとってのレイドは、結果的にタカシを絶望で包んだようですが、その後、郷愁を誘うプログラムを残し、トグサがそれにあてられることで話が進んでいきます。

 そういう意味ではタカシとトグサの関係が見ものですが、山寺さんは『カウボーイビバップ』のスパイクとフェイのように林原さんとの共演も多いですよね。先に出てきた言葉で表現すれば、林原さんも“きょうだい”と言えそうですから、山寺さんの林原さん評もうかがいたいです。

山寺 林原さんは……林原さんって言ったことないんだけど(笑)、親友というか、一番共演が多いのですが、天才だといつも思っていて。プライベートでは怒られてばかりな間柄なんですけれども。ここまで『攻殻機動隊』の世界観を分かっているのがすごいなと。そういう話は本人とはしていないですが。

 シーズン1では一緒に録れなくて、今回もコロナでなかなか一緒に録れなかったんです。タカシが結構しゃべっているときに僕は別班で、一緒だった明夫さんが(アフレコブースから)出てきて「すげぇぇぇぇ」って言ってて、やっぱりそういうことなんだなって。

 あの人、ちょっと化け物っぽいところがあって、「(キャラが)降りてくる」みたいなこと言っていて。だから、「サスティナブル・ウォーとか全世界同時デフォルトって本当に分かってんの?」って聞いてみたかったです。そんなところでマウントとってどうすんだって自分でも思うけど(笑)。

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