ベビーカーに乗せた赤ちゃんの熱中症を描いた漫画がTwitterに投稿され、記事執筆時点で1000件以上のリツイートと9000件を超える“いいね”が寄せられて大きな話題になっています。
子どもとのおでかけが増える夏休み。本格的な暑さが続く中、環境省は全国を対象に熱中症警戒アラートを運用するなど、熱中症への予防と対策を強く呼びかけています。しかし、言葉で暑さを訴えられない赤ちゃんの熱中症対策は、どんな点に気を付けたら良いのでしょうか。ねとらぼ編集部では、覚えておきたい赤ちゃんの熱中症対策について、小児科医に話を聞きました。
漫画の作者は、2月に男の子を出産したダルダルのダル子(@darudarudaruiko)さん。赤ちゃんをベビーカーに乗せて買い物に行ったときの出来事です。
買い物をしているうちに気温が上がってしまい、「そろそろ昼間の外歩きは控えようかな……」と考えているとき、ダル子さんは赤ちゃんの異変に気付きました。
ベビーカーに乗せた赤ちゃんは、顔を真っ赤にしてワナワナ震えていたのです。「ちょちょちょちょっ」とパニックになる気持ちと「え?」という冷静な気持ちがぶつかりあい、取りあえず急いで移動するダル子さん。
途中にあるスーパーやコンビニなど冷房が効いた場所に立ち寄って、体を冷やしつつ帰宅することに。自宅までの道がやけに遠く感じます。
なんとか帰宅して扇風機に当てると、元気を取り戻した赤ちゃん。ダル子さんは「よかった、元気そう」とホッとすると同時に、命を預かっている怖さを再確認したそうです。
ダル子さんは自身のブログ「全部なんとかなれ ダルダルのダル子」でもこの体験を紹介。「冷静にコンビニやスーパーに避難して、冷たいペットボトルとか当てれば良かったと思う。皆はパニック起こさないでくれよな」と振り返っています。
Twitterのリプライ欄には「この時期は暑いですからね」「熱中症怖いですよね」といったコメントが。保冷剤やポータブル扇風機、ひんやりシートなどを使っているという先輩ママたちの声も寄せられています。
外はまだまだ暑い日が続く時期。編集部は「ベビーカーの熱中症対策」「体のどの部分を冷やすと有効か」「“熱中症かもしれない”と思う症状と対処法」「すぐに病院に行った方がいい症状」などの点について、たけつな小児科クリニック(奈良県生駒市)の竹綱 庸仁(たけつな のぶひと)院長に話を聞きました。
たけつな小児科クリニック(奈良県生駒市)
竹綱 庸仁(たけつな のぶひと)院長
平成21年に小児科専門医を取得。平成29年にたけつな小児科クリニックを開院。院内での血液検査をはじめ、脳波検査、レントゲン検査、軽症の救急患者様の治療ができるように体制を整えている。
―――ベビーカーに乗る赤ちゃんや幼児のための熱中症対策で、お勧めの方法があれば教えてください。
まず、屋外でベビーカーを使う際に注意することは大人と子供の体感温度が違うということを念頭に置くことが非常に大事です。具体的にお話しすると、ベビーカーの座面は50センチ程であり、成人と比較し、地面からの距離が成人よりも近くなるため、地面から影響を受ける温度が成人よりも上昇します。したがって、熱中症だけに着目すると、ベビーカーを選択する際には座面の高さが高い方が、赤ちゃんが受ける熱の影響が小さくなり、熱中症をひきおこす確率が下がると考えられます。
また、ベビーカーの座面の素材などは通気性のよいメッシュタイプを選択するほうがよいでしょう。直接日光を浴びないようにフードを使用するかについては、フードを使用すると、通気性が悪くなり、ベビーカー内の温度が上昇する可能性もあり、日差しの強いときのみ使用することをお勧めします。
また、座面に保冷剤を入れ、背中を冷やすことや、持ち運び式の扇風機などを使用し、赤ちゃんの体温を下げる工夫も大切です。最近、よく見かける首を冷やす円形の保冷材については、頸部を圧迫する可能性もあり、使用する際には十分注意が必要です。
さらに、長時間の外出は赤ちゃんの体温上昇を引き起こす原因となるため、外出は短時間にしたり、冷房の効いている施設などで休憩を小まめにとり、体温を下げる工夫も大事になります。
―――赤ちゃんや幼児の体のどの部分を冷やすと、熱中症対策に有効でしょうか。
赤ちゃんのみならず、成人も含め大きな血管を冷やすと体温が下がります。太い血管が外表に近い部分としては、頸部(くび)、腋窩(脇)、鼠径部(股)があり、その部分を保冷剤や濡れタオルなどで冷やすと体温が下がりやすくなります。また、背面はシートとの間隔が狭く、熱がこもりやすいため、背面を冷やすことも体温を下げる効果が高くなります。
熱が出た際に子どもを含め、おでこに冷えピタなどの保冷剤を貼っているお子様をよく見かけますが、おでこには大きな血管が通っておらず、冷やすことにより多少の解熱効果がある程度と認識しておくことが重要です。
―――赤ちゃんや幼児の「熱中症かもしれない」という症状はどのようなものでしょうか。
熱中症の原因は主に(1)体内の水分量が減っている、(2)体内の塩分が減っている、この2点となります。したがって、汗を大量にかいているときは熱中症に陥りやすい状態であることを認識しておきましょう。具体的な熱中症を考える症状としては
- ぐったりしている、活気がない
- 汗をかいていない、または、服がぼとぼとになるくらい汗をかきすぎている
- 顔がほてっている
- 息があらい
- 呼びかけなどをしても反応が乏しい
- 尿の回数、量が少ない、尿が濃い
以上の6点が熱中症を疑うサインとなります。
―――すぐに病院に行った方がよい、赤ちゃんや幼児の熱中症の症状を教えてください。
熱中症の重症度は幅広く、時々報道でも見かけるように、時には命を落としてしまう危険性があります。少なくとも、元気に走り回っている状態や、尿の回数が減っていなければ小児科を受診する必要はないと考えますが、水分摂取が低下し、活気が乏しい時には小児科を受診するようにしましょう。
また、呼びかけに反応しない、尿が出ていないときなどは脱水が進み、腎不全などが起こっている可能性も考慮し、時には救急車などで病院へ搬送してもらう必要もあります。
(了)
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