ロックバンド「King Gnu」の井口理さんが初めて主演を務める映画「ひとりぼっちじゃない」が2023年春に公開されます。発表された予告映像とポスタービジュアルには「この恋は、純愛か? それとも狂気か?」との文字が踊っており、甘美さと不穏な雰囲気がただようものとなっています。
原作は、映画「世界の中心で、愛をさけぶ」(2003年)、「スカイ・クロラ The Sky Crawlers」(2008年)などの作品で脚本を担当した伊藤ちひろさんの同名小説。不器用でコミュニケーションがうまくとれない歯科医師のススメ。彼はマッサージ店で働く宮子に恋をしますが、つかみどころのない彼女を前に“宮子のことを理解できていない”と焦り、思い悩む姿が描かれます。
同作の脚本は、「井口さんにススメを演じてもらう」とあらかじめ決めてから執筆した、いわゆる「あてがき」。井口さんは撮影開始前から監督とともに撮影場所の下見をするなどして、意欲的に役柄を構築。撮影を通じて「自分自身が今まで人に伝えられず蓋をしていた気持ち」とも向き合うことになったと振り返りつつ、「ススメとの出会いが自分にもたらしたものはとても大きかった」と明かしています。
ススメが恋をする謎多き女性・宮子を演じるのは、俳優の馬場ふみかさん。一見すると温かいようで内面には冷たさを持っている宮子をどのように演じれば良いか戸惑っていたそうですが、撮影の準備を進めていく中で「自分の本来持っている性質に近い部分がある」と気付き、恐ろしさを覚えつつも、宮子を演じられたことに「運命めいたもの」を感じているとのことです。
また、宮子の友人でありながらススメを惑わせる蓉子役として河合優実さんが出演。「語弊を恐れずいえば、繰り出される数々の『ヘン』な描写に胸が躍り、また新しく、興味深い本に出会えたことが嬉しかったです」と、脚本を読み始めたときの感動を明かすとともに、同作の撮影は「監督の感性をどこまで素直に、純粋に保てるかの戦いだった」と振り返っています。
映画「GO」(2001年)などで知られる行定勲さんが企画とプロデュースを担当し、伊藤さんが初めて監督を務める「ひとりぼっちじゃない」。伊藤さんは、ススメ役の井口さんから放出された「異彩なムード」が同作の世界には充たされていると語り、「ある意味、この映画はホラーです」とコメントしています。
井口理さんコメント
本作の主人公、ススメとの出会いが自分にもたらしたものはとても大きかった。人とコミュニケーションが取れない彼に向き合った約半年という時間の中で、自分自身が今まで人に伝えられず蓋をしていた気持ちとも同時に向き合うことになったからだ。自分と向き合うということ、それは今まで極力避けてきたことだったが今回の撮影を終えて、それがとても大きな財産になったと実感している。コミュニケーションがうまくいかないもどかしさは誰しもが感じるものであり、そこで生まれる葛藤はおそらく今回ススメという人間として形を成した。この作品に関わった全ての人に、出会いに、感謝します。そしてみなさんがご覧になったとき、少しでもやさしい気持ちで明日を生きていけますように。映画が完成した今、そう強く願います。
馬場ふみかさんコメント
当初は、一見すると柔らかくて温かいようで、内面はすごくドライで冷たさを持っている宮子をどう演じればいいのか戸惑いましたが、伊藤ちひろ監督との本読みや衣装合わせを進めていく中で、実は自分の本来持っている性質に近い部分があると気付きました。そのことに恐ろしさを覚えつつも、この役を演じられたことに運命めいたものを感じています。監督の創り上げる世界にどっぷり浸かりきっての撮影は、苦しくもあり宝物のようでもあり、不思議な時間でした。一人でも多くの方にこの作品が届きますように。
河合優実さんコメント
お話をいただいて脚本を読み始めたとき、すぐに心奪われたのを覚えています。語弊を恐れずいえば、繰り出される数々の「ヘン」な描写に胸が躍り、また新しく、興味深い本に出会えたことが嬉しかったです。井口さんと馬場さんとそれぞれまったく違うパーソナリティを持ち込み、お互いの色を混ぜた結果どうなるのか全くわからない中で起こることを楽しんでいました。完成を見て、伊藤ちひろ監督の感性をどこまで素直に、純粋に保てるかの戦いだったんだなと改めて感じました。純粋さはいつでも強いものを産むなと思います。ぜひご覧ください。
伊藤ちひろ監督コメント
相手の真意を察することの難しさ、妄想は広がっていくけど、なかなか答えに辿り着けない、そういう経験をしたことのある方は多いはず。これが恋となれば、ひどく自分の感情がこじれていく。相手の表情や言葉にいくら注意を向けても心を丸ごと見透すなんて不可能だから、コミュニケーションの向き合い方にうまく折り合いをつけられないと苦しくなっていく。その感覚をそのまま映画にしようと思いました。初めて監督として立つ現場で限られた時間の中いくつもの判断を下していくことは、とても困難なことでしたが、この作品はキャストに恵まれました。捉えどころのない漆黒の魅力を内包する馬場ふみかさん、鋭い視線で魅惑的な妖気が漂う河合優実さん、そして、わたしの曖昧なイメージを具現化し愛すべきキャラクターに創り上げてくれた井口理さんの存在に支えられてこの映画は誕生しました。井口さんは、ススメという人物を演じるうえで次々と芽生える羞恥などのデリケートな感情を、そのまま晒すことも破壊してみせることもできる表現者で、彼から放出される異彩なムードがこの作品の世界を息が詰まるくらいに充してくれました。ある意味、この映画はホラーです。楽しんで頂けたら幸いです。
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