ドミノ・ピザ、大量の唐辛子ピザ配達騒動 キャンペーン多発による疲弊が背景か 店員「サービス残業頻発。現場は反対やイラつきの声」(2/4 ページ)
注文者と現役クルーに取材しました。
現役クルーのAさんによる証言
注文者が指摘したような(1)店舗の人手不足と、(2)度重なるキャンペーンによる店舗への大きな負担は本当に存在するのか。現役の店舗クルーであるAさんに取材したところ、両方とも存在するとみられることが明らかになりました。
(1)店舗の人手不足「アルバイトさえ“サービス残業”を求められる」
Aさんは店舗の状況について、「圧倒的に人手不足です」と発言。キャンペーン実施中で店舗が大忙しではない状態でも、ランチ帯はアルバイトの高校生や大学生以外はほぼ強制出勤させられるとしています。
繁忙期やコロナ禍以降については、「特にクリスマスなど繁忙期にはシフトを強制的に入れられます。コロナ禍以降は出勤を強要されることが増え、ますます悪化しました」と振り返りました。
また、「日頃から社員の“サービス残業”はしょっちゅうで、アルバイトにさえ退勤してから手伝わせていることもあるほどです」と、Aさんが勤務する店舗での“サービス残業”の実態についても話しています。
(2)度重なるキャンペーン「現場は反対やイラつきの声だらけ」
度重なるキャンペーンについては、「疲れました。キャンペーン中、特に土日は強制出勤です。本部はろくに対応してくれず、現場は本来は受けるべきではないクレームを受けてばかりでストレスを抱えています」と心情を吐露。
現場でのキャンペーンについての声を聞くと、「キャンペーン中、現場から聞こえてくるのは反対やイラつきの声だらけです」と明かしました。
特に、「1枚買うと2枚無料」キャンペーンについては、「2度目のときに本部が労いとして渡してきたのは炭酸水やお茶ぐらいでした(※)。(1番評価された店舗には特別有給休暇が付与されましたが)自分たちは何も対応されていません。本部の対応には誰も納得していないと思います」と、怒りを込めて語っています。
※ドミノ・ピザは2度目のキャンペーン時には暑さ対策として、塩あめと一口サイズのチョコを全店舗に配給。一方で、全店舗に配布予定だったスポーツドリンクは仕入れ先の在庫が厳しく、全店に行き届かず、炭酸水やお茶に切り替えた店舗もあったとしています(関連記事)
現役クルーの声「もうやめてくれ」「控えめに言って地獄」
取材後の10月21日、ドミノ・ピザは「1枚買うと2枚無料」の3度目を実施することと、これまでの反省を踏まえて、すでに8月からキャンペーンの準備を開始しており、全店舗でクルーをさらに30%増員するなどの対策を講じることを発表しました。
ねとらぼ編集部が同キャンペーンおよび対策についての記事を掲載してツイートすると、現役クルーとみられるユーザーたちから、引用リツイートやリプの形でさまざまな声が寄せられました。
現役クルーとみられるユーザーたちの声を拾い上げると、「まぁ二回目死ぬほど暇だったし今回もそれくらいのことを祈る」という声もある一方で、ほとんどは悲痛な叫びであることが分かります。
- 「前回スポドリすら貰えなかったしもうやめてくれ 」
- 「ドミノのトライアルウィーク初回とリベンジどっちも結構入ってたけど/報賞なんか貰ってない/クルー増員(来るかも分からんデリ慣れしてないバカ遅い日雇い)/リベンジも結局配達依頼受付停止/初注文のくそみたいな問い合わせの数々」
- 「大丈夫なわけねーだろーが。こっちの苦労も考えないで上のやつが都合いいことばっか言うなって」
- 「コレ、やらされる身になると控えめに言って地獄なんですよね 2回目のとき勤務してたが 全部大体3枚になるから…3枚って 重くて」
- 「早く届けないとお客様に文句を言われる しかし30km以上出すとGPSでバレて速度違反者として記録が残る 意味分からない」
また、元クルーとみられるユーザーからも「ドミノピザアルバイト辞めてよかったです」「元職場からSOSコールが止まりません」「本当に学ばねえなこの会社(元クルー)」などの声が寄せられています。
3度目となる「1枚買うと2枚無料」は10月30日まで実施されます。はたして、今回は店舗の人手不足やキャンペーン時の負担を解消し、“大量の唐辛子をのせたピザ配達騒動”のような現場のミスを誘発しないで済むのか。ドミノ・ピザによるキャンペーン終了後の発表が待たれます。
ドミノ・ピザによる公式見解
ねとらぼ編集部では、ドミノ・ピザに(1)店舗の人手不足と、(2)度重なるキャンペーンによる店舗への大きな負担についての認識と対策などについて問い合わせました。回答を一部抜粋して紹介します。
(1)店舗の人手不足「さらに人員を募集」
ドミノ・ピザは店舗の人手不足について、「各店舗において人員体制の強化について、かねてより取り組みを進めてきているところでございます。ただし、今後より一層人員体制の強化が必要であることも認識しております」とコメント。
「これからもより価値ある新規キャンペーンをお客様にご提案することを計画しております。また、クリスマスシーズンも迎えます。さらに人員を募集し、研修の強化など、しっかりした施策を講じる予定です」と述べています。
サービス残業に関しては、「人事は常日頃から『勤務時間を正確に記録し、残業はしっかり申告するように』と全店舗に指導しております。また、内部通報制度を整備しており、クルーは誰でも問題があれば、この制度を利用して本社担当部署に問題を指摘できます。この指摘は匿名でできる仕組みとなっています」として、「ご指摘のようなことを含めて、違反事実が判明しましたら、厳しく改善を指導しております」としました。
(2)度重なるキャンペーン「普段以上の頑張りは把握。十分な体制に至っていない」
ドミノ・ピザは度重なるキャンペーンについて、「一部のキャンペーン実施時に、一部店舗においては人員体制が追い付かず、現場のクルーたちに普段以上の頑張りをしていただいていることは把握しています」「残念ながら、一部店舗では、人員体制強化の施策を講じてはいますが、まだキャンペーン時の対応などにおいて、十分な体制に至っていないところもあるのは事実です」と認めています。
特に「1枚買うと2枚無料」は「全店舗でこのキャンペーンは2回実施しましたが、いずれも予測をはるかに上回るご注文をいただいたために、一部店舗で十分対応しきれない事態を生じさせてしまいました」とのこと。
1回目については「クルーからも負荷が大きかったというご指摘を、社内SNSなどを通じて経営層に直接いただきました」として、「キャンペーン終了直後に社内SNSを通じて、経営層が全クルーに感謝と反省のメッセージを伝えるとともに、全クルーを対象に、経営陣との意見交換会を開催いたしました。そこで、しっかりと予測が不十分だったということをクルーに認め、改善することをクルーの皆様にお約束したところです」と述べています。
2回目については「ちょうど新型コロナの第7波が急拡大している時期と重なり、急なクルーの出勤不能(感染や濃厚接触などによる)が増えたことにより、強化したはずの人員の欠員が生じてしまったことも予想外の事態でした」と振り返り。
「お客様の評価が高かった店舗やそのクルーに特別報償を出すことも実施しました。通常のキャンペーンでは実施していない措置です。お客様のご期待やクルーのがんばりに応えるため、当社として普段行わない対応をしたものです。多くの店舗クルーが好意的に受け止めていただき、キャンペーンをいっそう積極的に取り組んでいただけたこと、クルーに感謝しています」と述べています。
3回目については「予測を経営陣全体でしっかり見直すとともに、通常の1.3倍の人員を整え、お客様のご期待を裏切らない体制を整えることといたしました。また、万が一、予測を上回るご注文がキャンペーン開始後見込まれるときは、さらに人員を強化できるスタンバイもしているところです。人員が十分に整えば、クルーの負担は過度なものにならないと考えております」と見解を示しました。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.