ITmedia ガジェット 過去記事一覧
検索
ニュース

バーチャル空間でのクラブイベントが人気加速中! 第一人者DJ SHARPNELに聞く、インターネットとVRのDJ30年史(4/4 ページ)

VRのクラブなら、おうちから0秒で遊びに行けます。

advertisement
前のページへ |       

――Twitterの登場は大きいですね。DJ SHARPNELさんの楽曲だと「SOUND VOLTEX」収録の、Twitterをネタにした「つぶやき魔法少女りむる」(※16)を思い出します。

※16 魔法少女ネタを使った、Twitterのフォローやリムーブなどの話題を歌にした世相パロディーソング。他にもPV至上主義の生主をネタにした「まじかる生主@りすなちゃん」などがある

 「りむる」は2013年8月くらいに出ました。曲自体はリリースされる2年前ぐらいにはできていて、当時としては最新のワードを入れていたんですよ。ゲーム筐体ってリリースまで時間かかるんで、「このキーワード、リリースされるまで言ってるだろうか?」とかひやひやしました(笑)。

――2011年だとTwitterはかなり浸透しはじめた時期ですね。

 そうなんです。震災でTwitterの有効性が確認された頃です。2008年にiPhone 3Gが日本でも発売されて、最初は「画面触るなんて」みたいなことを言われつつiPhone4になってくるともうみんな持っていましたね。

数万人のフェスイベントを目指して

――パソコン通信の時代からVRの時代まで一気にさらいましたね。

 30年ぐらいのね(笑)。振り返るとネットイベントっていう観点では、90年00年初頭ぐらいから「覇道チャンネル」っていう専用のチャットサーバでの配信をやったり、「SHOUTcast」いわゆるネトラジでのクラブイベントや、Ustreamやツイキャスでもやったし……時代ごとのプラットフォームでやっているので、VRもその延長線上ですね。

――今のVRのクラブシーンを見ていて、いいところだと感じるのはどこですか?

 遊びに行きやすい、本当にこれに尽きる。自分自身、それなりのパーティーオーガナイズしている経験からすると「この日雨が降ればお客さんの数が減る」とか、制約やリスクが大きいんです。現場の盛り上がりもあるんで、フラっと行くにはすごくハードルが高い遊びではあるんですね。夜行って朝まで帰れないけど本当にこのイベントで大丈夫だろうか、っていうところから始まる遊びなので。

――音楽が自分にあわなかったらどうしよう……ってなりますね。

 そうそう。しかも知ってる人もいないし、みたいな。ギャンブル性の高いビクビクする遊びだったんですけど、VRだとかぶって知ってる人のところに行けばすぐに参加できる。当然体感する熱量とか種類が違いますけど、ここでクラブを初めて体験して、こういうところだから実際のクラブ行っても楽しめるね、っていうクラブの仮想体験装置としても機能してます。

――クラブカルチャーへの入り口ですね。

 VRChatでDJやってる人たちが多く出るリアルのイベントに行くと、オフ会状態になるんです。それってVRと現実って地続きだからです。VRでクラブに行ったら音が大きくて楽しいし、その雰囲気の中でおしゃべりするのも楽しい、それであれば実際に現場に行っても楽しめるんじゃないかっていうふうに思ってもらえる機会がVRで体験できてるのはいいことだなと思いますね。

――課題だと感じることはありますか?

 小箱レベルとか中箱レベルのキャパシティー、例えば150人ぐらいであればまだまだそのVR的な体験で再現は可能(※17)なんですけれども、やっぱり自分たちが目指してるのは3万人とか5万人とかっていう、いわゆるフェスティバルレイブですよね。

※17 VRChatだと80人、clusterだと500人(表示人数は100人)が技術的限界

 フジロックとかのような環境の中で、数万人が同じ空間で同じ音楽を聴くことで、シンパシーが広がるわけじゃないですか。それはやっぱり、音響とかは当然違うと思うんだけど、VRでも自分の周りに数万人の人たちがいて、前方のアーティストを応援できるっていうのが可視化されると、違った世界があるんじゃないかなと思います。まだまだテクノロジーはそこまで追いついてない状態ですね。

――数万人……できますかね?

 いずれできるようになるとは思います。でもだいぶ時間がかかりそうな気はしますね。2022年にオランダのハードコアのフェスティバルに行ったんです。3万人か4万人ぐらいの人が一堂に会してハードコアを聞いているんです。チケット代がだいたい1万円行かないぐらい。現地での体験は素晴らしいんですけれども、VR空間でもやっぱ世界のフェスみたいなのは目指したいです。

――フェスやってほしいです!

 この辺は2017年ぐらいからVRのクラブカルチャーに取り組んでいるWAVE XRとかの会社が、元から数万人が同時に見れるプラットフォームを目指して活動はされているので、いずれVRChatだけではないいろんなプラットフォームで大人数同時に可視化できるサービスが出てくるんじゃないですかね。


ALT VRでDJブースに立つとこんな感じ。音はリアル空間で操作している

――clusterの方でもシャープネルさんは活動されていますけどこれはどういう意図ですか?

 VRChatだとどうしても80人ぐらいの制約があって、「入れないともう見れない」っていう世界になっちゃう。しかも出演者のフレンドになってないと入れない(※18)制約もあって、まだまだクローズドな世界だと思うんですよね。そもそもVRを始めること自体ハードルが高い。

※18 VRChatのイベントの多くは、主催者や出演者に事前にフレンド登録をしておいて、時間になったらそこにjoin(相手のいるワールドに飛ぶこと)する仕組みを使うことが多い

 日本向けのイベントプラットホームに特化しているclusterはスマホでも入れるし、リンクを踏めばそこからすぐイベントに入れるし、コミュニケーションを考えなければゴースト(※19)でたくさん入れる。僕も2022年からclusterでイベントをいくつかやらせていただいてるんですけれども、毎回のイベントで延べ400人とか500人とか入って来ていただいてるのを考えると、やっぱりVRChatよりもハードルがすごく低くて入りやすいのがわかります。VRChatとはまた違うクラブシーンを、自分なりに試していきたいと思っています。

※19 普通に参加はできるが、姿が表示されず声も出せない状態のこと。clusterでは人数が100人をこえるとゴーストになる

――スマホで見に来てる人がいる感覚はありますか?

 あります。clusterだとVRで入られてる方っていうのは逆に少数派で、ほとんどの人がPCデスクトップかスマホの印象です。

――カジュアルに入れるのはめちゃくちゃいいですね。

 つい最近まではエモートがあまり充実してなくて、デスクトップで入った人たちは大して動かせないような状態だったのが、2022年10月ぐらいにやっと「踊る」などのエモートが実装されました。cluster自体が進化の最中っていう面白さがあります。

――DJ SHARPNELさんはVRの中のコミュニケーションというのはどういう感覚でやってらっしゃいますか?

 最近はすごくVRに入る時間が増えてきているので、現実世界との違和感はあんまりないですね。

――仮想ではあるんですけど、ここも現実だよ、みたいな。

 そうですね。やっぱり自分がいて、他の方がいて、同じ場所にわざわざ集まってきている。当然移動のコストは違いますけど、意図があって来ているので。今やっているこのインタビューの会話も、当然現実空間と比べればだいぶ制約は大きいのかもしれませんが、実質リアルと一緒ですね。


ALT VRChat、clusterなどメタバースで急成長しているDJクラブシーンは、まだまだ止まらない


たまごまご


前のページへ |       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る