春の風物詩といえば、お花見、新生活……そして、花粉症。日本では、実に40%以上の人が花粉症に悩まされているといわれます(※)。
花粉症の原因といえば、有名なのはスギ花粉やヒノキ花粉ですが、実はもっと身近な植物たちも花粉症の原因になることがあるのだとか。中でもあまり知られていないものには、「タンポポ」の花粉症があるといいます。えっ、タンポポ……?
花粉症の原因はたくさん
花粉症とは、目や鼻から入った花粉が体内の免疫システムに敵とみなされ、抗体の蓄積が許容量を超えたときに起こるアレルギー反応のこと。そのため、スギ・ヒノキ・ブタクサ以外にも、身の回りの意外な植物が花粉症を引き起こすことがあります。
タンポポは、ブタクサと同じキク科の植物です。キク科では、他にヨモギの花粉症も確認されています。また、まれなケースではあるものの、ヒマワリやコスモスで発症する場合もあるそうです。
キク科以外には、イネ、イチゴ、マツ、果てはどんぐり(コナラ)まで花粉症の原因になりえるのだとか。まったくもって油断ならない。
受粉方法の違い 「風媒花」と「虫媒花」
では、花粉症になりやすいものとそうでないものとの違いは、どこにあるのでしょうか? その1つの要因として挙げられるのは、“受粉方法の違い”です。
花粉症の原因として最も有名なスギは、風媒花といって風で花粉を飛ばす植物。虫や鳥に花粉を運んでもらう(つまり他の生き物にみつけてもらう必要がある)植物と違い、花が地味です。どう吹くとも知れない風頼みの繁殖をするということは、その分大量に花粉を飛ばさなければならないということ。自然、人体の免疫に引っ掛かったり、それによって抗体の許容量を越えたりする機会が多くなります。
一方、タンポポやヒマワリのような虫媒花では、花にやってきた昆虫を利用して受粉するので、一般に花粉は風で飛びにくい形をしていて、量も少なめです。そのため、これらの植物では比較的花粉症になりにくいとされています。しかし、花を室内に飾ったり仕事で花を扱ったりと、花粉にふれる機会が多い場合には、発症する可能性もあるそうです。
花粉の未来は? 無花粉のスギも
近年、花粉症の代表格であるスギについては、植林用に無花粉ものも開発されています。「はるよこい」「爽春」といったこれらの品種は、花粉の飛ばない爽やかな春を願って名付けられました。そうはいっても、花粉は植物の繁栄に欠かせないもの。うまく折り合える日がくるとよいなと思います。
画像協力(タンポポ花粉写真)
700以上の植物と1300以上の花粉の電子顕微鏡写真が見られるサイト(2023年3月15日時点)。
※システム開発:芳賀高洋教授(岐阜聖徳学園大学DX推進センター)、データ作成:早川貞幸さん(同大学大学院研究生)。
※早川さんの所属研究室の川上紳一教授は、Webサイト「新・理科教材データベース」を運営。約20万点の画像が掲載されており、「岩石クイズ」「植物クイズ」など、理科の学習をサポートする情報が掲載されている。
※【2023年4月30日訂正】画像協力の箇所で「ヒマワリ花粉写真」となっておりましたが、「タンポポ花粉写真」の誤りでした。お詫びして訂正いたします
筆者:近藤仁美(こんどう・ひとみ)
クイズ作家。国際クイズ連盟日本支部長。日本テレビ系「高校生クイズ」「クイズ!あなたは小学5年生より賢いの?」など、各種媒体に問題を提供する。クイズの世界大会「World Quizzing Championships」では、日本人初・唯一の問題作成者を務める。
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